
左から:渡辺様(イノベーション本部 コ・イノベーション部 部長)/田野様(IT部門統括 DX推進担当 サイバーセキュリティタスクフォース)
人々の空の移動を担う航空事業者にとって、システムの安定とセキュリティは事業の生命線だ。それを足元から支えているのが、社内ITとセキュリティを担う情報システム部門である。Peachでは、約2,000名強の従業員に対し、共用端末まで含めると数千台規模の端末を管理している。日々増え続けるSaaSとアカウント、そして可視化しきれないクラウド利用――そうした「運用の重さ」と向き合いながら、同社のIT部門はどのようにして“攻めのIT”へと舵を切ったのか。ジョーシス導入の背景と効果を、渡辺氏・田野氏に伺った。
――まず、お二人のご担当領域と、IT・情シス組織の役割や規模感を教えてください。
田野氏 私はセキュリティチームに所属していて、社内のセキュリティ対応やセキュリティ製品の運用を担当しています。IT部門全体では20名ほどのスタッフが在籍していて、社内システムの保守やインフラ運用、社内端末の管理、そしてセキュリティまで、会社の根幹を支えるところを幅広く担っています。従業員数でいうと、2,000名強くらいですね。
――端末というのは、空港に設置された機械や、現場のタブレットなども含めて管理されているのでしょうか。
渡辺氏 はい、含みます。バックオフィスの社員は自分のPCとBYODのスマートフォンで1人2台ほど。客室乗務員はiPad、空港のスタッフも1人一台持っています。それに加えて空港カウンターの端末や共用端末まで含めると、かなりの数になりますね。普段あらためて合計を意識することはないのですが、数千台規模にはなると思います。

――航空という社会インフラを担う上で、セキュリティ対策にはどのような責務やプレッシャーがありますか。
田野氏 もし何らかのセキュリティインシデントが発生すると、飛行機を運航する業務に直結する可能性があります。そうならないようリスクを未然に防ぐという観点で、IT環境にも常に高い品質が求められている。どういう対策が必要かを常に考え続けなければならないという責任を感じています。社員のセキュリティ意識も高く、新しいツールを使いたいときは、多くの人が事前に相談を寄せてくれる文化があります。
――一方で、ジョーシス導入前は、SaaS管理などの日常業務にどれくらいの工数がかかっていたのでしょうか。
田野氏 SaaSに関しては「このアプリを使ってもいいですか」というユーザーからの確認や問い合わせに、個別に対応していました。セキュリティ担当は数名なので、日々届く問い合わせにそれぞれのリソースの中で対応しており、稼働状況によってはお待たせしてしまうこともありました。
加えて、SaaSの利用に関する認識を社内で統一する難しさもありました。意識の高い方が事前に相談してくださる一方で、「このSaaSが使えるなら、これも使えるだろう」と判断され、悪気なく利用が広がってしまうこともありました。
――「セキュリティを強化したいが、運用業務に追われて手が回らない」というジレンマは実際にありましたか。
田野氏 ありました。個別に丁寧に対応することはもちろん大事です。ただ、もう少し全体を見て『セキュリティチームとして、こういう対策を全社員向けに打ちたい』という、より高度な施策にはなかなか手が届かない。そこにジレンマがありました。
――渡辺さんの視点ではいかがでしたか。
渡辺氏 私はアカウント管理、アプリケーション周りを担当しているのですが、社内でアプリがどんどん増えていくんです。本来やりたいのは、ユーザーがやりたいことをどうすれば安全に、効率よく実現できるかを一緒に考えて提案していくこと。そこにもっと時間を使いたい。
退職した人のアカウントがいつまでも残るようなことは絶対にあってはならないので、出入りの管理は確実にやらなければならない。だからこそルーティン業務は極力簡素化したかった。アカウントのメンテナンスは、一つをきちんとやれば他もまとめてできる――そんな仕組みに集約していきたかったんです。
――数ある選択肢の中で、ジョーシスを選んだ決め手を教えてください。
渡辺氏 弊社は必ず複数社を比較検討した上で選定します。ERPと強力に連携できる製品も世の中にはありますが、航空業界は基幹系が特殊なので、汎用的なERPとは合わない側面があるんです。
一方で、Peachでは数多くのSaaSアプリを利用しています。だからSaaSとの親和性が高いこと、運用の一部を社外に業務を委託すること、そしてクラウドの利用状況がわかりやすく可視化されることが大きな軸でした。デバイス管理もアカウント管理も全部が一体化していて、いい意味で“オールインクルーシブ”にお願いできる。そこが大きかったですね。
