
今回のジョーシスラーニングのテーマは「Notion AIで実現できる新しい業務の形とAIとの正しい付き合い方」。Notion公式アンバサダーとしてご活躍される近藤容司郎さんと、Notionのソリューションエンジニアの林優さんをゲストに迎え、Notio AIの特徴から実践的な活用方法まで解説いただきます。
すでにNotionを活用して業務を行っている方はもちろん、Notionに触れたことがない方や、これから活用を検討している方に必見の内容となっています。
前半では林さんよりNotion AIの特徴や他のAIツールとの違いについて。後半では、近藤さんよりNotion AIとの向き合い方を実践的なユースケースとあわせて解説します。
<スピーカー>
まずは、Notion Labs Japan合同会社の林さんより、そもそもNotionとはどのようなサービスなのか、そして企業がNotion AIを活用することで得られるメリットについて解説いただきます。
林さん
「そもそもNotionとは何か?」と聞かれたら、「コネクテッドワークスペース」であるとお伝えしています。コネクテッドには「つなげる」という意味がありますが、まさにNotionを使うことであらゆる情報をつなげることが可能になります。
例えば、作成したドキュメントを他部署に共有したり、逆に他の方が作った情報を見たりすることができます。また、社内に点在するナレッジやプロジェクトを集約することが可能です。
さらにNotionではさまざまなアプリと連携できるため、ツールの切り替えの手間をなくし、シームレスに活用できるようになります。
このように、Notionを活用することであらゆる情報やデータをつなぎ合わせることができるので、生産性向上やコスト削減にもつながります。

林さん
今回Notionの新機能としてリリースしたのが「Notion AI」です。Notion AIは、その名前のとおりNotionに組み込まれたAI機能のことで、要はNotion上の作業をAIがサポートしてくれるというものです。
もう少し詳しく解説すると、Notion AIで実現できることとしては、大きく3つあります。

1.生産性向上
例えば、議事録やレジュメをAIが要約してくれたり、内容を読み取って次回アクションを提案してくれたりすることができます。
2.目が品質向上
英語の文章を日本語に翻訳したり、正しい文法に校正したりすることができます。さらに、文章のトーンを変えることや、長くしたり短くしたりなどの調整も可能です。
3.アイデアの創出
例えば、自分が何か新しい取り組みを行う際に、AIにアイデアをもらうことや、自分が考えを壁打ちできるため、企画をブラッシュアップすることができます。
このようにNotion AIはさまざまな使い方ができますが、自由度が高いため具体的な活シーンが思いつかない方もいるかと思います。そういった方に向けて、Notion AIのテンプレートを公開していますので、ぜひご活用いただけたらと思います。
林さん
近年ではChatGPTをはじめとしたAIツールが次々に登場しています。そうしたなかでNotion AIは他のサービスと何が違うのか、どのような利便性があるのかについてお伝えしたいと思います。

1.すぐに使える
Notion AIは、Notionのなかに組み込まれた機能のため、すでにNotionを活用している方であれば、ワンクリックですぐに利用できます。
2.既存のデータを活かせる
Notion AIは、Notion上に蓄積されている情報を使うことが可能です。例えばChatGPTの場合は、プロンプトを毎回入力しなければなりませんよね。一方、Notion AIの場合はNotion上に記載してある情報を要約したり、アクションを求めたりすることができる点が大きな特徴です。
3.今後の拡張性
現在、Notion上でAI機能を活用できる範囲は限られていますが、今後はタスク管理やデータベースなど、Notionのあらゆる機能にも対象範囲を拡大していく予定です。
そのため、今のうちからNotionに情報を集約し、操作に慣れておくことで、より便利な活用ができるようになると思います。
実際、すでにNotion AIを利用されている企業様からは、「仕事の質とスピードが向上した」といった声や「他のAIができない使い方を期待している」といった声まで数多くの反響をいただいています。
