
複数のSaaSを導入した結果、システム間でデータが分断され、手作業の転記や確認作業が増えてしまう。この状況を「データサイロ」と呼び、SaaS導入の恩恵を損なう根本的な問題です。情報システム部門の担当者であれば、一度は経験したことがある課題ではないでしょうか。
SaaS統合・連携とは、異なるSaaSどうしをAPIや連携プラットフォームでつなぎ、データの自動受け渡しやワークフローの自動化を実現する取り組みです。人事システムに新入社員を登録した瞬間、Slack・Microsoft 365・Google Workspaceのアカウントが自動発行される。こうした仕組みを実現するのがSaaS連携の本質です。
手作業の削減だけが目的ではありません。退職者アカウントの放置によるセキュリティリスクを防ぎ、ライセンスコストを可視化し、監査対応を効率化する。これらを同時に達成できることが、SaaS連携を情シスの重要業務に押し上げている理由です。SaaSの数が増えるほど連携による効果は大きく、従業員50名規模でも平均20〜30種類のSaaSを利用している現在、連携設計は情シスの基本スキルになりつつあります。
SaaS連携への取り組みが求められる背景には、企業のITインフラが急速に変化していることがあります。オンプレミス中心だった時代と異なり、今はクラウドサービスが業務の基盤を担っています。
営業部門はSFA、マーケティング部門はMAツール、経理部門は会計SaaS、人事部門はHRMS。各部門が独自にSaaSを選定・契約するケースが増え、データは各SaaS内に閉じてしまいます。営業担当が受注した案件情報を、会計担当が手作業で会計システムに転記する。こうした非効率が日常化しているのはデータサイロの典型的な症状です。
部門最適化を積み重ねた結果として生まれる全社的な非効率。この構造的な問題を解消するには、個別の業務改善ではなくシステム間の連携設計が必要です。
従業員の入社時にはSaaSのアカウント発行、退社時には削除、異動時には権限変更という作業が発生します。SaaSが10種類あれば10回の操作が必要で、30種類なら30回です。これを手作業でこなしている情シスは少なくなく、漏れや遅延がセキュリティインシデントの直接原因になっています。退職済み従業員のアカウントが残存していたことによる情報漏洩は、大手企業でも報告されている実際の問題です。
現場部門が情シスの承認なく導入したSaaSは、セキュリティ審査もなく、ライセンス費用も把握されていません。連携設計どころか、存在自体が不明なSaaSが社内に散在している状態は、ガバナンス上の大きなリスクです。SaaSを正しく連携・統合するには、まず社内で使われているSaaSを全量把握することが前提になります。
SaaSを連携させる方法はいくつかあり、連携の目的や技術的な制約によって使い分けます。ここでは情シス担当者が知っておくべき主要な連携手法を整理します。
API(Application Programming Interface)は、ソフトウェア同士がデータをやりとりするための接続口です。多くのSaaSはREST APIを公開しており、HTTPリクエストを通じてデータの取得・作成・更新・削除ができます。Salesforceの商談データをAPI経由で取得してkintoneの案件管理に反映する、といった使い方が代表例です。
リアルタイムに近いデータ同期と細かいカスタマイズ性がAPIの強みです。一方、実装には開発者のスキルが必要で、連携先のAPI仕様変更に追従するメンテナンスコストも発生します。情シスが単独で実装するより、後述するiPaaSと組み合わせて活用するケースが多くなっています。
参考記事:SaaS API連携とは?仕組みやメリット・成功事例を分かりやすく解説
iPaaSは、複数のSaaSやシステムをノーコード・ローコードで接続するための統合プラットフォームです。Zapier・Make(旧Integromat)・Workato・BizteX Connectなどが代表製品で、ビジュアルエディタでフローを組み立てる操作感でSaaS間の連携が実現できます。プログラミング知識がなくても動かせる点が、情シスにとって最大のメリットです。
「フォームに回答が送信されたら、Slackに通知してGoogleスプレッドシートに記録する」という自動化をドラッグ&ドロップで構築できます。シンプルな自動化ならZapier・Make、エンタープライズ向けの高度な連携ならWorkatoやMulesoft、国内SaaS重視ならBizteX Connectというように、企業規模や連携の複雑さで選択肢が変わります。
参考記事:iPaaSとは?API連携でSaaS間の業務を自動化する実践ガイド
SCIMは、ユーザーIDのプロビジョニング(アカウントの自動作成・更新・削除)を標準化するプロトコルです。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やOktaなどのIdP(IDプロバイダ)と各SaaSを接続することで、IdP側でユーザーを管理すれば連携済みSaaSに自動でアカウントが作成・無効化されます。
