
IT部門が抱える業務量は、ここ数年で質・量ともに変わりました。クラウドサービスの普及、テレワークの定着、サイバーセキュリティ要件の厳格化が重なり、情シス担当者が対応すべき業務の範囲は広がり続けています。それでも人員は増えない。この構造的なアンバランスが、IT部門全体の生産性を下押しています。
キーマンズネットが2024年に実施した調査では、情シス部門で最も多くの時間を使っている業務として「問い合わせや障害対応」を挙げた担当者が54.7%にのぼりました。約7割(72.9%)が人材不足を感じており、疲弊状態と認識しています。バッファローの調査でも、中小企業の44.1%が「業務量に対して担当者の人数が足りない」と回答しています。
残業を増やしても構造は変わりません。業務そのものを見直し、自動化・ツール活用・役割分担の再設計で生産性を底上げする取り組みが必要です。本記事では、IT部門が生産性向上を実現するための7つの施策を体系的に整理し、それぞれの進め方と成果事例を解説します。
どの施策を優先するかを決めるには、まず何が生産性を下げているかを把握する必要があります。施策を打つ前にボトルネックを特定しないと、効果が出ない取り組みにリソースを費やしてしまいます。IT部門の生産性を妨げる要因は、大きく4つに整理できます。
情シス担当者が1日の大半を費やしているのは、PCの初期設定・アカウントの発行と削除・パスワードリセットといった定型作業です。これらは守りの業務であり、IT戦略を推進する攻めの業務には直結しません。システム刷新・セキュリティ設計・DX推進といったコア業務に割くべき時間が削られ続けることで、IT部門全体の付加価値が下がります。従業員500名規模の企業では、月間150時間以上のIT管理業務が発生するケースがあり、内訳はアカウント管理50時間・ライセンス管理30時間・セキュリティ対応40時間・コンプライアンス対応30時間と報告されています。
ビジネスSaaSの普及により、従業員が自主的にクラウドツールを契約するケースが増えています。IT部門が把握していないSaaSが社内に存在すると、ライセンスの重複・未使用アカウントの放置・セキュリティリスクの増大が同時に起きます。管理対象が増えるほど担当者の工数は膨らみ、見えないコストが積み上がります。
人の出入りのたびに発生するアカウント発行・権限付与・デバイス設定・退職者アカウントの削除は、時間がかかる割に付加価値の低い業務です。入社初日に必要なツールが使えない状態になる、退職者のアカウントが削除されずに残存するといった問題は、業務効率とセキュリティの両面でリスクになります。
「パスワードを忘れた」「このツールの使い方がわからない」「VPNに接続できない」――こうした問い合わせは、IT部門の時間を大量に消費します。定型的な内容ほど担当者の専門性を活かせず、戦略的業務への集中を妨げます。
ヘルプデスク業務の自動化は、IT部門の生産性向上に対して即効性の高い施策です。日常的に発生する定型問い合わせをAIチャットボットやFAQシステムで自己解決できる仕組みを整えると、担当者が対応に追われる時間を大幅に圧縮できます。
問い合わせ自動化の起点は、蓄積された問い合わせ履歴の分析です。頻出パターンをFAQとして整理し、AI搭載のチャットボットと連携させると、従業員が担当者を経由せず自己解決できるようになります。
ある企業の事例では、AIチャットボット導入後に月間の問い合わせ件数が67%削減され、情シス担当者の月間80時間分(営業日換算で約10日分)が解放されました。従業員3,000名規模の別の企業では、導入から3ヶ月時点で問い合わせ数が約20%減少し、月間160万円分の対応コスト削減と240万円分の従業員生産性向上が確認されています。
チャットボットで対応できない問い合わせは、チケット管理システムで担当者に振り分けます。優先度・カテゴリ・担当者・対応ステータスを一元管理することで、対応漏れや重複対応を防ぎ、チーム全体の効率が上がります。ServiceNowやJira Service Managementが広く使われていますが、組織規模に合わせて選定することが先決です。
パスワードリセット・ソフトウェアのインストール申請・アクセス権限の変更申請など、担当者を経由しなくてよい手続きをセルフサービスポータルで完結させる方法もあります。従業員が自分で申請・承認フローを進められると、担当者の介在頻度が下がります。ジョーシスのAccess Requestsモジュールは、こうしたセルフサービスポータルを構築する機能を提供しています。
入退社対応の自動化は、IT部門の生産性向上においてインパクトの大きい施策の一つです。入社日に複数システムへのアカウント登録・メールアドレス発行・デバイスの初期設定・権限付与をすべて手動で行うと、1人当たり数時間から半日単位の工数がかかります。退職者対応では、アカウント削除の漏れが情報漏洩リスクに直結するため、速さと正確さの両方が求められます。
人事システム(HRIS)と連携し、入社日・所属部署・役職が確定した時点でIT環境のセットアップを自動でトリガーする仕組みを構築します。Active DirectoryやGoogle Workspaceへのアカウント作成・グループ追加・SaaSライセンスの割り当てが自動で完了すると、担当者の手作業をゼロに近づけられます。Microsoft Entra IDのライフサイクルワークフロー機能を使えば、入社日に合わせてウェルカムメールの送信・グループへの振り分け・ライセンス割り当てが自動実行されます。