林さん
近年では、情報漏えい事故やサイバー攻撃被害の増加によって、企業のセキュリティ意識が高まっています。特にAIの活用においては、機密情報が第三者に見られてしまうのではないかと不安視する声もありますので、Notion AIにおいても特に気にされる部分かと思います。
セキュリティ観点において、Notion AIは安心してご利用いただくことが可能です。その理由としては、Notion上ではデータがすべて暗号化され、セキュアな環境で厳重に管理されることが挙げられます。
またNotion AIでは、AIモデルのトレーニングにお客様のデータを使用することは一切ありません。あくまでも、Notion AI機能を提供するためだけに利用されますので、安心して使っていただけたらと思います。
近藤さんは、国内でNotionの普及活動に従事しており、現在は企業におけるNotion活用をテーマにコンサルティング事業を手掛けています。
ご自身で使いこなしてみたからこそ見えてきた、Notion AIとの向き合い方から実践的ユースケースまで解説いただきます。
近藤さん
Notion AIとの向き合い方をお伝えさせていただくのですが、実はNotion AIが登場したとき、正直「めんどうだな」という印象を持ったんですよね(笑)エンタメとしてはおもしろいけれど、自分でやったほうが早そうかなと感じて、ビジネスシーンで使うイメージが湧かなかったんです。
とはいえ、Notionアンバサダーなどのお仕事もさせて頂いておりますので、どうやって使えば良いのか自分なりに向き合ったわけですが、あるとき「こうやって使えば良いのか」と気付いたんです。
まず、Notion AIの何が良いかといえば、「すぐに使える」という点です。他のAIツールを使う場合は、そのサイトにアクセスする必要がありますが、Notion AIの場合はNotion上でボタン1つで使うことができます。
そのため、Notionを使って作業している方であればノンストレスで利用できる点がメリットです。ただし、普段Notionを使っていない方にとっては、そこまでメリットに感じない部分かもしれません。
もう一つ便利な使い方を紹介すると、NotionのデータをそのままAIに渡せることです。例えばChatGPTの場合は、ユーザーが渡した情報に対してAIが返答してくれるというように、一問一答形式ですよね。
一方、Notion AIの場合は、Notion上に存在しているデータをAIに渡す命令文としてそのまま使うことが可能です。つまり、今まで行っていた作業の一部を簡略化させ、完了までのスピードを向上させてくれるのが、Notion AIの価値だと感じています。
例えるならば、Notion AIとはNotionに住む小人のような存在ですね。ワークスペースの情報を読み込んで要約してくれたり、次にやるべきことを示してくれたりと、我々人間を手助けしてくれるんです。
近藤さん
ここからは、実際に私が活用して便利だなと感じた使い方を紹介したいと思います。
1.議事録の要点整理
会議の議事録を要約するのって、正直かなり手間ですよね。
そんなときに、文字起こしデータをNotion上に保存して、Notion AIで「この議事録を要約し、箇条書きで出力してください」といったプロンプトを入力すると、瞬時に論点を箇条書きしてくれます。
2.コピーのアイデア出し
例えば、
といったように、条件も含めて指示を与えてあげると、瞬時にアイデアを出してくれます。
ただし、注意点としてはアウトプットされたアイデアをそのまま使うというよりも、それにインスピレーションを得て、さらにブラッシュアップさせるといった使い方が望ましいと思いますね。
3.フォーマットに沿った文章作成
例えば、求人媒体に掲載するための募集要項の制作をNotion AIに任せるとします。プロンプトには、募集職種、募集条件、その他必要なスキルや経験などを入力します。
具体的な条件が決まっていない場合は、「市場に即した、妥当な条件を設定してください」みたいな感じで入力すれば大丈夫です。すると、瞬時に募集要項を生成してくれます。このように、あらかじめ出力する項目が決まっているものに対して、AIが合わせにいってくれるので、作業時間の短縮化につながります。
4.文章の翻訳
