Privacy Settings
This site uses third-party website tracking technologies to provide and continually improve our services, and to display advertisements according to users' interests. I agree and may revoke or change my consent at any time with effect for the future.
Deny
Accept All
Privacy Settings
This site uses third-party website tracking technologies to provide and continually improve our services, and to display advertisements according to users' interests. I agree and may revoke or change my consent at any time with effect for the future.
Deny
Accept All
すべての記事

海外子会社に潜む、ITガバナンスの盲点

共有
コピー

記事のポイント

Situation(状況) 日本企業は規模や業種に問わず、海外進出が一般的になっている。日本の海外直接投資はアメリカに次いで世界第2位。しかし、海外子会社のITガバナンスが行き届いていない。
Complexity(複雑性)言語、商習慣、現地制度、システムの違いなどが原因。日本本社のルールやツールを完全に海外に適用することが困難。また、インターフェースなど使い勝手も日本と海外での差があり、ツール選定は日本の常識が通じない。
Question(問い)日本本社のIT部門の負担増大をできるだけ避けつつ、かつ、海外子会社のITガバナンスを強化するにはどのような方法があるか。
Resolution(解決法)海外子会社管理の課題を克服して、日本と海外共通で違和感なく活用できるツールを採用する。そのためのポイントは本文に記載。

このような方におすすめ
CIO/CISO、情報システム部門、DX部門、海外事業部、海外拠点の現地責任者・総務・管理・IT担当者

はじめに

 日本企業の戦略にとって海外進出の重要度は高まっています。そうしたなか、海外拠点のガバナンスは、日本との商習慣や制度の違いなどから、さまざまな工夫が必要となります。ITにおけるガバナンスも例外ではありません。考え方によっては、強いルールが存在する財務や法務以上に、IT分野は工夫が必要だといえるでしょう。

 「ジョーシス式ITガバナンス」の第9回は、日本本社からみた海外子会社管理におけるITガバナンスの課題について考えます。

 今回は、自社の海外子会社(含む子会社以外の形態の海外拠点)自体にフォーカスします。本来で、現地取引先などサプライチェーンまで考える必要や、買収先企業であれば独自の課題がありますが、別の機会で論じます。

1.日本企業の成長に必要な海外市場とリスク

 コロナ禍後、日本から海外への直接投資(FDI)は大きく回復し、アメリカ(3730億米ドル)についで、1610億米ドルで第2位のFDI大国となっています。これだけ日本企業が海外で活発に活動している分、ITガバナンスについても考えるべきことが多いと言えるでしょう。

1.1 外外進出企業、多様化する業種

 海外投資は、かつて、大企業が行うというイメージがありました。しかし、最近は、グローバルニッチ分野で競争力のある製造業や、日本インバウンドブームの合わせ鏡として日本食やコンテンツ系の企業、そして、スタートアップと多岐にわたる日本企業が積極的な海外展開をしています。

 筆者が経験したエピソードを少し、お話しします。筆者は、長らく東南アジアに関わり、2000年〜2006年にマレーシア、2016年〜20223年にシンガポールに在住し、東南アジア各国や中国など新興国に頻繁に出かけていました。

画像

(Photo: Unsplash/shawnanggg)

 マレーシアにいたころから日本企業のプレゼンスは高く、商社、金融、製造業、建設などの大手が中心で、いくつか大手の小売・流通業が進出しているという状況でした。

 それから10年以上経ち、7年間滞在したシンガポールでは、ちょうど、日本で私たちが親しんでいる飲食店や小売チェーン店の進出ラッシュでした。加えて、スタートアップも積極的に海外市場への展開をしていましたタイミングにも重なりました。また、一部には、100年、200年以上という歴史のある日本の伝統産業を担う老舗企業が進出する動きもありました。

 今や、規模やセクターを問わず、日本企業が海外市場で成長を目指すというシナリオを検討することは、一般的な選択肢となりました。

1.2海外拠点管理の難しさ

 一方で、海外拠点管理の難しさは、その企業の海外事業の規模や長さを問わず、よく話題に上りました。人事や労務、買収した現地企業のPMI(Post Merger Integration)など、さまざまな論点があり、ITガバナンスもそのうちの一つでした。とりわけ、海外子会社の社員による不正行為や懸念行為や、サイバー被害はITガバナンスの不行きがリスクの源泉でもありました。

2.日本の常識が通じない

 かつては海外もオンプレミス型のITシステムが中心でした。今は、先進国と新興国を問わず、SaaS(Software as a Service)などクラウドサービスが主流となりつつあります。また、コロナ禍によりリモートワークは日本と同様か、それ以上に普及しています。コロナ禍後にオフィス回帰の動きもあるものの、毎日出社にまでは戻らず、ハイブリッドワークが一般的に行われています。

