
PC、スマートフォン、SaaS、ソフトウェアライセンス。情シスが目を配るべきIT資産は、年を追うごとに増えています。Excelの台帳は更新が追いつかず、棚卸しのたびに残業が積み上がる。退職した社員のアカウントやライセンスが宙に浮いたままになっている。こうした悩みは、いまや多くの現場に共通するものです。
とはいえ、専用ツールを導入しようと調べ始めると、今度は別の壁が立ちはだかります。製品は20種類を超え、機能も価格もタイプもばらばら。比較サイトを何ページ読んでも、自社の候補がなかなか定まりません。
そこで本記事では、主要なIT資産管理ツール12製品を機能・価格・タイプ・提供会社の軸で横並びにし、規模別・目的別にどう選び分ければよいかまで整理しました。情シス担当者やIT部門のマネージャー、なかでも従業員500名以上の組織で複数拠点・多数の端末を抱える方に向けた内容です。

IT資産管理ツールは、大きく3つのタイプに分かれます。この分類を先に押さえておくと、比較表の見え方がまるで変わります。同じ「IT資産管理」を掲げていても、資産の可視化に振り切った製品もあれば、セキュリティ制御まで抱え込んだ製品、SaaS管理に軸足を置いた製品もあり、得意領域が製品ごとに異なるからです。
インベントリ収集型は、PC・サーバー・ソフトウェアの情報を自動で集め、台帳として可視化することに特化したタイプです。ハードウェアのスペック、インストール済みソフト、ライセンス数を自動収集して一覧にするため、まず「何をどれだけ持っているか」を正確につかみたい組織に向いています。物品や固定資産の棚卸しに強い製品も、この系統に含まれます。
統合管理型は、資産の可視化に操作ログ管理、デバイス制御、セキュリティパッチ管理まで束ねたタイプです。国内で導入実績の多い製品の多くがここに当てはまり、資産管理と内部不正対策・情報漏洩対策をひとまとめに実現したい組織から選ばれています。カバー範囲が広いぶん、価格や運用負荷は収集型より高めになりやすい点は押さえておきましょう。
独自強み型は、特定領域に深く踏み込んだ機能で違いを出すタイプです。SaaSアカウントとデバイスの一元管理に強い製品、ITサービスマネジメント(ITSM)と統合された製品、グローバル拠点のライフサイクル管理に強い製品などがあります。ハードウェアの台帳にとどまらず、SaaSやクラウド資産まで管理範囲を広げたい組織で、存在感を増している系統です。
導入形態によって、集められる情報の深さと導入の手間が変わります。比較表を読む前に自社の環境と突き合わせておくと、選定の軸がぶれません。形態はエージェント型、エージェントレス型、クラウド型の3つに整理でき、それぞれに向き不向きがあります。
具体的には、次のように分かれます。
リモートワークと複数拠点管理が広がったことで、最近はクラウド型を土台にエージェント型を組み合わせるハイブリッド提供が主流になってきました。社外へ持ち出すノートPCが多い組織はクラウド型を軸に、詳しいログ取得が要るならエージェント併用を検討する、という判断がしやすくなっています。
ここからは、市場で評価の高い12製品を提供会社・タイプ・特徴・価格の軸で一覧にします。価格は「要問い合わせ」の製品が多く、公開されている料金も最小構成の目安である点に注意してください。
表を見るときに気をつけたいのは、価格の安さだけで判断しないことです。月額300円台の製品でも、必要なオプションを積み上げれば総額は変わります。要問い合わせの製品は、管理台数や機能構成によって上下の幅が大きくなります。導入支援費や年間サポート費まで含めた総保有コストで比べるのが原則です。
比較表だけでは各製品の個性までは伝わりません。代表的な製品を1つずつ取り上げ、どんな組織に向くのかを整理します。自社の優先順位に近い製品から読み進めてください。
SKYSEA Client Viewは、エンドポイント管理領域で国内シェア上位に位置する統合管理型ツールです。大規模から小規模まで幅広い企業・団体に導入されています。ハードウェアのインベントリを自動収集し、操作ログ管理やデバイス制御まで1製品でまかないます。以前は資産台帳を手作業で更新していた情シスが、導入後は収集を自動に切り替え、内部不正対策と資産管理を同じ画面で回せるようになった、という声が支持の背景にあります。
LANSCOPEは、PC・スマートフォン・Microsoft 365を横断して管理できる統合管理型ツールです。ハードウェアとソフトウェアの情報を日次で自動更新し、変更履歴も残せます。拠点が分散して端末が100台を超えるような中堅・大規模環境で力を発揮し、操作ログの詳細取得に強いため、内部不正対策と組み合わせた運用に向いています。