例えば、英文を日本語に翻訳したり、逆も可能です。さらにNotionの一つの画面上で原文と翻訳文を並べるなんてこともできますね。

複数のツールと連携してNotionを活用する場合、設定ミスやドリフトによる情報のズレにも注意が必要です。実際の課題と対応策はよくある構成ドリフトの5つの課題と対策で紹介しています。
近藤さん
ここまでNotion AIの活用方法について、具体的なユースケースを交えて紹介してきましたが、前提として「Notion AI単体で情報は完成しない」ということを理解いただけたらと思います。あくまでもNotion AIの役割とは、人間が行う作業の一部を簡略化させ、完了までのスピードを向上させることだからです。
よく「Notion AIを入れたら何ができるの?」といった質問を受けますが、Notion AI自体が何かをやってくれるわけではないんですね。つまり、Notion AIをいれたら◯◯◯をAIが自動でやってくれるというものではなく、Notion AIがあれば◯◯◯の業務を◯分短縮できる。というのが正しいと思います。
Notion AIの現時点での得意領域としては、「情報の発散」と「情報の収束」の2つです。例えば、情報の発散にはアイデア出しや市場調査のベースライン出しが挙げられますし、情報の収束には、議事録のサマリ作成や文章の翻訳、文字揺れの統一などが挙げられます。
一方、現時点では不得意な領域もあります。例えば、「当社の経費申請の方法を教えてください」など普遍的ではない領域の最適化ですね。また、誰がみても高いと思える完成度へ磨き上げることも難しいです。そして、誰も正解がわからないような未知のモノに対する回答もできません。
近藤さん
Notion AIを活用するうえで、うまく使える人とうまく使えない人が二極化すると思います。なぜかというと、Notion AIは「事務処理能力が高い新卒社員」のようなものだからです。事務処理能力は極めて高いけれど、知識がないため、行間を読む力に限界があるんですね。そのため、Notion AIをうまく活用するにはタスクの分解力が求められます。
タスクの分解というのは、抽象的なことを具体化させるということです。例えば、普段コミュニケーションが取れている人であれば、「あれやっといて」で済みますが、相手が予備知識を何も持たない新入社員に対しては、具体的に指示する必要がありますよね。
つまり、業務を細かく分解して一つひとつの手順を丁寧に説明する必要があるわけです。ですから、具体化というのはとてもめんどうなことなんですね。これが、Notion AIを使える人と使えない人で大きな差になってきます。

要は人に何かを依頼する際に、あるべき方程式としては、「依頼の手間」よりも「期待する効果」が上回っている状態が理想です。しかしながら、Notion AIがどういうものかわかっていないと、依頼の手間のほうが大きくなりかねません。
そのため、いかに依頼の手間を小さくするかが、Notion AIと向き合ううえで大切だと感じます。そのためにも、「行間を読まないようにリセットする力」「タスクを分解する力」「条件を絞り込むように指示する力」を磨くことが大切です。
これがうまくできるようになると、期待する力を爆発的に大きくさせることが可能です。なぜなら、AIは負荷をかけても文句をいいませんし、事務処理能力が極めて高い新卒くらいの能力があるからです。

後半パートでは、「情報システム部門のリーダーを採用する募集要項を作成してください」というお題で、参加者とのNotion AIのコンテスト企画を実施しました。企画の途中ではQAセッションを挟み、Notion AIに対する質疑応答を行いました。
城戸
近藤さんからも、「Notion AIは事務処理能力が高い新卒社員だと思ったほうが良い」というお話もありましたが、具体的なプロンプトの書き方のコツなどはありますか?
近藤さん
いかに行間をリセットして、情報を絞り込んでいくかが大切だと思いますね。めんどくさいぐらいに具体的に書いてあげることが望ましいです。例えば、「◯◯文字以内で書いてほしい」とか、定量で指示すると期待する回答が出やすい印象があります。
城戸
ChatGPTなどでは、英語で書いたほうが精度が高くなるといったことも言われますが、Notion AIではどうでしょうか?
