プライバシー設定
このサイトでは、第三者のウェブサイト追跡技術を使用して、当社のサービスを提供および継続的に改善し、ユーザーの興味に応じた広告を表示します。同意します。また、将来的に有効となる限り、いつでも同意を取り消したり、変更したりすることができます。
拒否
[すべて承認]
すべての記事

企業のサイバー攻撃対策ガイド|情シス担当者が優先すべき7つの施策

共有
コピー

企業を狙うサイバー攻撃は、件数・手口ともに高度化の一途をたどっています。IPAの「情報セキュリティ10大脅威2025」ではランサムウェアが4年連続で1位、サプライチェーン攻撃が2位を占めており、被害は大企業だけでなく中堅企業にも広がっています。

この記事では、攻撃の種類と被害実態を整理したうえで、情シス担当者が優先すべき対策を具体的なロードマップとともに解説します。

企業を狙うサイバー攻撃の現状と被害規模

サイバー攻撃の脅威は2020年代以降、急速に深刻化しています。被害規模の数値を把握しておくことは、社内での予算取りや経営層への説明においても重要な根拠になります。単に「危ない」ではなく、「どれくらいの確率で・どれくらいのダメージが起きるか」を具体的な数値で語れることが、情シスとしての説得力につながります。

国内の被害件数は過去最多水準が続く

2024年、上場企業とその子会社が公表した個人情報漏洩・紛失事故は189件(前年比8.0%増)、漏洩した個人情報は1,586万人分超に達しました(東京商工リサーチ調査)。サイバーセキュリティクラウドの調査では、2024年は約3日に1回のペースで国内企業・自治体のセキュリティインシデントが発生しており、年間漏洩件数は約2,164万件に上ります。「大企業の問題」という認識はもはや通用しません。

2025年に入ってからも状況は好転しておらず、警察庁の統計では2025年上半期のランサムウェア被害届出件数が前年同期を上回るペースで増加しています。攻撃者はツールの自動化・分業化を進めており、「RaaS(Ransomware as a Service)」の仕組みにより、技術力の低い攻撃者でも大規模な攻撃を仕掛けられるようになっています。

中堅・中小企業が標的になりやすい理由

攻撃者は中堅・中小企業のセキュリティ投資の手薄さを利用しています。警備の厳重な大企業を直接攻撃するよりも、その取引先や委託先を経由して侵入するサプライチェーン攻撃が増加しています。自社の対策だけでは足りず、外部に侵入の踏み台にされるリスクがある点が、中堅企業特有の課題と言えます。

また、大企業では専任のセキュリティチームやSOC(セキュリティオペレーションセンター)を設けていますが、中堅企業では情シス担当者が兼務で対応しているケースが大半です。攻撃者からすれば、防御力が低く・攻撃が成功した場合の身代金支払い能力もある中堅企業は「コスパの良い標的」になります。

サイバー攻撃が経営に与える実質的なダメージ

ランサムウェアに感染すると、業務停止による機会損失、データ復旧費用、顧客への賠償、対外公表に伴うブランド毀損が同時に発生します。2024年のKADOKAWA事案では、約25万4,000人分の個人情報が流出し、Webサービスが長期停止に追い込まれました。サイバー攻撃対策は「コスト」ではなく「経営投資」として位置づけるべき時代です。

IBMの「コスト・オブ・ア・データ・ブリーチ」レポート2024によると、データ侵害1件あたりの平均コストは4.88百万ドル(約7億円以上)に達しており、過去最高水準です。日本企業においても、インシデント対応費用・業務停止損失・法的費用・顧客通知費用を合算すると、中堅企業でも数億円規模のダメージになるケースがあります。

参考: 2024年のインシデント事例まとめ&2025年に注意すべき脅威とは?