入社時はIdPにユーザーを追加するだけで全SaaSのアカウントが揃い、退社時はIdPのアカウントを無効化するだけで全SaaSのアクセスが遮断される。SCIM対応のSaaSが着実に増えている今、アカウントライフサイクル管理の自動化においてSCIMは最も信頼性の高い手段です。
参考記事:SCIMとは?IDプロビジョニングの仕組みやSAMLとの違い
SSOは、一度のログイン操作で複数のSaaSにアクセスできる仕組みです。SAML(Security Assertion Markup Language)はSSOを実現する標準プロトコルで、Google WorkspaceやMicrosoft Entra IDをIdPとして各SaaSに認証を委任する構成が一般的です。
SCIMがアカウントの「作成・削除」を自動化し、SSOは「認証・ログイン」の一元化を担います。この2つを組み合わせることで、ユーザーはパスワードを複数管理する必要がなくなり、情シスはアクセス状況を一元で把握できます。
Webhookは、SaaS側で特定のイベントが発生したとき、指定したURLへ自動でデータを送信する仕組みです。「Slackで特定のキーワードが投稿されたら通知する」「GitHubにプッシュされたらCI/CDパイプラインを起動する」といったイベント駆動の連携に向いています。定期的なAPIポーリングと異なり、イベント発生時にのみ通信するためリアルタイム性が高く、サーバー負荷も低い点がメリットです。
iPaaSは情シスがSaaS連携を推進するうえで最も取り組みやすい手段の一つです。実際の導入ステップを具体的に解説します。
まず社内で使われているSaaSをすべてリストアップし、どの業務でどのSaaSが使われているかを整理します。その中から「手作業で転記している」「データが分断されて確認に時間がかかる」業務フローを特定します。最も頻度が高く手作業の工数も多い2システム間の連携から着手するのがセオリーです。
連携対象のSaaSがiPaaSの対応コネクターに含まれているかを確認します。Zapierは5,000種類以上のSaaSに対応しており、Make・Workatoはより複雑な条件分岐や大量データ処理に向いています。国内SaaS(kintone・freee・Chatwork等)との連携が多い場合はBizteX ConnectやYoomも選択肢に入ります。無料トライアルで対象フローの動作を事前検証することが重要です。
iPaaSのビジュアルエディタで「トリガー(起点となるイベント)」と「アクション(実行する処理)」を設定します。「Salesforceの商談ステータスが受注に変わった(トリガー)→ 会計SaaSに売上伝票を自動登録する(アクション)」という構成です。条件分岐(金額が100万円以上なら承認フローを挿入する等)を加えることで、業務実態に即した自動化が実現できます。
本番環境に適用する前に、テストデータでフロー全体を動作確認します。データのマッピング(どのフィールドをどこに渡すか)のズレや、エラー時の処理を確認することが重要です。SaaS間でフィールド名や日付フォーマットが異なることが多いため、入念に確認してください。
本番運用を開始したあとは、iPaaSの実行ログを定期確認します。接続エラーやデータ変換の失敗があれば早期に検知して対処します。最初の連携が安定したら次の業務フローへと対象を広げていくことで、段階的に社内の自動化カバレッジを高められます。
SaaSの連携・統合を一元管理したいとお考えであれば、Josysの資料をご覧ください。ITデバイスとSaaSを統合管理し、アカウントライフサイクルの自動化を実現するJosysの機能概要を5分で把握できます。
SaaS連携は導入効果が大きい一方で、設計や運用を誤ると新たな問題を生み出します。よくある失敗パターンを把握し、事前に対策を講じることが重要です。
連携設定の際、APIトークンを必要以上の権限で発行してしまうケースがあります。「管理者権限のトークンを使えば確実に動く」という理由で過剰な権限を与えると、そのトークンが漏洩した場合の被害範囲が大幅に広がります。最小権限の原則に従い、連携に必要なスコープのみを付与することが基本です。
大手企業の情シスが直面したSaaS関連リスクの調査では、クラウドサービスのアクセス権限設定ミスによる情報漏洩が上位に挙がっています。
参考記事:大手企業の情シスが遭遇した、SaaS利用関連のリスクTOP10
SaaSはクラウドサービスであるため、プロバイダ側がAPIの仕様を変更することがあります。バージョンアップでフィールド名が変わったり認証方式が変更されたりすると、既存の連携が突然動かなくなるリスクがあります。iPaaSを利用している場合は製品側がアップデートを吸収してくれることも多いですが、カスタム開発した場合は自力での追従が必要です。