MaLionCloudは、株式会社インターコムが提供する、情報漏洩対策とIT資産管理を1つにまとめたクラウド型ツールです。WindowsとMacの両方に対応し、外部デバイス接続監視やメール・Webアクセス監視をオールインワンで標準搭載します。端末エージェントが入っていないオフラインのPCも、専用USBメモリを使えばインベントリを収集できる点が特徴です。
AssetView Cloud+は、ヒトを軸にIT資産・情報資産・SaaSを一元管理する統合管理型ツールです。IT資産管理、情報漏洩対策、PC更新管理、SaaS管理の4プランから必要なものを選べます。まず資産管理から始め、運用が定着してから範囲を広げたい組織にとって、段階的に育てやすい構成です。
SS1は、Excelに近い操作画面で、はじめての担当者でも身構えずに使える統合管理型ツールです。ログ収集、デバイス利用制限、外部サービス連携といったオプションを自由に組み合わせられるため、必要な機能だけを積み上げる運用ができます。運用者の使いやすさを重視した設計が、はじめて資産管理ツールを扱う担当者から支持されています。
OPTiM Biz Premiumは、スマートフォン・PC・ID・SaaS・物品をユーザー単位で管理できる統合管理型ツールです。MDM、SSOによるID管理、SaaS管理、QRコードを使った物品棚卸しまでを1つのダッシュボードに集約します。初期費用0円、月額980円からと料金体系が明確で、コストを見積もりやすいところも選ばれる理由です。
Assetment Neoは、物品・固定資産の台帳管理に特化したインベントリ収集型ツールです。バーコードやRFIDを使った棚卸し、貸出管理、リース費用や期間の管理を得意とします。PCやサーバーだけでなく、什器や計測機器まで含めて資産を把握したい組織に向いています。
ジョーシスは、SaaS・デバイス・アカウントを横断して一元管理するAI駆動型のアイデンティティガバナンスプラットフォームです。従来のIT資産管理ツールがハードウェア台帳を中心に据えるのに対し、ジョーシスは「誰が、どの端末で、どのSaaSを使っているか」までを結びつけて管理します。入退社に伴うアカウントの発行・削除やデバイスの割り当てを自動化でき、国内外1,000社以上に導入されています。
グローバル製品では、ManageEngine AssetExplorerとServiceNow ITAMが代表格です。AssetExplorerは調達から廃棄までのライフサイクル管理をエージェントレスでも実現でき、リモートコントロール機能も備えます。ServiceNow ITAMはAIプラットフォーム上でハード・ソフト・クラウド資産を統合し、契約やコンプライアンスのデータ精度をAIが底上げする、大企業向けの選択肢です。
参考:MaLionCloud IT資産管理機能|インターコム
参考:IT Asset Management(ITAM)|ServiceNow
12製品を自社に落とし込むなら、組織規模と管理したい範囲の2軸で絞り込むのが近道です。同じツールでも、100名規模と2,000名規模では最適解が変わります。
中堅企業では、資産管理と情報漏洩対策をまとめて実現できる統合管理型が第一候補になります。SKYSEA Client View、LANSCOPE、MaLionCloud、OPTiM Biz Premiumが有力で、料金体系が明確なクラウド型から始めると導入がスムーズです。情シスが少人数なら、自動収集と自動棚卸しの機能を優先して選んでください。
準大企業になると、複数拠点と多数の端末をさばける拡張性が問われます。LANSCOPE、SKYSEA Client View、ManageEngine AssetExplorerが候補で、SaaSやアカウント管理まで広げたいならジョーシスやOPTiM Biz Premiumも視野に入ります。導入前に60〜90日のトライアル期間を設け、実環境での収集精度と運用負荷を確かめておくと安心です。
エンタープライズでは、IT資産管理をITSMやガバナンス基盤と統合する設計が中心になります。ServiceNow ITAM、ManageEngine、大規模実績のあるSKYSEA Client Viewが候補で、ベンダーの実装支援能力とサポート体制が判断のカギを握ります。グローバル拠点があるなら、多言語・多通貨への対応も確認しましょう。