 こうした環境のなか、日本での常識が通じない場面が多くあり、ITガバナンスにおいても発想を変える必要があります。

2.1 「リープフロッグ」がもたらす状況

 海外市場でも新興国では、テクノロジーの「リープフロッグ(蛙跳び)」が起こっており、オンプレミス型が普及する前にスマートフォンとクラウドの時代に入り、仕事も生活も新しい形になりました。ある意味で、日本よりも、新しいテクノロジーや仕事のあり方に柔軟に対応している側面があります。

 そうしたなか、ITガバナンスにおけるSaaS等クラウドサービスの扱いは重要な論点となります。さまざまなツールが公私混同で利用されていることは珍しくありません。

 例えば、個人向けのチャットツールです。東南アジアではWhatsApp、中国ではWeChat、韓国ではカカオトークといったアプリが利用されており、個人アカウントで仕事上のやりとりがごく一般的に行われていました。

画像

(Photo: Unsplash/Adem AY)

 クラウドストレージなど、リスクが高いツールも公私混同ということがあります。会社支給のデバイスにかわり、自身のデバイスを持ち込むBYOD(Bring Your Own Devices)方式の組織も珍しくはありませんでした。

2.2 海外子会社のITガバナンス上の課題とは

 そうしたなか、日本本社では特定のガイドラインやツールである程度の管理がされているものの、現地拠点では不十分であったり、ほぼ放置されていたりしているという事例も目の当たりにしました。

 なぜ、このような状態が生じるのでしょうか。

 そもそも、ITガバナンスにおいて、海外子会社に日本本社と同じポリシーやツールを完全に適用することは現実的には困難です。その主な理由は下記です。

1)法律や規制の違い
 各国には独自のデータ保護法やプライバシー規制、コンプライアンス要件があります。これらの規制は日本のものとは異なるため、一律のガバナンス体制を構築するのが困難です。

2) 文化的・組織的な違い
 各国のビジネス文化や組織文化が異なるため、日本では当然の手法がなじみにくい、場合によっては反発を受ける場合さえあります。また、言語の違いもあります。

 筆者が触れた範囲だけでも、日本語ではマニュアルがあっても英語や現地語では存在しないというケースがありました。また、言語としては理解できても、文化的背景により受け止め方が異なり、後々にトラブルになることもあり、文章で明確かつ詳細に取り決める必要もあります。

 いわゆるハイコンテクスト社会とローコンテクスト社会の違いであり、ITガバナンスでも同様です。

画像

(Photo: Unsplash/Mimi Thian)

3)ツールの違い
 日本とは異なるツールが使われていることがあります。日本式のツールをそのまま海外子会社に利用させることも容易ではないことがあります。現地社員から慣れ親しんだツールからの切り替えに反発が生じる可能性があります。

 その結果、現地ツールが未公認で使われてしまい、シャドーIT化となりセキュリティリスクの源泉となってしまう恐れもあります。したがって、ツールが異なることを前提に管理体制を組む必要があります。

4)セキュリティ意識の差
 特に新興国ではプライバシーや情報管理の意識が日本とは異なります。他の従業員の情報を許可なく教えてしまったり、転職先に顧客情報を持ち出してしまうということも珍しくありません。こうした行為に対して、現地法が整っていない、法律はあっても適切な適用がなされていない、といった事情もあります。

 もちろん、セキュリティ教育はしっかりと行っていくべきですが、教育をしたので自覚を持って対応してくれるという性善説に基づく対応はリスクの元です。

5)予算・人的リソースの制約
 予算上の制約が想定されます。営業や生産は一定の投資ができるとしても、IT部門や管理部門向けの予算は劣後することがよくあります。また、国によっては人材が不足している、あるいは日本よりも高い賃金を払わないと雇用できないという事情がある場合もあります。

公認されていないIT利用(シャドーIT)は海外拠点の大きな課題の一つとなりますが、これを可視化・統制する具体的な方法についてはシャドーIT管理はジョーシスのブラウザ拡張で効率化の記事で詳しく解説しています。

3.海外子会社の管理ツール選びの要諦とは

 このように多くの課題があるなかでは、海外でのITガバナンスの確立にあって、何から手を付けていくべきかという戸惑いに直面するでしょう。また、海外ビジネスの歴史がある会社でも、十分な体制と言えないこともあり得ます。万全だと思っていても、気が付いていない、という落とし穴もあります。そもそも、IT環境は日進月歩であり、追いついていくことも一苦労です。

 現地側でもCIO(最高情報責任者)、少なくとも専任のコーポレートIT責任者および担当者を任命するとともに、基本的なセキュリティ対策をとっていく必要があります。

3.1 第一歩は「把握」から

 ITガバナンスの論点は、サイバーセキュリティから予算管理まで様々な論点がありますが、ひとたび被害に遭った時の損害の大きさを考えるとリスク対策は急務です。

 サイバーリスク対策には、把握・防御・検知・対応・復旧という段階があります。そのため、最も基礎的かつ重要な「把握」の段階から入る必要があるでしょう。

ITガバナンス体制を整備する過程では、想定しなかった課題が後から発覚することも少なくありません。失敗事例とその対策については「システム強化の中で発覚したガバナンス課題とその教訓」の実例解説も参考になります。

