
情シス担当者がExcelで管理業務を続ける中、セキュリティリスクの増大・SaaS急増・内部統制強化といった外部環境の変化が加速しています。かつてはExcelで十分だったIT資産台帳・インシデント管理・アカウント管理も、管理対象が数十から数百へと拡大した今日、手作業での更新では追いつかない状況が各現場で起きています。本記事では情シス担当者が直面するExcel管理の限界を具体的に整理し、業務種別ごとの脱Excel方法と移行手順を解説します。
情シス担当者がExcelを使い続けることで生じる問題は、単なる「非効率」にとどまりません。セキュリティ・コンプライアンス・運用品質に直結する構造的な課題が存在します。
ExcelファイルをNASや共有フォルダに保存する運用では、複数人が同時に編集することで上書き事故が発生します。クラウドストレージを使う場合でも、自動保存のタイミングによって最新情報と台帳の乖離が生じることがあります。IT資産管理ではデバイスの貸し出し・返却・廃棄のたびに台帳を更新する必要があり、更新タイムラグが「実機はあるが台帳にない」「台帳にあるが実機がない」という幽霊資産を生み出します。幽霊資産は年度末の棚卸しだけでなく、セキュリティ事故発生時の影響範囲特定にも支障をきたします。
2025年の調査では、情報システム職の48.5%が「作成した本人が不在でメンテナンス不可能なExcelファイルがある」と回答しています。独自マクロ・複雑な数式・独特のシート構成が個人の判断で作られると、担当者の異動・退職時に引き継ぎが困難になります。属人化したExcelは組織の業務継続リスクに直結し、後任者が一から作り直す事態も珍しくありません。
Excelには変更者・変更日時・変更内容を自動で記録する機能がありません。誰がいつどのデータを書き換えたかを事後に追跡できないため、情報セキュリティ監査・ISO 27001審査・SOX法対応で証跡の提出を求められた際に対応できないケースがあります。セル保護や共有パスワードは簡易的な保護に過ぎず、権限管理の粒度も粗いという問題もあります。内部不正が疑われる事案でも、Excelでは操作ログを証拠として提出することができません。
IT資産管理において「50台の壁」はよく知られた限界点です。管理対象が50台を超えると毎月数台の入れ替えや修理が発生し、通常業務の傍らでExcelを完璧に更新し続けることは事実上不可能になります。SaaS管理においても同様で、20種類以上のSaaSを導入している企業では、ライセンス数・利用者・コストをExcelで一元管理することが困難です。さらに、従業員数の増減・組織変更・テレワーク拡大によって管理対象はさらに複雑化しており、Excel管理の限界は年々早まっています。
参考記事:Excelで行うインシデント管理の限界 - LMIS
参考記事:デバイス管理台帳Excelの限界:2026年の情シスが直面するリスクと効率化の秘策 - Admina by Money Forward
すべての業務を一度に移行しようとすると失敗します。まず影響度・リスク・移行難易度の観点で優先順位をつけることが重要です。
セキュリティリスクが直接的に発生するIT資産管理とアカウント管理から優先して着手することを推奨します。この2つの業務は、インシデント発生時の影響が最も大きく、Excelでの管理継続がリスクとして顕在化しやすい領域です。
関連記事:IT資産台帳 作り方|情シス向け項目設計・運用ルール・自動化の実装ガイド
IT資産管理の脱Excelは、以下のステップで進めます。現状を正確に把握することが、スムーズな移行の前提です。
既存のExcelファイルを精査し、管理している資産の種類(PC・モバイル・周辺機器・ソフトウェアライセンス・ネットワーク機器)とその項目(シリアル番号・利用者・設置場所・購入日・保証期限・廃棄予定)を洗い出します。複数のExcelファイルに情報が散在している場合は、まず一つのマスターシートに統合することが移行前の必須作業です。この作業を通じて、管理対象の全体像と現状の台帳品質が把握できます。
IT資産管理ツールを選ぶ際は、以下の観点を評価します。
ツール選定では「多機能かどうか」よりも「現場で使いやすいか」が定着を左右します。無料トライアルを活用して、実際の管理業務フローに合うかを確認することが重要です。
ツールへのデータ移行前に、既存Excelデータのクレンジングが必要です。重複レコードの削除・廃棄済み資産の除外・項目の表記統一(例:「Windows 11 Pro」と「Win11」の表記を統一)を行います。クレンジングを省略すると、移行後に「ゴミデータ」が増殖して管理品質が低下します。移行と同時にデータ品質を高める機会として活用しましょう。
移行初期は新システムとExcelを並行運用し、差異が生じた場合はシステム側を正とするルールを設定します。全拠点・全部門への一斉展開は避け、まず1部門・1拠点でパイロット導入し、運用ルールを固めてから段階的に展開します。パイロット期間中に現場からのフィードバックを収集し、運用マニュアルに反映することで、全社展開時の摩擦を減らせます。
参考記事:脱Excel。IT資産管理台帳の新常識と3つの失敗しない乗り換えポイント
関連記事:IT資産管理ツールの選び方|7つの評価軸で比較【2026】
Josysの資料では、IT資産管理・SaaS管理・アカウント管理をひとつのプラットフォームで一元化する方法を詳しく解説しています。
