
情報システム部門(情シス)が担うIT運用の範囲は、年々広がっています。クラウドサービスの普及、テレワークの定着、サイバー脅威の多様化といった環境変化が重なり、限られた人員で多岐にわたる業務をこなさなければならない状況が続いています。日常のヘルプデスク対応やインフラ保守に追われながら、セキュリティ強化やDX推進まで求められる情シス担当者にとって、業務の優先順位をつけること自体が大きな課題になっています。
本記事では、IT運用において情シスが直面しやすい7つの課題を具体的に整理し、それぞれの解決に向けた実践的なアプローチを紹介します。日々の業務改善のヒントとして、ぜひご活用ください。
情シスのIT運用業務を一言で表すとすれば、「社内の情報システム・IT環境が安定して機能し続けるよう維持・管理すること」です。具体的には、サーバーやネットワークなどのインフラ管理、社員が使うPCやスマートフォンなどのデバイス管理、業務で利用するSaaSやソフトウェアのライセンス管理、社員からの問い合わせに対応するヘルプデスク業務、そしてサイバー攻撃や情報漏えいを防ぐセキュリティ対策まで、その守備範囲は幅広いものです。
さらに近年は、クラウドサービスの全社展開や業務プロセスのデジタル化を推進する役割も情シスに期待されるようになっています。IT運用の対象範囲が拡大し続ける中で、担当者の負荷は増加する一方です。この構造的な課題を理解したうえで、個別の問題に取り組むことが重要です。
情シス部門においてもっとも深刻な課題のひとつが、人材不足です。バッファロー社が2024年に実施した調査では、中小企業の44.1%が「IT部門の担当者が業務量に対して不足している」と回答しており、スキルの高い人材が足りないという声が最多(51.0%)となっています。
情シス担当者が少ない組織では、1人の担当者が社内システムの保守・運用・ヘルプデスク・セキュリティ対応・ベンダー管理など、本来複数名で分担すべき業務をひとりで抱えるケースが珍しくありません。いわゆる「一人情シス」や「兼務情シス」と呼ばれる状況です。
人材不足の状態が続くと、担当者個人への業務集中が起き、日常の運用・保守だけで稼働が埋まってしまいます。その結果、システムの改善提案や中長期的なIT戦略の立案といった「攻めの業務」に手が回らなくなります。担当者が休職・退職した際の引き継ぎも困難になり、業務継続リスクにもつながります。
また、慢性的な人材不足は組織内での情シスの存在感を薄めます。社内から「何を担当しているのかわからない」と見られやすく、予算や人員増強を経営層に訴えても承認が得にくいという悪循環が生まれがちです。ITの専門スキルを持った人材は採用市場での競争が激しく、採用難易度も年々上がっています。人材確保の難しさは情シス部門だけが直面する問題ではなく、IT業界全体の構造的課題でもあります。
まず取り組むべきは、業務の「見える化」です。情シスが担う業務量・工数・対応件数を定量的に把握し、経営層に現状を可視化して示すことが増員・予算獲得の第一歩となります。どんな業務に何時間かかっているかを記録し、ヘルプデスク対応件数や月次の障害対応時間などを具体的な数字で示すと説得力が増します。
並行して、繰り返し発生する定型作業(アカウント発行・棚卸し・パスワードリセット対応など)の自動化や、専門性が必要なノンコア業務のアウトソーシングを検討することで、限られた人員でもコア業務に集中できる環境を整えることができます。IT管理ツールを活用して業務の自動化を進めることが、人材不足の影響を最小化する現実的な打ち手です。
IT運用における属人化は、情シス部門で頻繁に指摘される課題です。特定の担当者だけがシステムの設定内容や運用手順を把握しており、その人が不在になると業務が止まってしまう状態は、組織としての脆弱性に直結します。
属人化が生まれる背景には、業務マニュアルの未整備、引き継ぎ文化の欠如、「その人に聞けばわかる」という暗黙の前提があります。特に長年担当してきたベテランエンジニアが退職するタイミングで、知識やノウハウが組織から失われるという問題が顕在化します。情シスの「全国情シス実態調査 2024」でも、属人化への課題意識は人材不足と並んで上位に挙がっています。
中小規模の情シス組織では、特定の業務担当が固定されやすく、ローテーションや代替要員の育成が行われにくい傾向があります。加えて、IT環境が複雑化するにつれて、個々のシステムに対する深い知識を持つ人材の重要性が高まり、「その人でないと対応できない」領域が広がりがちです。
