
今回のジョー シスラーニングでは、Notion Labs Japan合同会社の生垣さんから「Notionを活用した組織全体の情報の一元管理」をテーマに、Notionの活用についてお話をしていただきました。当日の様子を前編・後編の2回に分けてお伝えします。
前編では、Notionの活用方法、Notionで解決できる課題、ユースケースなど「Notionで組織の情報を一元化する方法」を紹介していただきました。
後編では、ラクスル株式会社 取締役CTOの泉も登壇し、「なぜラクスルはNotionを導入したのか」、ジョーシスの活用に関するディスカッションや、視聴者からいただいたQ&Aについて解説します。
<スピーカー>
生垣 侑依|Notion Labs Japan合同会社 Head of Sales, Japan

<モデレーター>
泉 雄介|ラクスル株式会社 取締役CTO

泉
ラクスルがNotionを導入した経緯を時系列で見てみると、このような感じです。

Slackだけではフロー型になりがちで、生垣さんにもお話いただいたように蓄積が足りなくなると感じていました。
7年ほど前にConfluenceを導入し、Wikiを会社に入れ始めました。結構長く使っていたのですが、4〜5年ほど前にエンジニアが「これがなんか最近西海岸で流行っていて良いようだ。」と、Notionを見つけてきました。私も名前は聞いたことがありましたが使ったことがなく、エンジニアと「トライアルで使ってみましょう」と話して、実際に使ってみたらすごく良かったんですよね。
当時、同時編集でサクサク動くサービスはあまりありませんでした。Googleドキュメントはページが閲覧できないことがあり、ページを作った時点ではクローズドの状態ではじまります。Notionは最初からオープンな状態から利用できるので使い勝手が良く、情報の透明性にも一役買っていると思っています。
編集モードの状態がなく、ページに入るとすぐに編集できる面もよく、データタイプの変換がとても画期的でした。箇条書きでまとめたものを少し深掘りすると、議論が始まるような場面でも、いきなりページに変えることができるので、この使いやすさが非常に魅力的でした。
エンジニアのなかで使っていましたが、徐々にデザイナーやプロダクトマネージャーも使い始め、組織の半分ほどがNotionに移行していきました。このままでは、ビジネスメンバーとプロジェクトメンバーの間に垣根が生まれてしまうと思ったことが、全社導入を決めたきっかけです。ツールはやっぱり統合したほうがいいので、2〜3年前にConfluenceのコンテンツを全部載せ換える作業を行いました。
このタイミングはちょうどリモートワークに切り替わったときで、ミーティングをやっても内容が明るみに出ないという課題もありました。ビジネス側もNotionを活発に使うようになり、本当になくてはならないツールになりましたね。
直近ではラクスルが分社化する際に、ハコベルやジョーシスなどの事業ラインが分散するなかで、一定の分掌、遠心力と求心力が必要でした。エンプラの切り替えをやり、マルチワークスペースの対応をし、SAML連携や、監査部も安堵できるようになったところが我々の中で活用できたポイントなのかと思います。
なぜ導入したかをまとめると、Notionの使いやすさ、そして透明性を担保してくれるカルチャーへの寄与が非常に大きかったからです。

泉
ジョーシスの活用事例を簡単にご紹介します。分社した際にジョーシスのスペースを作って使い始めました。ラクスルで使ったときのアンチパターンが見えてきていたのもあり、始めからテンプレートやフォルダ整理のルールを作って運用しました。
次の画面へ移っていただくと、実際にどんな感じかご覧いただけます。