参考:2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多

企業が直面する主なサイバー攻撃の種類

自社が直面しやすいリスクを正確に把握することが、限られたリソースで効果的な対策を打つ前提になります。主要な攻撃手口を4つ押さえておきましょう。それぞれの攻撃がどのように行われるか、どんな被害が発生するかを理解することで、対策の優先度が判断しやすくなります。

ランサムウェア――業務を完全停止させる暗号化攻撃

サーバーや端末のファイルを暗号化し、復号の対価として身代金を要求するマルウェアです。近年は「二重恐喝」が主流となり、暗号化と同時に機密データを盗み出して、支払いがなければ公開すると脅す手口が広がっています。警察庁の調査では、感染経路の83%がVPN機器またはリモートデスクトップ経由。リモートアクセス環境の管理が急務です。

ランサムウェアに感染した場合の典型的な被害シナリオは以下の通りです。感染端末からネットワーク内の他端末・サーバーへと感染が拡大(ラテラルムーブメント)し、バックアップサーバーも含めた広範囲の暗号化が完了した段階で、攻撃者から身代金要求メッセージが届きます。暗号化後にバックアップから復元できなければ、業務再開まで数週間から数か月を要することがあります。

特に危険なのが「バックアップも暗号化された」ケースです。オンラインで接続されているバックアップはランサムウェアの対象になるため、ネットワーク分離されたオフラインバックアップの整備が不可欠です。

フィッシング・標的型メール攻撃

不正なURLや添付ファイルを含むメールで認証情報を窃取する手口です。2024年のKADOKAWA事案でも、フィッシングで従業員のアカウントが奪われたことが侵入の起点でした。標的型メールは件名や文面を巧みに偽装しており、従来のスパムフィルターでは検知しきれないケースがあります。

最近のフィッシングは「ビジネスメール詐欺(BEC)」と組み合わされることが多く、経営幹部や取引先を装ったメールで従業員を誘導します。「急ぎで送金してください」「このリンクからシステムにログインしてください」という文言で、平時では疑いを持つ行動に誘導します。生成AIの普及により、自然な日本語でのフィッシングメールが増加しており、文体でフィッシングを見抜くことが難しくなっています。

サプライチェーン攻撃――委託先経由の侵入

セキュリティの強固な大企業を直接狙うよりも、水準の低い委託先・仕入れ先を踏み台にして侵入する手口です。IPA「情報セキュリティ10大脅威2025」で2年連続2位にランクインしており、自社だけでなくサプライチェーン全体のセキュリティ水準を管理する必要が生じています。

サプライチェーン攻撃の典型的な手口は、まず中小の委託先企業に侵入し、その企業が使用する正規の通信経路やソフトウェアアップデートを経由して標的の大企業に侵入するものです。2020年のSolarWinds事件では、IT管理ソフトのアップデートにマルウェアが混入され、米国政府機関を含む18,000社以上が影響を受けました。

自社のセキュリティを強化するだけでなく、重要な委託先・仕入れ先のセキュリティ対策水準を確認・評価することが、取引先管理の一部として求められます。

不正アクセス――ID・パスワードの窃取と悪用

窃取した認証情報を使い、正規ユーザーになりすまして社内システムやSaaSに侵入する攻撃です。シングルファクター認証しか設定されていないサービスは特にリスクが高く、多要素認証(MFA)の未導入が侵入を許す主因となっています。退職者のアカウントが残存していると、その元従業員のIDが格好の侵入口になります。

特に問題なのが「クレデンシャルスタッフィング攻撃」です。過去に別のサービスで漏洩したID・パスワードのリストを使って、他のサービスへのログインを自動的に試みる攻撃で、同じパスワードを複数サービスで使い回しているユーザーが被害に遭います。2024年だけで数十億件の認証情報がダークウェブで取引されており、どの企業の従業員IDも漏洩リストに含まれている可能性があると考えて対策を立てる必要があります。

参考: 「情報セキュリティ10大脅威 2025」から学ぶ

参考: 2025年ランサムウェア感染経路ランキング

サイバー攻撃を受けやすい企業の共通点

被害企業の事後分析を見ると、攻撃成功の背景にはいくつかの共通した脆弱性があります。自社に該当する項目がないか確認してください。「うちはまだ大丈夫」という思い込みが最大のリスクです。