問題は、属人化の当事者自身がリスクを認識しにくい点にあります。業務を一手に担っている担当者は繁忙状態にあることが多く、ドキュメント整備や後進育成に時間を割く余裕がないという現実があります。属人化した状態が長く続くほど、解消するためのコストと時間も増大します。
属人化を解消するための基本的な取り組みは、運用手順の文書化と標準化です。「誰が見ても同じ手順で作業できる」状態を目指して、手順書・チェックリスト・対応フローを整備します。ドキュメントは一度作って終わりではなく、定期的な更新サイクルを設けることが重要です。
さらに、IT管理ツールを活用して設定情報や資産情報を一元管理することで、情報の属人化を防ぎ、担当者が変わっても業務継続できる体制を構築できます。システム上に情報が集約されていれば、担当者が不在でも別の担当者が状況を把握して対応できます。ツール活用と文書化の組み合わせが、属人化解消の実践的な方法です。
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企業でのSaaSサービス利用は急速に拡大しています。業務効率化を目的に各部門が個別にSaaSを導入した結果、情シスが把握しきれない数のサービスが社内に存在するケースが増えています。いわゆる「シャドーIT」と呼ばれる、情シスの許可なく利用されているSaaSの問題です。
利用中のSaaSが把握できていない状態では、不要なライセンスへのコスト浪費が発生します。加えて、退職した従業員のアカウントが放置されるなど、セキュリティリスクにもつながります。IDC Japanの調査によれば、ITインフラ運用の課題として「ITインフラや運用管理のコスト上昇」が上位に挙がっており、SaaSの管理コスト増大はその主要因のひとつです。
従来のオンプレミスシステムと異なり、SaaSはクレジットカードひとつで契約できる手軽さから、現場部門が独自に導入するケースが多発します。情シスが関与しないまま利用が始まると、契約状況の全容把握が困難になります。また、複数のSaaSにまたがるアカウント管理を手作業でExcelなどに記録している組織では、更新漏れや抜け漏れのリスクが常につきまといます。
SaaSごとに異なる管理画面・契約サイクル・更新タイミングを複数のスタッフが個別に管理している状態では、「いつ何の契約が終わるのか」「誰がどのサービスを使っているのか」を把握することに多大な工数がかかります。情シスが把握していないSaaSが存在するほど、コンプライアンスリスクも高まります。
まずは現時点で利用しているSaaSを棚卸しし、サービス名・ライセンス数・コスト・管理者情報を一覧化することから始めます。各部門への調査や請求情報の精査を通じて実態を把握することが優先です。次のステップとして、SaaS管理ツールを導入し、契約・利用状況・アカウントをシステム上で一元管理する体制を構築することが有効です。ツールを活用することで、ライセンスの過不足を自動的に検出したり、従業員の入退社に連動したアカウントの自動発行・停止を実現したりすることができます。
情シスが強化すべき最重要領域のひとつがセキュリティです。IIJが実施した「全国情シス実態調査 2024」では、今後強化すべき取り組みの第1位として「セキュリティ強化」が挙げられており、全体の約4割が過去5年以内にセキュリティインシデントを経験または危機に直面したと回答しています。
サイバー攻撃の手口はフィッシングメール、ランサムウェア、不正アクセスなど多岐にわたります。特に、退職者のアカウントが有効なまま放置されている状態や、権限管理が不十分なことによる内部からの情報漏えいリスクは、情シス担当者が見落としがちなセキュリティホールです。リモートワーク環境の普及によって、社外から社内システムにアクセスするケースが増えたことも、攻撃の入り口を広げる要因になっています。
セキュリティ対策は一度実施すれば終わりではなく、継続的なモニタリングと対応が必要です。しかし、日常の運用業務に追われる情シスにとって、セキュリティログの定期確認や脆弱性スキャンの実施を定常業務として組み込むことは容易ではありません。また、全社のシステムやSaaSに対して一貫したアクセス権限管理ポリシーを適用するためには、管理対象の全体像を把握していることが前提となります。
管理対象が可視化されていない状態では、どこにリスクがあるかを把握することすら困難です。「何が存在するか」を正確に把握することが、セキュリティ対策の出発点となります。