ワークスペースのトップページに来ると、Notionがどういう風に整理されているかのインストラクションが始まり、会社のファームワイドに関連する情報のほか、ガイドラインやルールといった内容もショートカットで整理しています。
ルールを守らないで、なし崩し的にいろいろコンテンツを入れられてしまっては意味がないので、基本的に私が注意するというポリスのような立ち回りをしていますね。
―― ドキュメントの格納について、泉さんからご指摘いただくことは多いですね……。
泉
ポリスマン的な役割を担い、ちゃんと秩序を保つ。その代わりに、自由に設計していい部分もあると思うので、チームである程度守ってやれるように、ガイドラインを作って運用しています。
導入を考えている方や既に導入されている方も参考になるかもしれませんが、新しく導入する際にこうやって整理して使おうと合意して始めると、煩雑にならずに済みます。要は、新しい人が来たらどこで何の情報が得られるかよりスムーズにわかるようになる一つのパターンとしてご参考になればと思っています。
ジョーシスらしく活用しているところは、グローバルのチームが使いやすいよう、ドキュメントにおいての第一言語を英語に、日本語で書く場合は英語も併記することを基本のルールとしていることです。Notionそのものがグローバルプロダクトなので、インドの開発メンバーも非常に使い勝手よく活用させていただいています。

最後にNotionとジョーシスでどうコラボしていけるのかを簡単にご説明させていただきます。
昨今はさまざまなSaaSが増え、リモートワークもあり、コーポレートITが大きな変革を迫られています。そのなかで、社員が入社をしてから在籍中、退職に至るまで複数のSaaSのアカウント発行やID/Pass管理、棚卸し・アカウント削除に時間を割く業務があると思います。
各サービスのアカウント発行に時間がかかったり、不要なアカウントがわからなかったり、退職者のアカウント削除漏れだったりと、便利なSaaSがNotionを筆頭に増えているものの、管理する立場になると大変です。
また、退職者のアカウント管理ではJosysによる従業員の円滑な退職処理の自動化が有効です。退職者のアカウント削除漏れを防ぎ、セキュリティリスクを低減する実践的な方法を解説しています。

ジョーシスは、一元管理することによって業務コストの削減とセキュリティレベルの向上を実現でき、誰が何のSaaS、何のデバイスをどう利用しているかを可視化できます。そのため、部署ごとにSaaSを導入していて、どのくらい使っているか把握できないというような事態を防ぐことが可能です。
SaaS利用拡大に伴うシャドーITリスクの理解と対策については、シャドーITとは?発生原因・リスクと対策、具体事例を解説もあわせてご参照ください。