セキュリティパッチの適用遅れ

OSやVPN装置などに既知の脆弱性が放置されていると、攻撃者はその脆弱性を突いて侵入します。特にVPN機器はリモートアクセスの入り口となるため、パッチ未適用が続くと深刻なリスクになります。定期的なパッチ適用プロセスが確立されていない企業は今すぐ見直しが必要です。

CVE(共通脆弱性識別子)データベースに新しい脆弱性が公開されると、多くの場合、数日以内に攻撃ツールが出回ります。パッチが提供されてから適用されるまでの期間が長いほど、攻撃者が侵入できる窓口が開いている時間が長くなります。特に、リモートコード実行(RCE)やパスワードなしアクセスを許す「Critical」評価の脆弱性は、48時間以内のパッチ適用を目標として設定することが推奨されます。

多要素認証の未導入

IDとパスワードだけのログイン環境は、認証情報が漏洩した時点で不正アクセスを許してしまいます。MFAを導入するだけで、フィッシングやパスワードリスト攻撃による不正ログインの大半を防ぐことができます。コストパフォーマンスの観点から最優先で取り組むべき施策です。

Microsoftの調査では、MFAを導入することで不正アクセスの99.9%を防げると報告されています。特に管理者アカウント・VPN・クラウドサービスへのMFA導入は、最も費用対効果の高いセキュリティ投資と言えます。導入コストは月額数百円からのSaaSサービスで実現でき、投資対効果の試算では通常「最も費用対効果が高い対策」に分類されます。

SaaSのシャドーIT・野放しアカウント

情シスが把握していないSaaSが社内に存在する場合、そのセキュリティ設定や退職者アカウントの管理は誰も行えません。見えていないSaaSが攻撃の侵入口として利用されるリスクがあります。利用中のSaaSの種類が増えるほど、管理漏れが発生しやすくなります。

実際に、退職した元従業員がSaaSへのアクセス権を保持したまま不正アクセスを行ったケースや、元従業員のアカウントが第三者に悪用されたケースは国内外で報告されています。利用中のSaaSが50種類を超える環境では、手作業での退職者アカウント管理は事実上不可能であり、ツールによる自動化が必要です。

バックアップ体制の不備

「バックアップはある」と思っていても、その内容が実際のリカバリーに使えないケースがあります。典型的な問題として、バックアップデータが本番環境と同じネットワークに置かれていてランサムウェアの暗号化対象になった、バックアップの定期テスト(リストアテスト)を行っていなかった、重要なシステムのバックアップ対象から漏れていたといったケースがあります。バックアップがあっても、使えないバックアップでは意味がありません。

インシデント対応計画の不在

被害を受けた企業の多くが、インシデント発生時に「何をすればいいかわからない」という状態に陥ります。誰に報告するか、どのシステムをいつ隔離するか、外部の専門機関にいつ連絡するか、どのタイミングで経営層・取引先・監督官庁に報告するかを事前に決めていなければ、初動が大幅に遅れます。初動の遅れは被害の拡大に直結します。

参考: 大手企業の情シスが遭遇した、SaaS利用関連のリスクTOP10

企業がとるべきサイバー攻撃対策7つの柱

効果的なサイバー攻撃対策は、単一の製品導入ではなく複数の防御層を組み合わせる「多層防御」が基本です。情シス担当者が優先すべき7つの施策を整理します。各施策が「何を守るか」「何から守るか」を意識しながら読み進めてください。

① ネットワーク境界の防御

外部からの不審な通信を遮断するファイアウォールと、マルウェア・不正アクセス・スパムを統合的に検知するUTMは、セキュリティ対策の基盤です。リモートワーク環境ではVPNの設定不備が攻撃起点になりやすいため、VPN装置のファームウェアを最新に保ち、不要なポートの開放を避けることが重要です。