退職処理において見落とされやすいのが、利用中のSaaSアカウントの削除です。メール・チャット・プロジェクト管理ツール・経費精算など、複数のSaaSに分散したアカウントを手動で削除しようとすると、漏れが生じます。退職情報が人事システムに反映されたタイミングで、連携するSaaS全体のアカウントを自動停止・削除するワークフローを整備することで、セキュリティリスクを根本から解消できます。
ジョーシスのAccess Automationモジュールは、入退社ライフサイクルの一連の処理を自動化し、350以上のSaaSアプリケーションとの連携を通じて、人事システムのデータと連動した自動プロビジョニング・デプロビジョニングを実現します。Sales Markerでは、ジョーシス導入後にIT工数が約50%削減されたと報告されています。
企業内で使われるSaaSの数は年々増えており、規模の大きな企業では数十から数百のSaaSが並走しています。IT部門がすべてを個別に把握・管理しようとすると膨大な工数がかかるうえ、未使用ライセンスの放置や重複契約が起きやすくなります。SaaS管理を一元化して可視性と統制を高めることが、生産性とコストの両面で改善につながります。
手をつけるべき最初のステップは、社内で使われているSaaSの全体像を把握することです。IT部門が公式に管理しているSaaSだけでなく、従業員が個別に導入している未承認SaaSも含めて可視化します。ログイン認証ログ・ブラウザアクティビティ・ネットワークトラフィックを活用して、IT部門が把握していないSaaSを自動検出する機能を持つツールの活用が有効です。
SaaSのライセンスは付与した後に放置されがちです。退職者のアカウントが残り続けるゾンビライセンスや、誰も使っていない未稼働ライセンスは、純粋なコストの無駄です。利用状況のデータを定期的に分析し、未使用ライセンスを特定して解約することで、SaaSコストを適正化できます。国際的な調査では、年間1,800万ドル規模のSaaS支出が浪費されているとの報告もあります。
ジョーシスのSaaS Insightsモジュールは、統合アクセスインテリジェンスと自動ライセンスレビューにより、未使用ライセンスの特定と最適化を支援します。MyBestではジョーシス導入後にSaaS管理コストを70%削減、MerryBizでは年間約600万円の削減を実現しています。
SaaS・デバイス・アクセス権限を一元管理し、IT部門の工数を最大50%削減するジョーシスの詳細資料を無料でダウンロードできます。
シャドーITとは、IT部門の承認なく従業員が独自に使っているクラウドサービスやアプリケーションの総称です。SaaSの利用ハードルが下がった現在、部門単位でのSaaS導入は日常的に行われており、IT部門が把握できていないSaaSが社内に存在するケースは珍しくありません。シャドーITはセキュリティとコスト管理の両面でIT部門に余分な負荷をかけます。
シャドーITが発覚すると、IT部門は突発的な対応を強いられます。未承認のSaaSに機密データが保存されていた場合、情報漏洩リスクの評価・是正対応・社内周知という一連のインシデント対応が発生します。同じ機能を持つSaaSが部署ごとにバラバラに契約されると、データが分散してコラボレーションの障壁になり、ライセンス管理も複雑化します。
対策の起点は実態の可視化です。SaaS管理ツールで未承認サービスを検出し、利用状況と業務上の必要性を評価します。不要なSaaSは廃止または統合し、必要なものは正式な承認プロセスに移行させます。SaaSの新規導入に関する申請・承認フローを整備することで、今後のシャドーIT発生を抑制できます。
ジョーシスのSaaS Discoveryモジュールは、ログイン認証やブラウザアクティビティのデータから、IT部門が把握していない未承認SaaSを自動検出します。
デバイス管理は、IT部門が地道な作業として対処しがちな領域です。全社のPC・スマートフォン・タブレットといったエンドポイントのスペック・OS状態・ソフトウェアインストール状況を手動のExcel台帳で管理しようとすると、情報の更新が遅れて実態との乖離が生じます。IT資産管理の自動化は、管理精度を高めながら担当者の工数を削減する手段です。
デバイス管理ツールを使うと、エンドポイントのハードウェア情報・OS状態・インストール済みソフトウェアをエージェントが自動収集して台帳をリアルタイムで更新します。手動入力の手間がなくなり、棚卸し作業も大幅に短縮されます。
デバイスには調達・設定・運用・回収・廃棄というライフサイクルがあります。各フェーズの情報を一元管理することで、機器の老朽化状況の把握・リプレース計画の立案・廃棄時のデータ消去確認を効率化できます。ジョーシスのDevice Managementモジュールは、デバイス資産の追跡と管理を一元化します。KCONではジョーシス導入後に月間40時間の業務削減を実現しています。
テレワークの普及により、オフィス外のデバイスを管理する必要性が高まっています。MDM(モバイルデバイス管理)の仕組みと連携させると、リモート環境にあるデバイスでも設定の一括適用・セキュリティポリシーの適用・紛失時のリモートワイプを実行できます。