連携フローの不備によって、退職者のアカウントが一部のSaaSに残り続けるケースが発生しています。SCIMやiPaaSで自動化している場合でも、対応していないSaaSはリストから漏れてしまいます。退職時の「アカウント削除チェックリスト」をSaaSごとに整備し、自動化の対象外となっているSaaSを定期監査で確認する体制が必要です。
情シスの関与なく、現場担当者がZapierやMakeを使って独自の連携フローを構築するケースがあります。利便性は高まりますが、セキュリティレビューなしに社外サービスとのデータ連携が行われるリスクがあります。iPaaSの利用ルールを策定し、情シスが承認・管理するガバナンス体制を整えることが重要です。
SCIMを中心としたアカウント管理の自動化は、情シスの負担を最も大きく軽減できる施策の一つです。実装の流れを整理します。
まずMicrosoft Entra ID、Okta、Google WorkspaceなどのIdPを中心に据え、各SaaSのSCIMエンドポイントと接続します。SCIM対応SaaSであれば、IdPの管理画面からSCIM設定を開きアクセストークンを発行して連携するだけで完了するものも多くあります。
Slack・Zoom・Salesforce・Google Workspace・Microsoft 365などの主要SaaSはすでにSCIMに対応しており、IdPとの接続実績も豊富にあります。
SCIMでは、IdP側のユーザー属性(氏名・メールアドレス・部署・役職等)を各SaaSのフィールドにマッピングします。「部署コードが営業部の場合はSalesforceのライセンスを付与する」「雇用区分が正社員の場合のみMicrosoft 365のE3ライセンスを割り当てる」といった条件ロジックを設計することで、役職・部署に応じた適切なアクセス権限が自動で付与されます。
SCIM設定完了後は、HR部門・労務部門との連携プロセスを整備します。「HR部門がIdPへ新規ユーザーを登録する」→「SCIMが各SaaSにアカウントを自動作成する」→「初日からSSOでアクセスできる」という入社フローが完成します。退社時は「IdPのアカウントを無効化する」→「連携SaaSのアカウントが自動で無効化・削除される」という流れで、アカウント削除漏れのリスクを大幅に低減できます。
API連携・iPaaS・SCIMをそれぞれ個別に運用すると、管理の複雑さが増すことがあります。これらを一元管理できるSaaS統合管理ツールを活用することで、情シスの管理負荷をさらに下げることができます。
SaaS統合管理ツールは、社内で利用されている全SaaSの可視化から、アカウントのライフサイクル管理、ライセンスコストの最適化まで、SaaS管理業務を一元化するプラットフォームです。個別の連携設定を積み上げるのではなく、プラットフォーム全体で統一した管理ができる点が特徴です。
シャドーIT(未把握SaaS)の自動検知、未使用ライセンスの特定とコスト削減、退職者アカウントの自動検知・削除、入社時の一括アカウント発行。こうした課題をひとつのツールで対処できます。
JosysはITデバイスとSaaSをまとめて管理できる統合管理クラウドです。SCIM・APIを通じて主要SaaSと接続し、アカウントのプロビジョニング・デプロビジョニングを自動化できます。人事システムとの連携によって入退社時のアカウント操作が自動化され、情シスが個別対応する必要がなくなります。
Josys APIを公開しており、既存の社内システムや他ツールとのカスタム連携にも対応しています。ノーコードで設定できるSaaS連携画面から、対応SaaSを選択してアクセストークンを設定するだけで接続が完了するため、開発工数を抑えながら連携範囲を広げることができます。
関連記事:Josys APIを利用する
JosysがどのようにSaaSを統合管理し、アカウント自動化を実現するか、実際の画面でご確認いただけます。情シス担当者向けのデモを無料でご提供していますので、お気軽にお申し込みください。
すべての業務フローを一度に連携させようとすると、工数が膨大になりどこから手をつければよいかわからなくなります。情シスが連携の優先度を判断するための基準を整理します。
「週に何回発生するか」「1回あたり何分かかっているか」を掛け合わせた工数が最も多い業務から着手します。週5回・毎回30分かかる手作業は月40時間超のコストになっています。これを自動化するだけで情シス一人分の工数削減に相当する場合があります。
退職者のアカウント削除漏れ、権限付与の遅延、未把握のシャドーITなど、セキュリティインシデントに直結する業務は、工数よりも優先度を上げて自動化を検討します。不正アクセスによる情報漏洩は対処コストが莫大になるため、投資対効果の観点からも自動化の価値は非常に高くなります。