特に注意すべきは「VPN機器の管理インターフェースをインターネットから直接アクセス可能な状態」にしないことです。管理インターフェースは内部ネットワーク側のみからアクセスできるよう制限し、定期的に接続ログを確認して不審なアクセスがないか監視します。また、使用していないVPNアカウントを定期的に棚卸しして削除することも重要です。

② エンドポイント保護(EDR導入)

従来のウイルス対策ソフトに加え、端末の挙動を継続的に監視して異常を検知・対応するEDRの導入が現在の標準です。未知のマルウェアや標的型攻撃を検知する能力が高く、インシデント発生時の原因調査にも活用できます。

EDRは「発生したインシデントを記録し、後から追跡できる」機能が特に重要です。何が起きたかを詳細に分析できなければ、再発防止策も立てられません。主要なEDR製品(CrowdStrike Falcon、Microsoft Defender for Endpoint、SentinelOneなど)は、感染の経路・時系列・影響範囲を可視化する機能を持っており、インシデントレスポンスの品質を大幅に向上させます

③ ID・アクセス管理の強化

MFAの全社導入は最も費用対効果が高い対策です。「すべてのアクセスを信頼しない」というゼロトラストの考え方のもと、社内外を問わず継続的にアクセスを検証する仕組みを段階的に整備します。SSOとIDaaSを組み合わせることで、SaaS全体のアクセス管理を一元化できます。

ゼロトラストの実装は一夜にして完成するものではなく、段階的なアプローチが現実的です。まず「すべてのSaaSにMFAを導入する」「IDプロバイダー(Entra IDやOkta)でSSOを統合する」ことから始め、次に「デバイスの信頼性を検証する(BYOD管理)」「ネットワーク位置に関係なくアクセス制御を適用する」というステップで成熟度を高めます。

④ 脆弱性管理とパッチ適用の自動化

OS・アプリ・ネットワーク機器の脆弱性を定期スキャンし、優先度をつけてパッチを適用するプロセスを確立します。手動対応では漏れが生じやすいため、パッチ管理ツールを活用して適用状況を可視化することが有効です。

脆弱性管理のベストプラクティスとして、まず脆弱性の「重要度(CVSS スコア)」と「自社環境での悪用可能性」の2軸で優先度を評価します。CVSSスコアが9.0以上(Critical)かつ攻撃ツールが公開されている脆弱性は、緊急対応として72時間以内のパッチ適用を目標とします。スコアが7.0〜8.9(High)は1週間以内、それ以下は通常のパッチサイクル(月次)での対応が一般的な基準です。

⑤ バックアップとインシデント対応計画

ランサムウェア感染後も事業を継続するために、オフラインバックアップまたはイミュータブルバックアップが必須です。バックアップは暗号化されないネットワーク分離環境に保管し、定期的に復元テストを行います。インシデント発生時の対応手順を文書化しておくことで、初動の遅れを防げます。

バックアップのベストプラクティスとして「3-2-1ルール」が知られています。データのコピーを3か所に保管し、2種類の異なる媒体を使用し、1か所はオフサイト(外部)に保管するという原則です。さらに、1か所はオフライン(ネットワーク接続なし)であることが、ランサムウェア対策として重要です。バックアップの定期テスト(月1回以上)により、実際に復元できることを定期的に確認します。

⑥ セキュリティ教育と標的型メール訓練

技術的な対策に加え、従業員の行動が最終的なセキュリティの鍵を握ります。フィッシングメールの見分け方、パスワード管理、不審ファイルの取り扱いについて定期的な教育を実施します。標的型攻撃メール訓練を年2回以上実施し、クリック率を追跡することで教育効果を測定できます。

セキュリティ教育の効果を高めるには、「禁止事項の説明」ではなく「なぜそのリスクがあるか」「実際にどんな被害が起きているか」を具体的に伝えることが重要です。また、フィッシングを発見して報告した従業員を表彰する仕組みを作ることで、「報告する文化」が定着します。クリックしてしまった従業員を責めずにフォローアップ研修を提供するアプローチにより、教育効果が高まります。

