近年、SaaSツールの導入は急速に拡大しており、多くの部門が独自にツールを選定・利用するケースが増えています。しかしその一方で、管理が行き届かないことによるコストの増加やセキュリティリスク、コンプライアンス上の課題も顕在化しています。
このような状況に対応するためには、部門ごとの柔軟なツール選定を維持しつつ、全社的な統制を確保する「分散型SaaSガバナンス」の構築が重要です。
本記事では、SaaS管理における課題と、分散型ガバナンス体制を構築するための主要な要素についてご紹介します。
ガバナンス不在によるSaaS管理の課題
ガバナンスが整備されていない場合、以下のような課題が発生します。
- 部門間での可視性の欠如
部門ごとにSaaSツールを導入することで、全社的な利用状況の把握が困難となり、運用の分断や意思決定の遅れにつながります。
- 管理されていないツールによるセキュリティリスク
シャドーITの存在により、未確認のベンダー利用やアクセス管理の不備が発生し、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。
- コストの非効率化
同様の機能を持つツールの重複利用や未使用のライセンス、自動更新された不要な契約などにより、コストが増加します。
- コンプライアンスの不整合
部門ごとに異なるポリシーが運用されることで、GDPR、SOC 2、CCPAなどの規制に対する準拠が不十分となるおそれがあります。
分散型SaaSガバナンス体制の構成要素
分散型ガバナンスは、部門の自律性を尊重しつつ、全社的な統制を図る仕組みです。以下に、効果的な体制構築に必要な要素を整理します。
- 明確なガバナンスポリシーの策定
セキュリティ、調達、コンプライアンスに関するポリシーを明文化し、部門間での運用基準を統一します。具体的には、データ暗号化、SaaS導入手続き、法令遵守体制の整備などが含まれます。
- 統制と自律の両立
IT部門による全体把握を維持しながら、部門ごとの裁量を確保します。SaaS管理プラットフォームを活用することで、利用状況の可視化、コストの最適化、非効率の発見が可能です。
- 強固なアクセス管理の導入
ロールベースのアクセス制御、退職者アカウントの自動削除、多要素認証(MFA)などにより、業務に必要な範囲での安全なアクセスを実現します。
- SaaSツールの標準化と最適化
重複するツールを削減し、全社的に統一された環境を整えることで、ライセンスコストの削減や業務効率の向上を図ります。部門固有の要件がある場合は、柔軟な運用を許容します。
- 指標の可視化と継続的な改善
ライセンス利用率、SaaS支出、セキュリティインシデントの発生状況などの指標を継続的にモニタリングし、定期的にレポートを共有することで、改善施策を立案できます。
分散型SaaSガバナンス導入による効果
適切に整備されたガバナンス体制により、以下のような効果が得られます。
- 部門間の連携強化と情報共有の促進
- セキュリティレベルの向上とリスクの軽減
- SaaSコストの最適化と投資対効果の向上
- 法令・規制への確実な対応
- 利用者への円滑なツール提供による業務効率の改善
まとめ
分散型SaaSガバナンスは、組織全体のSaaS環境を最適化し、安全かつ効率的に運用するために欠かせない仕組みです。ツールの選定から運用、監査に至るまでを可視化・標準化することで、継続的な改善と全体最適を実現できます。
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