セキュリティ強化の基本は、「誰が何にアクセスできるか」を正確に把握・制御することです。IDaaSやゼロトラスト型のアクセス管理を導入することで、シングルサインオン(SSO)と権限管理を一元化できます。また、従業員の入退社や異動に合わせてアカウント権限を自動的に更新する仕組みを整えることで、アカウントの放置や権限の過剰付与といった問題を防ぐことができます。
定期的なアクセス権限の棚卸しをワークフロー化することも重要です。「誰がどのシステムにアクセスできるか」のリストを定期的に確認し、不要な権限を削除するプロセスを組織のルールとして定めることで、セキュリティホールの発生を抑制できます。
社内で利用するPCやスマートフォンなどのデバイス、ソフトウェアライセンス、SaaSアカウントといったIT資産を正確に管理することは、情シスの重要な役割のひとつです。しかし実際の現場では、台帳がExcelで管理されていて最新状態に保たれていない、誰がどのデバイスを使っているかわからない、といった課題を抱えている組織が少なくありません。
IT資産管理が不十分だと、不要なライセンスへの費用が発生し続けたり、監査時に資産の全容を示せなかったりするリスクが生じます。従業員の入退社や異動のタイミングでデバイスやアカウントの状態を適切に更新できないことも、セキュリティ上の問題につながります。
IT資産管理台帳の作成・更新は、本来継続的に行わなければ意味をなしません。しかし、更新担当者が明確でなかったり、手動入力に頼っている場合は入力ミスや抜け漏れが発生しやすく、時間の経過とともに台帳の信頼性が低下していきます。特にリモートワークが普及した環境では、デバイスの所在確認や状態管理がさらに難しくなっています。
また、PCのキッティング(初期設定)から廃棄までのライフサイクル全体を追跡するためには、各フェーズで情報を記録し続ける仕組みが必要です。担当者が変わるたびに台帳の精度が下がるという問題は、多くの情シス現場で共通して起きています。
IT資産管理ツールを活用して、デバイス・ライセンス・アカウントの情報を自動的に収集・更新する仕組みを整えることが根本的な解決策となります。MDM(モバイルデバイス管理)との連携でデバイスの状態をリアルタイムに把握し、SaaS管理機能によってライセンスの利用状況を可視化することで、手作業の台帳管理から脱却できます。入退社・異動のワークフローにIT資産管理を組み込むことで、対応漏れも防ぐことができます。
資産情報がシステム上で自動的に更新される状態になれば、担当者が手動で台帳を修正する工数がなくなり、常に正確なデータを参照できるようになります。これは監査対応やコスト管理にも直接効いてくる改善です。
社内ユーザーからのシステムトラブルやパスワードリセットの問い合わせなど、日常的なヘルプデスク業務は情シスの稼働を大きく消費します。特に対応件数が多い時期には、担当者が本来注力すべき改善業務や戦略的な取り組みに時間を割けなくなる状況が生まれます。
一次対応の多くは、パスワードリセット・アカウント発行・VPN設定・よくある操作方法の案内など、内容が定型化しているケースが大半です。それにもかかわらず、すべての問い合わせを情シス担当者が個別に対応している組織では、担当者の工数が問い合わせ対応だけで埋まってしまう問題が生じます。
ヘルプデスク対応に追われる状態が続くと、情シス担当者の本来業務である運用改善やシステム導入の企画立案が後回しになります。問題への対処が後手に回るため、根本的な解決がなされないまま同様のトラブルが繰り返されるという悪循環も起きやすくなります。また、担当者の負担増加はモチベーション低下にもつながり、人材の定着率低下を引き起こすリスクがあります。
ヘルプデスク対応の問題は「量が多い」だけでなく、「いつでも対応を求められる」ことへの精神的な負荷にも起因します。業務時間外の緊急対応や、会議中の割り込み対応が常態化している組織では、担当者の疲弊が顕著になります。
ヘルプデスク業務の効率化には、チャットボットやFAQポータルの整備が有効です。よくある問い合わせとその回答を整理してユーザー自身が解決できる仕組みを作ることで、一次対応件数を大幅に削減できます。また、パスワードリセットをユーザーが自分でできるセルフサービス機能の導入も効果的です。チケット管理システムを活用して対応状況を可視化することで、対応漏れを防ぎ、業務全体の効率化につなげることができます。