⑦ SaaS・クラウドの可視化とアクセス管理

SaaS利用の拡大とともに、情シスの管理対象外となるシャドーITが増加します。利用中のSaaSを棚卸しして可視化し、退職者アカウントの即時削除、アクセス権限の最小化を徹底することが不正アクセス防止の基盤となります。

SaaS管理の観点では、「誰がどのSaaSにアクセスできるか」を常に最新の状態で把握することが不正アクセス防止の基本です。退職者のアカウントが1か月以上残存している状態や、人事異動後も前部署の権限が残っている状態は、セキュリティ上の重大なリスクです。SaaS管理ツールを活用して、入退社・異動のたびにアカウントを自動的に更新する仕組みを整備することが、中堅企業の現実的な解決策です。

参考: 【2025年最新】今すぐ取り組むべき9つのセキュリティ対策

情シス2〜3名体制で回す運用の現実解

500名規模の企業でも情シスが2〜3名というケースは珍しくありません。限られたリソースでサイバー攻撃対策を機能させるには、優先順位の設計と外部リソースの活用が鍵になります。「すべてを完璧にしようとしない」という考え方が、少人数体制では特に重要です。

リスクベースで優先順位をつける

すべての対策を一度に揃えようとすると、どれも中途半端になりがちです。「攻撃を受けた場合に最も事業インパクトが大きい資産はどこか」を起点に、リスクの高い順から手当てするリスクベースアプローチが現実的です。多くの中堅企業では、MFA全社展開→パッチ適用の自動化→EDR導入という順序が有効です。

リスクを評価する際の基準として「資産の重要度×攻撃可能性×影響度」の3軸が参考になります。たとえば、インターネットに公開されているVPN機器は「攻撃可能性が高い」資産であり、業務継続に直結する財務系システムは「影響度が高い」資産です。この2条件が重なる資産を最優先で保護します。

外部MSSPの活用で監視負荷を下げる

24時間365日の監視を少人数の情シスで担うことは現実的ではありません。MSSP(マネージド・セキュリティ・サービス・プロバイダー)にSOC機能をアウトソースすることで、監視・検知・初動対応を外部に委ねながら、情シスは戦略的な対策立案に集中できます。

MSSPへのアウトソースに際しては、「どの範囲を委ねるか」「重大インシデント発生時の連絡・対応フロー」「月次レポートの内容と共有方法」を契約前に明確にしておくことが重要です。また、MSSPに任せる範囲と情シスが自社で担う範囲の境界線を明確にすることで、責任の曖昧さをなくします。

最低限整備すべきポリシー3点

体制構築の初期段階で優先すべき文書は3点です。①パスワードポリシー(複雑性・更新頻度・MFA義務化)、②私用端末・クラウドサービスの利用ルール(BYODポリシー・シャドーIT申請フロー)、③インシデント発生時の報告・対応フロー(初動手順・連絡先・対外報告の判断基準)。ポリシーがなければ、教育も技術的対策も機能しません。

特にインシデント対応フローは、「発生したら必ずこの順序で動く」という手順書をあらかじめ作成し、担当者全員に共有しておくことが重要です。インシデント発生時はパニック状態になりやすく、冷静に判断できない場面でも手順書があれば行動できます。

セキュリティ投資の費用対効果の示し方

情シスが経営層にセキュリティ予算を要求する際、「必要だから」では通りにくいのが実情です。費用対効果を示すには、「サイバー攻撃を受けた場合の想定損害額(業務停止日数×売上/日+データ復旧費用+対外賠償等)」と「対策コスト」を比較する「リスク低減効果」の試算が有効です。

たとえばMFAの導入コスト(月額数百円/人)と、フィッシングによる不正アクセスが発生した場合の対応費用(調査・復旧費用で数百万〜数千万円)を比較すれば、投資対効果は明らかです。このような具体的な数値を用いた説明が、予算獲得の説得力を高めます。