(22年11月時点で約100個のSaaSと連携)
可視化するだけではなく、約100以上のSaaSと連携ができ(22年11月時点)、連携数もどんどん増えています。アカウント発行や削除のような日常のオペレーションを、ジョーシスでまとめて一括で予約処理もできます。
例えば、今月退職される方の人数が決まったら、その月の末日を待たずに削除の予約を一括で実施し、退職当日に一気に10個のSaaSのアカウントを消去する、といったことも可能です。アカウントの発行も同様です。
また、退職者の削除漏れのIDや削除してよいのかわからないIDを検知し、アラートを出すことができるので、より安全にお使いいただけます。NotionさんなどのSaaSパフォーマンスを安心して最大限に使っていただくためにコラボレーションしています。
ここでは、読者からいただいた質問に対する回答を紹介します。
―― Notionを使っているが、情報が煩雑になってしまっている。構造的に一元管理するノウハウがあれば教えて欲しいとのことです。何か良い方法はありますでしょうか?
生垣
泉さんのように会社のトップの方々が、Notionを使う際に会社の情報の構造をどのようにしていきたいか、または、情報を整理することでどんな組織を作っていきたいかといった点を最初にブレストいただけると良いかと思います。ブレスト内容をもとにドキュメント化をし、それを最初に社員の方が見つけやすいところに置いていただき、ガイドラインを浸透させていくことが必要だと思っています。
それから、泉さんのように状況をチェックしてくださる方がいて、改善ができるようになっているとより良いかもしれません。
泉
そうですね。やはり誰かアサインし、ポリスのような役割をしてくれる方がいるのが良さそうです。これは割に合わないとネガティブな印象があるかもしれませんが、情報が見つからず「その情報どこにあるんですか?」と何度も言われるよりも、整理されているほうが圧倒的に社員の方たちのストレスも減ると思っています。
私自身もたまに見つけたときに「これおかしいんじゃない?」と指摘していますが、他のメンバーもお互いに実施すればよいのかなと。専任を立てるのもよし、みんなでそれを担保していくカルチャーを作るのもよしだと思います。
―― 事前に確認したところ、個人で利用している方が4割ほどいらして、まさにこういった方が悩まれているポイントかと思います。Notion導入していくにあたって、社内稟議を通すコツやアンチパターンはありますか?
生垣
そうですね。プレゼンテーションの中でもお話しさせていただきましたが、例えば、個人のタスク管理などでNotionを使い始めて、「私のチームのタスク管理で使ったらいいかもしれない」や「私のチームの1on1で使ったら良さそう」という形で、組織にあげていただくケースが非常に多いと思います。
ですので、ボトムアップで広がっていく特徴を活かし、「多くの同僚が使ったことがある」や「皆が使いたいと言っている」と社内で使いたい方や使ったことがある方を増やしていただき、上に提案いただくとよさそうです。Notionは、そういった提案ができるプロダクトだと考えています。
会社としても「使わせる」ではなくて、「”みんなが使いたい”と思うものを導入したい」という意識があると思います。ぜひ社内で味方を見つけて、一緒に使おうという方を増やしていきながら、全社で使えませんか?と広げていただくとよいと思います。
―― 先ほどの回答を踏まえると、推進して導入する前から社内で浸透させるような活動があると非常にスムーズに導入できそうだと感じました。このほかに、社内でNotionの活用を浸透させるコツや、成功事例はありますか?
生垣
いくつかやり方がありますが、2つピックアップさせていただきます。一つは、部署でアンバサダーを立てる方法です。
私の前職のSlackでは、社内で使ったことがある人や推進したい人を社内のアンバサダーのような立ち位置としてノミネートして、自分の部署で広めていただきます。これを部署ごとに行うことで、その方々が部署でのNotionの活用を推進していきます。各チームでアンバサダーを立てて、その中でチームにあった活用方法をみんなでワイワイ楽しく作っていただくのがよいかと思います。
もう一つは、Notionを導入する理由を経営陣の方からお伝えいただく方法です。
経営層や組織の中で意思決定をされる立場の方の視点では、全社的に導入する際に、最初になぜNotionを導入したのか、理由や目的を明確にすることが重要だと思っています。
例えば、泉さんのお話にあった「組織の透明性を向上する」や「社員の皆さんが資料探しで無駄になっている時間を削減していきたい」など、なぜNotionを導入するのかを最初に説明いただくことが非常に重要だと思っています。
―― ジョーシスでは「透明性」を非常に重視しています。なぜかと言うと、開発メンバーがインドでプロダクト開発しており、「海外にいるからといって透明性が担保できないと駄目だよね」と、ドキュメントをしっかり残すことがカルチャーとして、泉も代表の松本もかなり強くコミットしています。