また、アカウント発行や権限付与などの申請ワークフローを整備することで、情シス担当者への問い合わせ前に自己解決できるケースを増やすことができます。「情シスに聞かなくても完結する」体制をつくることが、長期的なヘルプデスク負荷削減につながります。
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従来、情シスの役割は「システムを安定して動かし続ける」守りの業務が中心でした。しかし近年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進においてIT部門が果たすべき役割への期待が高まっており、情シスにも「攻め」の視点が求められるようになっています。
既存システムの維持・保守に追われているだけでは、DX推進を牽引する役割を担うことは難しいといえます。ワークフロー総研の調査によれば、IT部門は「守りの領域」への対応が必須なため、「攻めの領域」にリソースを割けていないという構造的な課題が指摘されています。
守りの業務(障害対応・保守・ヘルプデスク・ベンダー管理)は緊急度が高く、放置できないため、日常的に稼働の多くを消費します。一方、DX推進や業務プロセス改革のような攻めの施策は重要度が高くても緊急度は低いため、後回しになりやすい傾向があります。
さらに、情シスが経営層から「コストセンター」として見られている組織では、新たな取り組みへの投資が承認されにくいという問題もあります。情シスが経営に貢献できる部門であることを示すためには、守りの業務の効率化を通じて「余力」を生み出し、その余力を使って価値創出に取り組む循環を作ることが重要です。
まず、守りの業務のうち自動化できるものをツールに任せ、情シス担当者の稼働を戦略的な業務に向ける構造改革が必要です。IT管理プラットフォームを活用して定型業務を自動化することで、情シスが経営戦略と連動したIT施策を提案・実行する「攻め」の役割を果たせるようになります。情シスが経営に貢献する存在として認識されることで、予算・人員確保においても経営層の理解を得やすくなります。
情シスが攻めの役割を担うためには、「IT投資がどれだけ業務効率や売上に貢献しているか」を定量的に示すことも重要です。IT部門のKPIを設定し、成果を可視化することで、経営層との対話の質を高めることができます。
ここまで7つの課題を紹介してきましたが、すべてを一度に解決しようとすると取り組みが分散し、どれも中途半端になりがちです。課題解決を進めるうえでは、現状の業務に与えるインパクトと対応の緊急度を基準に優先順位をつけることが重要です。
以下に、取り組みの優先順位の考え方を整理します。
まず着手しやすいのは、「現状の可視化」です。どんな課題も、実態を正確に把握することが解決の第一歩となります。利用中のSaaS・デバイス・アカウントを一覧化するだけでも、コスト削減やセキュリティ改善のヒントが見つかります。
課題ごとに「解決した場合の効果」と「取り組みに必要な工数・コスト」を見積もり、ROI(投資対効果)の高い施策から順に着手することで、限られたリソースを最大限に活用できます。小さな改善の積み重ねが、情シス部門全体の底上げにつながります。
Josysは、情シス担当者が日々直面するIT運用の課題を解消するために設計されたSaaS・IT資産管理プラットフォームです。デバイス・SaaS・アカウントを一つの管理画面で統合管理できるため、複数のツールを使い分ける手間がなくなります。
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IT運用において情シスが抱える課題は、人材不足・属人化・SaaS管理・セキュリティ・IT資産管理・ヘルプデスク負荷・DX推進への転換と多岐にわたります。これらの課題は相互に絡み合っており、一部の課題を解決することで連鎖的に他の課題も改善されるケースも多くあります。
課題解決の第一歩は「現状の可視化」です。担当業務・管理対象・工数を整理し、優先順位をつけて取り組むことで、限られたリソースでも着実に改善を進めることができます。IT管理プラットフォームの活用によって定型業務の自動化・一元管理を実現し、情シスが「守り」だけでなく「攻め」の役割も担える体制を目指してください。
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