
「上司・経営者に信頼される情シスになるためのコミュニケーション術」について、株式会社MOVEDの鈴木さんをお迎えし、お届けします。前編では、情シスに必要な基本的なコミュニケーションスキルについて詳しく解説しています。後編とあわせて読むことで、より実践的なコミュニケーション術が身に付きますので、ぜひご覧ください。
後編では、ディスカッションによりタイプ別のコミュニケーション術や、読者からのQ&Aをお届けし、より実践的なコミュニケーション術を紹介します。

<スピーカー>
小林 信也|株式会社MOVED プロ雑用・働き方デザインチーム事業責任者

上司や経営者といっても、さまざまなタイプがいます。ここでは、ディスカッションでタイプ別のコミュニケーション術を回答します。
―― 上司・経営者といっても「俺についてこいタイプ」や「調和を大事にするタイプ」など、タイプが分かれるかと思います。タイプ別のコミュニケーション術があれば教えてください。
小林さん:相手に完璧に合わせられたら、絶対にコミュニケーションが取れますよね。例えば、前編の発信力と傾聴力で取り上げた「ソーシャルタイプ診断」でいえば、対角線上にあるタイプはそもそも合わないんです。

小林さん:アナリティカルタイプであれば、エクスプレッシブタイプとは言語が合わないし、エミアブルタイプは、ドライバータイプとは合わないんですよ。隣同士は案外近いので、言語が違っても話が通じる場合もあります。
しかし、それぞれ自分の言語で話していたら、タイプが違うのでハレーションを起こしてしまいます。そのため、傾聴力が必要になるんです。相手がエクスプレッシブタイプであれば、自分もエクスプレッシブタイプに合わせてあげます。
例えば、エクスプレッシブタイプの人はリアクションも大きいので、自分も近いテンションの動きをしてあげるとかですね。やはり、仲間だと思う人の話は聞いてくれます。そこに気付かずに、お互いの言語で話していると対立してしまうんです。
小林さん:もう1つの方法は、誰かをはさむことです。例えば自分がアナリティカルタイプで、どうしてもエクスプレッシブタイプのテンションについていけない場合は、エミアブルかドライバーの人を連れてきて間に入ってもらいます。1対1だとハレーションが起きやすくなりますが、3人とかであればハレーションが起こらないんですよ。
―― どうしても馬が合わない場合は、1つクッションをはさむんですね。こういった問題は感覚的にイメージされている方も多いかと思いますが、フレームに落とすことで理解できるようになりますね。
小林さん:自分のタイプを知るための診断には、質問が短いものから長いものまで、さまざまな種類があります。自分ではなく、他者に聞いて自分のタイプを判断するものもあります。かんたんに診断できる診断のなかでは、ソーシャルタイプ診断は精度が高いと思っています。
こういったテクニックがあるので、まずはご自身のタイプを調べてみてください。

情シスは、サービスやツールの導入を検討し、上司や経営者に稟議を通す機会が多いものです。小林さんとディスカッションし、稟議を通すときに気をつけるべき視点を深掘りします。
―― コミュニケーションの実践法を教えていただければと思います。例えば、稟議を通したい場合、上司・経営者とのコミュニケーションや、事前準備はどうすればよいでしょうか?
小林さん:答えは、上記の質問に書いてあると思うんです。「導入したいSaaS」と書かれているので、それは自分が導入したいってことなんですよね。
―― なるほど。「導入したい」という時点でダメなんですね。
小林さん:「導入したいです」というのではなくて、このツールを入れることで企業や組織にとってどのような利点があるのか、相手視点がそもそも欠けているんですよ。情シスの方は、こういったサービスやツールを導入する際に、機能比較を添付する方が多いのですが、正直なところいらないと思います。
補足資料としては重要ですが、思っているほど見られていないんですよね。そもそも比較検討するのは、情シスの仕事ですよね。検討した結果、組織にとってどうすべきかという主語が抜けてしまっていて、自分が主語になってしまっているんです。自分が導入したいのではなくて、組織や上司が求めていることに対しての最適解を提示してあげなければいけません。
―― なるほど。企業や組織、上司にとっての課題を明確にして、課題を解決するためにベストな手段を提案するのですね。
小林さん:そうですね。「価格でしたら〇〇です。機能であれば△△です」というように提案したうえで、「どれを選びますか」と聞くような形であったり、「これです」と提案したりします。上司・経営者のタイプや関係性にもよりますが、はじめに「導入したい」ということではないですね。
―― 前編の傾聴力の話でもありましたが、自分視点ではなく、企業や組織にとっての利益で考えなければいけないということですよね。
小林さん:そうですね、課題を解決するという視点でやっていかなければいけないですね
例えば、「おすすめのカメラは何ですか?」とカメラ好きの人に聞いたときに、ガジェット好きな人はスペックで答えるんですよ。僕が聞かれた場合は、「家族を撮りたいんですか?」「風景撮りたいんですか?」「山登りに使いたいんですか?」と、まず目的を聞きます。最終的な結論は「自分でさわってみて手触りがいいものを買ってください」っていいます。
―― いわれた相手は「手触りがいいとは、どういうことなんだろう」と思わないですか?
小林さん:相手が聞いてくる時点で頭のなかである程度条件があるんですよ。その条件が出てきていないので、引き出してあげることが求められているのではないですかね。
「おすすめのカメラは何ですか?」と聞いてきた相手の頭のなかに、予算感は5万円と漠然とあったとします。予算感を聞かずに、30万円のカメラを薦めてしまったら、相手も「結構です」となってしまいます。
―― 暗黙知になっている部分を引き出すんですね。
読者からいただいたコミュニケーションに関する質問に、小林さんにお答えいただきました。情シスの業務で悩みやすい内容を取り上げて回答します。
―― 上司・経営者との関係で、搾取する側と搾取される側に分かれることは健全ではありませんし、そういうことを言っているわけではないですよね。
小林さん:ギバー、テイカ-、マッチャーの関係性を分析した結果でいうと、テイカ-と自己犠牲型ギバーは成功しないんです。テイカ-と自己犠牲型ギバーしかいない組織は成果が出ないので、いつか潰れてしまうと思います。
逆に最も成功するタイプは、他者思考型ギバーです。このようにギバーは、成功するかタイプか成功しないかに分かれるんですよ。成功するためには、他者思考型ギバーを目指すべきです。