林さん
特に日本語でも精度は変わらないですね。プロンプトの観点で補足すると、いえばいうほど求めている回答が得られやすくなります。例えば、ニュアンス的な表現なんかは、繰り返し指示することで返してくれるようになりますね。まずはいろいろ試してもらうのが良いと思います。
城戸
なるほど、そうすると初めから精度の高いプロンプトを与えることを意識しすぎるよりも、まずはいったんプロンプトを与えてみて、その回答をもとにキャッチボールを繰り返すことが大切ということですね。
林さん
仰るとおりですね。あとは、Notionの場合は、出てきた回答の一部分だけを書き換えるといったこともできるので、その辺りが他のAIツールに比べて使いやすいポイントだと思いますよ。
城戸
Notion AIのデータ活用の部分で詳しく聞きたいのですが、企業情報を入力してもAIの学習データに使われたり、外部に流出したりするリスクはない。という理解でよろしいでしょうか。やはり企業がNotion AIを導入するにあたって、最も懸念するポイントだと感じています。
林さん
はい。セキュリティ管理は徹底していますので、その心配はありません。
城戸
Notion AIの活用を社内で浸透させるにはどういった取り組みを行うとうまくいきそうでしょうか?
林さん
まずはNotion AIで何ができるかというのを体感してもらうことが大事だと思います。すでにChatGPTなどを仕事で使っている方でしたら、どのようなことができるか具体的にイメージが湧くと思うのですが、なかには業務でAIツールを使ったことがない方も当然ながらいます。Notion AIではボタン1つでAIを動かせますので、まずはAIを体感してもらうページを作って、そこで気軽に触ってもらうような仕掛け作りをすると良いでしょう。
特に、いきなりプロンプトを入力してもらうのはハードルが高いと感じられる可能性がありますね。社内でテンプレートを作成したり、他の方のナレッジを共有したりすると使ってもらいやすくなると思います。
城戸
ChatGPTとNotion AIはどのように使い分けたら良いでしょうか?
林さん
ChatGPTの場合はオプトアウトしない限りは、モデルのトレーニングに使われる可能性があるため、業務でChatGPTを使うのは基本的におすすめしないですね。あくまで、企業情報を扱わないようなプロンプト入力の場合に留めるべきと思います。
Notion AIではモデルのトレーニングに情報を使うことは一切ありませんので、ご安心いただけたらと思います。またNotion AIでは、回答情報をどこかのページに残しておきたい場合や、すでにある情報を活用したい場合にもおすすめです。
AIツールを開いてわざわざ情報をコピー&ペーストする必要がなく、同じ画面上でシームレスに作業できますので、業務効率化にもつながりますね。
城戸
現在Notionに限らず、SaaS利用は拡大の一途を辿っているというのはみなさんもご認識のとおりかと思います。実際にアメリカでは1社あたりSaaS利用数は80ともいわれており、日本でも平均17のサービスを利用しているといわれています。
こうしたSaaSを利用することで、多くの従業員にとって業務効率化は格段に進みました。一方、情シス部門の担当者からすれば、アカウント管理の負担が増え続けているのが現状です。
具体的には、誰が何のSaaSを利用しているかわからないといったことや、退職者のアカウントをタイムリーに削除できておらず情報漏えいリスクが高まっているといったことが挙げられます。
そういった課題に対して、私たちはジョーシスというサービスで、企業のSaaSアカウント管理をサポートしています。具体的にできることとしては、SaaS台帳管理、アカウント運用といったSaaSの運用・管理業務のサポートや、デバイス台帳管理、キッティング、デバイスセキュリティといったデバイス運用・管理業務のサポートまで行えます。
このように、これからNotionおよびNotion AIを導入して業務効率化を図りたい企業様は、ジョーシスも活用いただくことで、簡単かつ安全に利用いただけます。
今回の「ジョーシス ラーニング」では、今話題の「Notion AI」について、活用事例や「ユーザー参加型 Notion AI活用コンテスト」などを通じて徹底解説しました。
AIツールをうまく活用することで、業務時間の短縮やより質の高いアウトプットをもたらします。これからの時代、AIと上手に付き合う力こそがますます求められていくでしょう。
しかし、AIツールによってはモデルのトレーニングに使われたり、外部の重要な機密情報が見られてしまうリスクも考えられます。便利さばかりに目を向けるのではなく、使い手側のリテラシー向上も重要になってきますので、今回の内容を少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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