参考: 「情報セキュリティ10大脅威 2026」から学ぶ

SaaS管理がサイバー攻撃の第一防衛線になる理由

企業のSaaS利用が拡大するにつれ、SaaS管理の不備が攻撃の入り口になるリスクが顕在化しています。SaaS管理を「コスト管理」だけでなく「セキュリティ対策」として位置づける必要があります。情シスがSaaS管理に取り組む理由が「コスト削減」だけという場合、セキュリティリスクの観点が見落とされてしまいます。

シャドーITが作る「見えない攻撃面」

従業員が個人で契約したSaaSや、部門担当者が情シスに申請せず導入したツールは、情シスの管理外です。セキュリティ設定の確認もMFAの強制もできないまま放置されます。攻撃者は管理の手薄なサービスのアカウントを狙うため、シャドーITが多いほど攻撃面(アタックサーフェス)が広がります。

従業員500名以上の企業では、情シスが把握しているSaaSの約3倍以上のSaaSが実際に使われているという調査データがあります。「把握しているSaaSが50種類」の企業では、実態として150種類以上が使われているかもしれません。情シスが知らないSaaSにはセキュリティ設定の管理ができないため、そこが攻撃の入り口になっても気づけません。

退職者アカウント放置が招く不正アクセスリスク

退職者のSaaSアカウントが削除されずに残存していると、そのアカウントが乗っ取られた場合に不正アクセスの起点となります。利用中のSaaSの種類が50種類を超えると、手動での退職処理では漏れが発生しやすくなります。退職のたびに全SaaSを手動確認する工数も、情シスへの大きな負担です。

VerizonのDBIRレポートによると、不正アクセスの事例の多くで「退職者アカウント」「権限を持ちすぎたアカウント」が利用されています。退職後に悪意を持った元従業員が会社データにアクセスするケースや、退職者アカウントのパスワードが第三者に流出して悪用されるケースが報告されています。

JosysによるSaaS可視化・自動アクセス制御

Josysは、社内で利用されているSaaSをすべて可視化し、アカウントの棚卸しから退職者のアクセス権自動削除までを一元管理するSaaS管理プラットフォームです。シャドーITの発見、退職者アカウントの自動無効化、アクセス権限の最小化を実現します。SaaS管理を自動化することで、不正アクセスのリスクを下げながら情シスの運用工数を大幅に削減できます。

実際に、Josysを導入した企業では退職者アカウントの削除対応を「数日後の手動作業」から「退職日当日の自動処理」に変えることができており、アクセス権の放置リスクを大幅に低減しています。また、シャドーITの発見機能により、情シスが把握していなかったSaaSを平均20〜30種類発見した企業の事例も報告されています。

Josysの資料をダウンロードして、SaaS管理によるセキュリティ強化の詳細を確認する

資料ダウンロードはこちら

サイバー攻撃対策の優先度ロードマップ

対策の全体像を把握したうえで、フェーズ別に着手する順序を設計します。以下は情シス2〜3名体制の中堅企業を想定したロードマップです。「やるべきことがたくさんあるが、何から始めればいいかわからない」という情シス担当者が、行動に移せるレベルまで具体化しています。

フェーズ1(0〜1か月):今すぐできる緊急対策

まず費用と時間をかけずに実施できる対策から着手します。これらは設定変更レベルで対応可能なものが多く、「やる気があれば今日中にできる」施策です。

  • 全社MFAの有効化:利用中のSaaS・VPN・社内システムに順次MFAを設定する。特に管理者アカウント・メールシステム・VPNを最優先で対応。
  • パッチ適用状況の棚卸し:OS・VPN機器・主要アプリの未適用パッチを洗い出す。重要度「Critical」のパッチは即時適用を目標とする。
  • バックアップ設定の確認:重要データがオフラインバックアップされているか確認する。バックアップからの復元テストを1件実施する。
  • インシデント報告フローの文書化:何かあったとき誰に報告するかを明文化する。最低限、情シス内・経営層・外部専門家の連絡先リストを作成する。