―― 「ITの知識がなく、学習意欲のない上司に対してどのように行動すべきか?」という質問に対しては、いかがでしょうか?
小林さん:質問をしてくださった方は、おそらく質問にあるようにITの知識がなくて、学習する意欲もないから自分と馬が合わない・言語が合わないことがストレスなんだと思いますね。このようなときに取れるパターンは2つあります。1つは上司から逃げる。もう1つは上司の言語に自分が合わせることです。
繰り返しになってしまいますが、この問題も「課題が何なのか」がポイントです。課題を解決するため、ITに詳しくなってもらう必要があるなら、そういったアプローチが必要です。
一方で、課題のことを考えたらITに詳しくなくてもいい場合もあるかもしれません。ITに詳しくないと上司に対して思うのであれば、質問者の方が詳しいということですよね。それであれば、上司をフォローしてあげればいいんじゃないでしょうか。
―― 相手のタイプに合わせる、相手の言語に合わせるということですね。
小林さん:ご自身がプロフェッショナルと思っているのであれば、プロフェッショナルとして、どうしたら他者を助けられるかを考えたほうがいいですね。
―― 「情報が少ない場合の他社事例の収集や説明方法、インターネット以外での情報収集する方法を教えてください」という質問もいただきました。
小林さん:ジョーシスラーニングなど、コミュニティに入ったらいいのではないでしょうか。
―― たしかに情シス界隈の事例などもコミュニティにいるとわかりますからね。ジョーシスラーニングをすすめていただき、ありがとうございます!
小林さん:最後に少しだけ補足してもいいでしょうか。僕がなぜ今回のようなクリティカルな資料を作れるのかという話をできればと思います。答えはたった1つです。僕が最もコミュニケーションを不得手としていたからです。
―― 本当ですか?
小林さん:まったくできなかったといってもいいくらいです。社会人や学生時代は、情シスの人としか話せなかったし、そもそもまったくタイプが違う人と話すときはどもって赤面してしまって、まったくコミュニケーションが取れなかった経験があるからです。
―― どうして苦手なコミュニケーションを頑張ろうと思うようになったんですか?
小林さん:コミュニケーションが取れたほうが、仕事で有利になると気付いたからです。コミュニケーションスキルとして身につけるために、コミュニケーションが上手な人に聞きましたが、聞いても理解できなかったんです。コミュニケーションが上手な人は、自然とやっているので、言語化できていないじゃないですか。そのため、自分で研究せざるを得なかったんです。
―― なるほど。コミュニケーションを言語化したのが、今回のコミュニケーション術なのですね。
小林さん:だから今回のプレゼンテーション資料は、これまでの経験からできているといっても過言ではないです。死ぬほど失敗しましたね。
おかげでプレゼンとかも苦もなくできるようになりましたね。できないからこそ言語化できるのが、逆に強みですよね。
―― 「天才名選手は、必ずしも名監督にあらず」といいますもんね。
小林さん:できなかった人の失敗談を聞いたり、失敗している私のような人間が作っている資料を見たりするのは、腹落ちしやすいと思います。できないことは、できるレベルまでに分解して学習していけばいいんです。
コミュニケーションに関する実践方法や本質的な内容を、小林さんから解説いただきました。自分と相手についてよく知り、相手の課題を押さえたコミュニケーションを続けていくことで、信頼を獲得し、提案も通りやすくなるでしょう。
また、ジョーシスではセキュリティ対策をワンパッケージで対応することが可能です。一括で管理でき、情シス担当者の負担や工数が削減できるため、上司や経営者の方にも導入を促しやすいサービスとなっています。
組織利益の向上に、デバイスとSaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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