IT部門の生産性向上の本質は、担当者の時間を付加価値の高い業務に集中させることです。しかし、現状の人員・スキル・ツールのままでは、効率化を進めてもノンコア業務の総量が大きすぎて限界があります。アウトソーシングは、その突破口になり得る選択肢です。
すべての業務を外部委託すべきというわけではありません。アウトソーシングに向いているのは、手順が標準化されており、外部業者でも品質を維持できる業務です。ヘルプデスク対応・PCの調達とキッティング・デバイスの回収と廃棄・定期的なバックアップ運用が候補として挙げられます。バッファローの調査では、中小企業の70.3%がすでに情シス業務の全部または一部を外部委託しており、理由として「専門的知識・スキルを持つ人材が社内にいない」(59.0%)が最多でした。
ノンコア業務の負担が軽減されると、IT部門のリソースをDX推進・セキュリティ設計・新システム導入・データ活用といった戦略的な業務に投入できます。守りの情シスから攻めの情シスへの転換が実現し、事業の成長に直接貢献するIT部門としての価値が高まります。
施策を実施したら、定量的な指標で成果を継続的に測定する仕組みが必要です。数値で改善状況を把握することで、次に打つべき手が明確になります。IT部門のKPI設定は、経営層への説明責任という観点からも重要です。
IT部門の生産性を測る指標として、以下が活用されています。
これらをすべて一度に追う必要はなく、まず自部門が最も時間を費やしている領域に対応するKPIから設定することが現実的です。
KPIを測定するには、データが自動的に収集・蓄積される仕組みが前提となります。ヘルプデスクのチケット管理ツール・SaaS管理ツール・IT資産管理ツールを連携させることで、各指標のデータをダッシュボードで一元確認できる状態を目指します。月次・四半期ごとのレビューで進捗を確認し、次のアクションに反映させるサイクルを回します。
ジョーシスの操作性・機能・連携範囲を、実際の画面を見ながら確認できる無料デモを実施しています。IT部門の業務効率化を検討されている方はお気軽にどうぞ。
ツールは数多く存在しますが、導入すれば自動的に課題が解消されるわけではありません。自社のIT環境・組織規模・優先する課題に合ったツールを選び、適切に運用してはじめて効果が出ます。主要なツールカテゴリと選定時のポイントを整理します。
SaaS管理プラットフォーム(SMP)は、社内で利用されているSaaSの可視化・ライセンス管理・利用状況分析・アクセス権限管理を一元的に担うツールです。選定時に確認すべき主なポイントは次のとおりです。
連携できるSaaSの数と、入退社自動化のカバー範囲が特に重要な確認項目です。
エンドポイントの情報を自動収集し、台帳管理・ライフサイクル管理・セキュリティポリシーの適用を支援するツールです。MDMとの連携可否と、エージェントレスでの情報収集に対応しているかが選定の基準になります。
問い合わせ管理・チケット管理・ナレッジベース管理を担うツールです。AIによる自動応答機能・セルフサービスポータルの構築機能・他ツールとのAPI連携を重視して選定します。
SSO(シングルサインオン)・MFA(多要素認証)・アクセス権限管理を担うツールです。既存の認証基盤(Active Directory・Microsoft Entra IDなど)との統合可否と、連携対象のSaaS数が重要な確認ポイントになります。
施策を実行する際には、典型的な失敗パターンを事前に把握しておくと、無駄な回り道を避けられます。
ツールを導入するだけで業務の流れを変えなければ、効果は限定的です。新しいツールの導入と並行して現行の業務フローを見直し、プロセスを再設計することが不可欠です。担当者がツールの使い方に習熟する時間も必要であり、導入直後の定着支援を怠ると形骸化します。
IT部門単独で施策を推進すると、他部門との連携が不十分になり、効果が限定されます。入退社対応の自動化は人事部門との、SaaS統制は各部門のSaaS利用者との協力が前提です。関係部門を巻き込んだ推進体制が必要です。
課題が多いからといって、すべてを一度に動かそうとするとリソースが分散します。自部門が最も時間を費やしている業務を特定し、そこから着手することが合理的です。効果が出た施策を足がかりに順次対象を広げていくことで、継続的な改善が実現します。
IT部門の生産性向上は、個々の担当者の努力だけでは解決できません。業務の構造を変え、自動化・ツール活用・役割分担の再設計を組み合わせることで、根本的な改善が実現します。
本記事で整理した7つの施策は次のとおりです。
すべてを同時に進める必要はありません。自部門が最も時間を費やしている業務を起点に優先施策を決め、着実に効果を積み上げてください。ジョーシスは、SaaS管理・デバイス管理・アクセス権限管理を一元化するプラットフォームとして、IT部門の生産性向上を支援します。
ジョーシスがSaaS・デバイス・アクセス権限をどのように一元管理し、IT部門の工数削減とコスト最適化を実現するか、5分でわかる資料を無料配布しています。
参考記事:情シス忙しすぎ問題の元凶?「人員不足」を上回る課題とは(キーマンズネット・2024年10月)
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