画像

3.2 専用管理ツールの重要性

 ただ、この「把握」をスプレッドシートなどで管理することには、担当者の負荷が大きく、抜け漏れなどのヒューマンエラーのリスクをはらみます。また、汎用的なアプリケーションでの台帳作りは、シャドーIT検知などセキュリティを考慮した機能が備わっていないという限界もあります。

 そして、海外では人材の流動性が高い傾向にあります。例えば、30代半ばぐらいの中堅従業員でも3〜5社ほど、それ以上を経験していることも珍しくありません。そのため、入退社に伴う管理業務を抜け漏れなく、かつ工数を抑えて効率良く実施できることも重要になります。

 したがって、アナログな手法には頼らず、専用の管理ツールを導入することが有力な選択肢となります。言語の違いも考慮すると、ツールでの統一的管理によってコミュニケーションコストを抑えることも可能でしょう。

 「把握」をした上で、各地で統一して導入できる対策と現地に根ざした対策を吟味してITリスクに対するガバナンスを強化していく必要があります。

3.3 日本と海外で共通して活用できるツール選びのポイント

 ただ、管理ツールと一概に言っても、日本と海外という異なる文化の組織で統一的に活用できることを考慮しなければいけません。ここでは、ツール選びで特に重要なポイントを挙げたいと思います。

1)日本版と海外版で統一したインターフェースを採用していること
 日本発のプロダクトは日本語版のみの対応であったり、英語版はあっても表現がこなれていなかったりという問題がよくあります。一方で、日本語版のないプロダクトは、日本側での利用や管理が難しくなるというデメリットがあります。
 また、英語版はあっても、管理画面や操作の手順といったインターフェースも日本人には使いやすくても、海外では違和感があるという場合もあります。

2)グローバルプロダクトを理解しているエンジニアが開発に参画していること
 海外拠点の従業員が機能やインターフェースに違和感なく利用できることも大切です。そのためには、利用ツールの開発段階からグローバルプロダクトを理解しているエンジニアがCTO(最高技術責任者)やテックリードとして参画していることも重要です。
 開発者が理解していなければ、グローバルな利用に耐えうるインターフェースを構築し、世界的なトレンドにあわせたプロダクトとして進化させ続けることも困難だからです。
 開発体制を公開している企業は多くはありませんが、導入を検討する際には、ベンダー側に確認すべき事項と言えます。

画像

(Photo: Unsplash/Arlington Research)

3)英語での開発・サポート体制ができていること
 海外の従業員が利用する以上は、最低限、英語でのサポート体制が必要です。海外からの問い合わせが日本本社経由で行われると、日本のIT部門担当者は日本語に訳してベンダーに問い合わせをするという手間が発生し、負担が増大します。そうなると、ツールを導入しても効率性が改善されない状況に陥ります。海外拠点のIT担当者が自ら、サポートに問い合わせをできる体制が整っていることが必要です。

4)日本から海外拠点も管理しやすい機能が備わっていること
 海外拠点の管理のためには拠点単位での状況を把握する必要があります。具体的には、日本本社、シンガポールやインドの子会社といった組織単位で状況を把握・管理できるような機能や、一覧性の高いインターフェースが備わっているです。
 また、企業によっては海外拠点はメールアドレスのドメインが異なることがあります。こうした違いもシームレスに管理できるという点も検討事項になるでしょう。

おわりに

 導入前には、本記事で指摘したことなどを踏まえて、日本側と海外側で違和感なく利用できるか、十分に確認、検証して自社に効果的なプロダクトを導入していく必要があるでしょう。

 ジョーシスは、SaaS管理プラットフォーム(SMP:Saas Management Platform)であり、SaaS等クラウドサービスの一元管理やシャドーITの検知のほか、ITデバイスの管理やアウトソースといった統合管理プロダクトを提供しています。ジョーシスはDay1からグローバル市場を標榜してビジネスを展開し、インドにはCTO兼創業者を筆頭に中心に開発チームが存在し、サンフランシスコにはプロダクト担当者を配置しています。詳しくは、下記のPIVOTの動画をご覧ください。プロダクトについて、少しでも気になることがあれば、気軽にお問い合わせください。

https://pivotmedia.co.jp/movie/11827

 記事で取り上げて欲しいテーマやご意見・ご感想等も歓迎です。

お問い合わせ note@josys.com
ジョーシスについて https://jp.josys.com/

執筆者:川端隆史 ジョーシス株式会社シニアエコノミスト

Questions? Answers.

No items found.
No items found.