フェーズ2(1〜3か月):体制・ポリシーの整備

技術的な対策と並行して、組織的な体制を整備します。ポリシーがなければ技術対策も形骸化します。

  • EDRの導入と設定:全端末へのEDR展開と検知ルールのチューニング。クラウド型のEDRであれば比較的短期間で展開できます。
  • セキュリティポリシーの策定:パスワードポリシー・BYODポリシーの文書化と周知。複雑なものでなく、従業員が読んで理解できる平易な表現で作成することが重要です。
  • SaaS棚卸しと不要アカウント整理:利用中SaaSの全量把握と退職者アカウント削除。SaaS管理ツールを活用することで、手作業での把握が難しいシャドーITも検出できます。
  • フィッシング訓練の実施:第1回の標的型攻撃メール訓練と結果の振り返り。クリック率・報告率を記録し、次回訓練の改善点を整理します。

フェーズ3(3か月以降):継続監視と自動化

初期対応が完了したら、継続的な改善サイクルの仕組みを作ります。セキュリティは「一度整備したら終わり」ではなく、継続的なアップデートが必要です。

  • MSSP契約または社内SOCの整備:継続的な監視体制の構築。予算に余裕があればMSSP、なければEDRの自動アラートとオンコール体制の整備から始めます。
  • 脆弱性スキャンの定期実施:四半期ごとの脆弱性診断と対応。外部からの視点で脆弱性を発見するペネトレーションテストを年1回実施することも推奨されます。
  • SaaS管理の自動化:入退社に連動したアカウント自動発行・削除フローの整備。人事システムとSaaS管理ツールを連携させることで、退職者アカウントの削除漏れをゼロにします。
  • 年次セキュリティ教育の定着化:全社員向けトレーニングの仕組み化。e-ラーニングを活用した自己学習型の教育を定期的に実施します。
  • セキュリティ指標のKPI化:MFAカバー率・パッチ適用率・インシデント件数・ヘルプデスク対応時間などをKPIとして定期的にモニタリングし、経営報告に組み込みます。

参考: 【2025年最新版】サイバー攻撃対策ガイド

まとめ

サイバー攻撃対策は、リスクの高い領域からフェーズを分けて着実に対処することが現実的です。特にコストパフォーマンスを重視するなら、MFAの導入退職者アカウントの管理自動化から着手することが最も効果的です。

SaaS利用が拡大した現代では、利用実態の可視化が不正アクセスを防ぐ大きな鍵となります。サイバー攻撃の手口はランサムウェア・フィッシング・サプライチェーン攻撃など多様化しており、中堅企業も例外ではありません。すべての対策を一度に揃えようとするより、リスクの高い領域からフェーズを分けて着実に対処することが現実的な進め方です。

MFAの全社展開、パッチ適用の自動化、EDRの導入、そして退職者アカウントの即時削除を中心とした多層防御の構築が、サイバー攻撃対策の骨格になります。特にコストパフォーマンスを重視するなら、MFAの導入と退職者アカウントの管理自動化から着手することが最も費用対効果が高い選択です。

SaaS利用が拡大した現在の環境では、利用中SaaSの可視化と退職者アカウントの確実な削除が、不正アクセスを防ぐ上で費用対効果の高い施策の一つです。SaaS管理ツールによる自動化は、情シスが限られたリソースでセキュリティ水準を引き上げるための有効な手段です。

Josysでサイバー攻撃対策の第一歩を踏み出す

Josysは、社内SaaSの可視化・アカウント管理・アクセス権限の自動制御を通じて、情シスのセキュリティ運用を支援するプラットフォームです。シャドーITの発見から退職者アカウントの自動削除まで、手動作業を大幅に削減しながらセキュリティリスクを低減できます。

Josys資料ダウンロード(無料) | 無料トライアルを申し込む

Questions? Answers.

No items found.
No items found.