――PCのキッティングなども含めて乗せられる、というタイミングでもあったのでしょうか。
渡辺氏 最初はID管理とクラウド利用の可視化を見ていたのですが、検討するうちに『これはデバイス管理も乗せられるんじゃないか』と分かって。プラスアルファでとても助かりました。コストとトータルバランスの両面で、一番フィットしたのがジョーシスでした。
――導入後、いわゆるノンコア業務(発行・削除などの単純作業)の削減効果はいかがですか。

渡辺氏 月末に集中していた作業数は減っています。以前は担当者の稼働状況によって対応タイミングがまちまちでしたが、今は比較的すんなり回るようになりました。
特に負荷が大きかったのが、100名単位の受け入れが発生する4月の入社対応です。この入社処理を我々の手から離せたのは、本当に助かりました。今後、この領域に本格的に取り組むことで、さらに大きな効果が得られると考えています。
――浮いた工数は、より付加価値の高い業務に充てられている状態でしょうか。
渡辺氏 そうですね。新しい施策の検討や、管理を強化したいところのテスト・検証に時間を割けるようになっています。単純な発行・削除作業ではなく、企画や検証といった難易度が高く面白い業務にメンバーのリソースを割けるようになった。これはモチベーションにも直結しますし、全社員の効率化につながる、目に見えて良くなる施策に時間を使えるのは、組織としても良いことだと思っています。
――クラウド利用状況の可視化やガバナンスという面で、導入後はどう変わりましたか。
田野氏 年末にジョーシスのブラウザ拡張機能を社員向けに配布して、社内で使われているクラウドアプリの状況が面として把握できるようになりました。日々見ていると、想定していなかった利用方法が見えてくることもあります。『おそらくこのSaaSは需要が高いんだな』と。対策すべきもの、守るべきもの、しばらく様子を見るもの、というようにグラデーションをかけた管理ができるようになってきました。
――「検知したアプリの利用実態が、ポリシーに沿っているかを分析できる仕組み」が備わったことの意義を、どう感じていますか。
田野氏 これまでは『制限する』『使ってはいけない』と禁止する対策に注力していました。でも今は、ユーザーが判断に迷わず安全にSaaSを使えるよう“ガードレール”を設ける。『この理由でこれはダメ、だからこちらを使おう』と、先回りして適切に案内できるようになってきています。
実際の需要というファクトを把握できることで、社内コミュニケーションや次の提案がやりやすくなりました。AIアプリの利用も急増していて、可視化の重要性は一段と増していますね。
――今後、ジョーシスをどう活用していきたいですか。
田野氏 直近では、ジョーシスの従業員ポータルやワークフロー機能を活用して、『使っていい』というSaaSをカタログ化して社員に開示したいと思っています。利用申請もそこから簡単にできるようになれば、こちらも社員も楽になる世界観ができるはずです。
渡辺氏 カタログのところは、もう少し上手く回せると嬉しいですね。アカウントの払い出しはコストに直結するので、ワークフローで気軽に『欲しい』『どうぞ』と流すのではなく、上長や会社の承認を経たうえで、『このアプリには月額いくらかかるのか』を申請者自身に認識してもらいたい。
アプリの登録からアカウントの払い出しまでを一連の流れでつなげば、より無駄なく使っていける。全社員規模で利用される大規模なアプリにも横展開して、全社的なガバナンスをさらに強めていきたいと思っています。『欲しい、欲しい』と無尽蔵に作れるものではないので、作るならきちんと使ってほしい。一つひとつにコストがかかっていることを認識したうえで使っていただきたいんです。
――最後に、同じように悩むIT・セキュリティ担当者へ、メッセージをお願いします。
田野氏 よくなる可能性があるのなら、まずは一歩進むこと、だと思っています。導入には予算や反対意見など、いろいろな障壁があります。でも、それを乗り越えた先に今より良い環境ができるなら、挑戦する価値がある。そして、それを応援し認めてくれる“味方づくり”が一番大事だと思っています。1人ではできませんから。
渡辺氏 最初から100%を目指すのではなく、70%でも始めて、トライアル・アンド・エラーで深めていけばいい。ジョーシスは単なるツールの提供だけでなく、運用そのものをサポートしてくれる強みがあります。『連携していないから止まる』のではなく、一緒に相談しながら一歩ずつ作り上げていける会社さんだと、やりながら実感しました。こちらが「こんな機能が欲しい」と無茶な要望を伝えても、それが別の形で実現されて返ってくる。そんな期待を持ちながら伴走していただけるのは、とても心強いです。