営業と会計のデータ連携不備で月次締めが遅れる、人事データとITシステムが同期されていないために採用が遅延する。事業の速度に直接影響する業務は優先度が高くなります。業務オーナーや経営陣と合意のうえで優先順位を決めることで、情シスが連携推進の旗振り役として機能しやすくなります。
連携したいSaaSがAPI・SCIMを公開しているか、iPaaSのコネクターが存在するかを事前確認します。技術的に実現可能かどうかを見極めてから優先度を設定することで、「検討したが実装できなかった」という無駄な投資を避けられます。
技術的な実装が整っても、社内の体制が整っていなければSaaS連携の効果は十分に発揮されません。情シスが推進するための体制面のポイントを紹介します。
SaaSの新規導入・連携設定を行う際のルールをドキュメントとして整備します。「どのSaaSを導入する際に情シスの承認が必要か」「iPaaSを利用する場合の申請フロー」「APIトークンの管理方法」などを明文化することで、現場主導の野良連携を予防しつつ、現場の自律的なDXを支援する体制が整います。
参考記事:現場主導のSaaS導入、運用や解約まで見越した情シスの関わり方
SCIM連携の効果を最大化するには、入退社・異動情報がリアルタイムにIdPへ反映される仕組みが必要です。HR部門と情シスが連携するプロセスを設計し、情報の受け渡しタイミング・担当者・確認手順を明確にします。「入社7営業日前にHRから連絡が来てIdPに登録する」といった具体的なSLAを設定することで、アカウント準備の遅延を防げます。
構築した連携フローは、フロー図とともに設定内容・更新履歴をドキュメントとして残します。担当者が異動・退職しても引き継げる状態にしておくことが重要です。半年〜1年に1度の頻度で「どの連携フローが生きているか」「API仕様変更への追従が必要か」「未対応のSaaSが増えていないか」を確認する定期監査の実施を推奨します。
RPA(Robotic Process Automation)は画面操作を自動化するロボットです。APIが公開されていないシステムの操作を自動化できる反面、画面構成が変わると動かなくなるリスクがあります。iPaaSはAPI連携を前提としており、データのやりとりがシステム間で直接行われるため安定性が高く処理速度も速いです。APIが公開されているSaaS同士の連携にはiPaaSを、APIがないレガシーシステムの操作にはRPAを組み合わせるのが実務上のセオリーです。
役割が異なるため、可能であれば両方の導入を推奨します。SSOは「認証の一元化(ログインの簡略化・管理)」、SCIMは「プロビジョニングの自動化(アカウントの作成・削除の自動化)」を担います。SSOだけだとアカウント自体は手動で作成・削除する必要があり、SCIMだけだとログイン体験が改善されません。セットで導入することでアカウント管理が完全に自動化されます。
ZapierやMake(旧Integromat)は無料プランや低コストのプランから利用できるため、ITエンジニアがいない中小企業でもSaaS連携は始められます。専任情シスがいない企業では、まず最も手間のかかる手作業1つを対象にZapierで自動化を試すところから始めることを推奨します。1フローの成功体験を積み上げながら段階的に拡張するアプローチが定着率を高めます。
Josysは、Google Workspace・Microsoft 365・Slack・Zoom・Salesforceなど主要SaaSとのAPI・SCIM連携に対応しています。また、Josys APIを公開しているため、独自の人事システムや業務システムとのカスタム連携も実装可能です。対応する連携SaaSの一覧はJosys公式サイトのIntegrationsページで確認できます。
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SaaS統合・連携は、情シスがDXを推進するうえで最も即効性のある取り組みの一つです。API連携・iPaaS・SCIM・SSOという4つの手段を組み合わせることで、データサイロの解消・アカウント管理の自動化・セキュリティリスクの低減という3つの効果を同時に実現できます。
大切なのは、すべてを一度に完璧にしようとしないことです。最も工数がかかっている手作業1件の自動化から始め、成果を確認しながら対象を広げていくアプローチが、情シス内の信頼醸成と経営層への費用対効果の説明の両面で有効です。
連携設計を進めるなかで社内SaaSの全量把握・アカウントライフサイクルの一元管理が課題になった場合は、Josysのような統合管理ツールの導入を検討することで、個別の連携設定を積み上げるよりも少ない工数で広い範囲をカバーできます。
SaaS連携・統合管理にJosysがどう貢献できるかを、まず資料でご確認ください。導入事例・機能概要・サポート体制を5分でご覧いただける資料を無料でご提供しています。
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