その際にストレスがあるとドキュメント化しにくくなるため、スムーズに書き残せ、複数のツールを使わなくても、とりあえず全部Notionに突っ込めるのがいいなと思っています。
振り返ると、ラクスルやジョーシス内でも導入理由や目的についてしっかりメッセージングがあったので、現場のアンバサダー的な人を巻き込むという営みと、トップの方たちが全社にメッセージする両方があると上手くまわりそうですね。
泉:一つ観点を加えると、新しい方が入社した際にファーストビューでどういう印象を受けるかが大事だと思っています。ツリーがぐちゃぐちゃで、どこに何が入っているかわからず、情報の階層も違うとなったら、それだけで嫌になりますよね。
そこで、ファーストビューを見て「こんなに整理されていて安心だな、この会社」と思わせたら、それは一つのビクトリーだと思います。
―― 他社プロダクトとの違いを教えてほしいというご質問をいただいています。ラクスルは元々Confluenceを使っていて、その後Notionに移行しましたが、ユーザー目線で何か違いはありますでしょうか?
泉
Google DocsやConfluenceなど、この手のツールは沢山ありますが、一番の特徴は同時編集をいち早く取り入れ、かつパフォーマンスがすごく高いことです。
例えば、Slackは基本的にはじめからパブリックが前提で、これはプロダクトの最善策だと考えています。Notionも同じで、透明性を担保することがデフォルトの状態であること、はじめからオープンであることを前提にしている点も特徴的だと思います。
またデータベースや、テンプレートなどさまざまな方が使うとルールがばらけていきますが、自由に使えるが一定の規則やガバナンスが適度でプロダクトがデザインされていると思います。ガチガチでもない、かと言って緩すぎもしない、という塩梅がすごくいいですね。
―― SlackとNotionはどのような連携が可能ですか?
生垣
Notion社内でも日々のコミュニケーションや何か議論をするときにはSlackを使い、情報をストックする際はNotionと使い分けをしています。Notionの各ページをSlackの特定のチャンネルと連携させると、Notionのドキュメントに変更があるとSlackで通知を受け取ることができます。
また、Slackで会話していた内容をNotion上にリンクとして貼り付けるのも有効です。意思決定したことをNotionにドキュメントとして記載し、併せてSlackの投稿のリンクを貼ることで、どんなコミュニケーションを経て決定したのかといった過程がわかるため、双方向で連携ができます。
―― Slackってフローで流れることがどの会社さんでもあると思いますが、大事な情報が眠っていることも少なくないので、それをストック型に落としていけるように、ジョーシスでももっと連携を深めていきたいと改めて思います。
―― 導入に際して現場で推進していくNotionアンバサダーを育てるというお話がありますが、導入アンバサダーを育てるのが難しいこともあるかと思います。「別のツールを使っていると移行は誰がやるのか、という議論になり、ここを乗り越える方法について意見が聞きたいです」とご質問いただいています。実際に起きうることかと思うのですが、こちらはいかがですか?
生垣:たしかに社員の方が全く使ったことのないなかで、アンバサダーを募ることはすごく難しいと思います。大学機関でNotionの活用が広がっているお話をしましたが、一ユーザーとして使っていただいく方がとても増えています。
そこで、例えば全社アナウンスのSlackのチャンネルで「Notionをテストしようと思っていますが、誰かアンバサダーをやりたい人はいませんか?」と声を掛けていただくと、ボトムアップで広がっているプロダクトの特徴を踏まえると、手挙げていただける方がいらっしゃるかもしれません。それでもアンバサダーになりたい方がいないときには、Notionを使う目的を3つほど決めて、有志で使っていただくのが良いかもしれません。ガントチャートが簡単に作れたり、ビューの切り替えがスムーズにできたりなど、実際に使ってみることで色んなことに気づいていただけると思います。
そして、最初にご紹介したTwitterなどのコミュニティなどに入っていただき、他の方々の使い方を見ながら、「自分のチームでやってみようか?」と取り入れてみるのがよいかと思います。
少しストレートなご回答ではなかった部分もあったかとは思いますが、ボトムアップで広がっているプロダクトの特徴も踏まえて、この2点で回答させていただきました。
―― ありがとうございます。非常に盛り上がりました。生垣さん大変お忙しい中、ありがとうございました。
今回の「ジョーシス ラーニング」では、Notion Labs Japan合同会社の生垣さんをお招きし、Notionを活用した組織の情報の一元管理についてお話いただきました。
ご紹介した通り、Notionを使うことで社内の情報を蓄積することができます。日々の業務にはもちろん、新しい方が入社した際も安心して取り組めるでしょう。
今回解説した内容を参考に、ぜひNotionの活用を検討してみてください。
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