管理範囲の軸も見逃せません。PC・サーバーの台帳管理が主目的ならインベントリ収集型や統合管理型で足りますが、SaaSアカウントや遊休ライセンス、退職者アカウントまで押さえたいなら、SaaS管理に対応した独自強み型を軸に据える必要があります。この論点は、次のセクションで掘り下げます。
参考:ソフトウェア資産管理(SAM)|SKYSEA Client View
いまのIT資産管理で最大の盲点は、ハードウェア台帳をどれだけ整えても、SaaSアカウントとライセンスが見えないまま取り残されることです。PCの棚卸しは進んでも、従業員が個別に契約したSaaS、退職者のアカウント、使われていない有料ライセンスは、台帳の外へこぼれ落ちていきます。
かつてのIT資産管理は、資産管理番号を振ったPCとソフトウェアを台帳で追うのが中心でした。ところが今は、1人の従業員が20種類以上のSaaSを使い分ける時代です。デバイスとアカウントが別々に管理されると、入社時のアカウント発行漏れ、退職時の削除漏れ、そしてシャドーITの見落としが常態化してしまいます。
この分断を埋めるのが、SaaS・デバイス・アカウントを結びつけて管理するアプローチです。ジョーシスは350以上のSaaSと連携し、誰がどの端末でどのSaaSを使っているかを一元的に可視化します。入退社に伴うアカウントの発行・削除やデバイスの割り当てを自動化することで、情シスの手作業を大きく減らせます。
導入企業では、成果が数値にも表れています。事例によっては、IT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減したケースがあります。効果は個社の状況によって異なりますが、デバイス台帳とSaaSアカウントを1つの基盤で管理する運用は着実に広がっています。IT資産管理ツールを比較検討するなら、ハードウェアだけでなくSaaS・アカウントまで見据えて候補を選ぶと、数年先の運用まで見通しが立ちます。
比較表で候補が見えたら、次は自社の要件と照らして絞り込み、実環境で検証する段階に進みます。ツール選びは比較して終わりではなく、導入後に運用が定着するかどうかまでが勝負です。
進め方の基本は、次のとおりです。
評価軸の詳しい設計や導入ステップの手順は、選定に特化した記事で体系的にまとめています。要件整理の段階で判断に迷ったら、あわせて目を通してみてください。
関連記事:IT資産管理ツールの選び方|情シス担当者が押さえるべき7つの評価軸と導入ステップ
IT資産管理ツールの比較検討でよく寄せられる質問に答えます。
IT資産管理ツールはPC・サーバー・ソフトウェア・ライセンスを含む資産全体を台帳管理するもので、MDMはスマートフォンやタブレットの制御に特化したものです。近年は両者を統合した製品も増えているため、モバイル管理も必要ならMDM機能を内包した統合管理型を選ぶと、運用を一本化できます。
小規模向けに無料枠や無料ツールを用意する製品もありますが、収集できる情報や管理台数に制限があるのが一般的です。従業員500名以上の組織なら、自動収集・ログ管理・SaaS連携を備えた有料ツールを前提に比べたほうが、結果として運用工数を抑えられます。
SaaS管理に対応するのは、AssetView Cloud+、OPTiM Biz Premium、ジョーシスなどです。なかでもジョーシスはSaaSアカウントとデバイスを結びつけて管理する設計で、遊休ライセンスの発見や退職者アカウントの削除自動化に強みがあります。
操作ログやソフト利用状況まで深く把握したいならエージェント型、導入の手間を抑えて広く浅く集めたいならエージェントレス型が向きます。多くの製品は両方式に対応しており、詳細管理が要る端末はエージェント、それ以外はエージェントレス、と使い分ける運用も可能です。
IT資産管理ツールの比較は、まず3つのタイプと導入形態を押さえ、比較表で候補を3〜5製品に絞り、トライアルで実環境を確かめる。この流れが王道です。ここで取り上げた12製品と、規模・目的別の指針を起点に、自社のフェーズに合う製品を見極めてください。ハードウェアだけでなくSaaS・アカウントまで一元管理したい中堅・準大企業には、デバイスとSaaSを横断して管理できるジョーシスの併用が、現実的な選択肢になります。
Sign-up for a 14-day free trial and transform your IT operations.