アカウント管理をExcelで続けることは、情報セキュリティの観点から特に危険です。退職者のアカウントが削除されずに残る「ゾンビアカウント」や、部署異動後も旧権限が残り続ける「過剰権限」は、Excelベースの管理では構造的に発生しやすい問題です。警察庁の統計では、国内で検挙された不正アクセスの97.5%がパスワード窃取を原因としており、特権IDやアカウント情報がExcelで管理・共有されている状況は高いリスクをはらんでいます。
まず、現在ExcelやスプレッドシートにまとめているSaaSリストを棚卸します。社内で利用しているSaaSの種類・契約ライセンス数・実際の利用者数・月額コストを一覧化します。この作業自体が、脱Excel後のシステムに取り込むマスターデータとなります。把握できていなかった野良SaaSが発見されることも多く、シャドーIT対策としても有効です。
次に、IdP(Identity Provider)との連携を検討します。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やOktaなどのIdPと連携できる管理ツールを選定することで、入退社時のアカウント操作をプロビジョニング自動化によってワークフロー化できます。SCIM(System for Cross-domain Identity Management)に対応したツールであれば、主要なSaaSへのアカウント操作を一括で管理できます。
関連記事:入退社のSaaSアカウント自動化完全ガイド|仕組み・ツール比較13選
関連記事:SaaS管理を自動化する方法|情シスの工数を大幅削減する仕組みと手順
インシデント管理をExcelで行う場合、表のフォーマットが担当者ごとにばらつき、集約・分析に時間がかかるという問題が生じます。また、対応状況のリアルタイム共有ができないため、エスカレーションの判断が遅れるケースも多くあります。複数人で並行して対応するインシデントでは、誰が何を対応しているかが見えにくく、二重対応や対応漏れが起きやすい構造です。
インシデント管理専用ツールの導入が基本ですが、すぐに専用ツールの導入が難しい場合は、まずMicrosoft SharePointのリスト機能やNotion、Backlogでの管理に移行し、その後専用ツールへステップアップする方法が現実的です。段階的に移行することで、現場の負担を分散できます。
参考記事:適切なインシデント管理とは?問題点や解決策を解説 - 情シスBlog
入退社時のIT対応チェックリストをExcelで管理することは、手順漏れのリスクを高めます。特に、退職者のアカウント削除・デバイス回収・アクセス権限剥奪は確実に完了しなければならない重要作業であり、Excelでの手動チェックでは抜け漏れが発生しやすい環境です。退職後もアクティブなままのアカウントは、内部不正・情報漏洩の経路になり得ます。
ワークフローツールや統合管理プラットフォームを使うことで、入社時・退社時のタスクを自動でアサイン・通知・完了確認できます。人事システムと連携することで、入退社情報の入力を起点に、メールアカウント作成・SaaSアカウント発行・デバイス割り当てを自動的に実行できます。チェックリストの確認済みを担当者が手動でExcelに記入する運用から脱却することで、ヒューマンエラーの余地を大幅に減らせます。
関連記事:入退社対応の情シス工数を削減する方法|課題・自動化・SaaS統合管理を徹底解説
関連記事:退社時のIT管理手順|情シス担当者向けチェックリスト完全版【2026年】
Josysは、IT資産管理・SaaS管理・アカウント管理を一つのプラットフォームで実現するクラウドサービスです。情シス担当者が日々直面するExcel管理の課題を、以下の機能で解決します。
Josysでは、社内のPCやモバイル端末といったデバイス情報と、260種類以上のSaaSのアカウント情報を一つの画面で管理できます。Excelで個別に管理していた複数の台帳が統合され、「人ごとに利用しているデバイスとSaaSを把握できる」状態が実現します。これにより、従来は複数のExcelファイルと複数の管理画面を往復していた作業が、一つの画面で完結します。情報の散在がなくなるため、棚卸し作業や監査対応の時間も大幅に短縮できます。
Josysは人事システム・Active Directory・Microsoft Entra IDと連携することで、入社時のアカウント発行と退社時のアカウント削除を自動化できます。Excel台帳を手動で更新し、SaaSごとの管理画面を個別に操作するという従来の作業がなくなります。退職者アカウントの削除漏れというセキュリティリスクを根本から排除できます。自動化により、IT担当者が不在の場合でもオンボーディング・オフボーディングの処理が滞らない体制が作れます。
JosysのクラウドIT台帳は、SaaSのAPIと連携して自動的に最新状態を反映します。Excelでは避けられなかった「台帳の更新忘れ」や「実態との乖離」が解消されます。デバイスの貸し出し・返却・廃棄の記録も台帳に反映されるため、幽霊資産の発生を防ぐことができます。年度末の棚卸し作業が年間を通じた継続的な管理に変わることで、棚卸しのための特別工数が不要になります。
Josysはすべての操作履歴を自動で記録します。「誰が・いつ・どのアカウントを追加・削除したか」が追跡可能なため、情報セキュリティ監査やISO 27001審査への対応が容易になります。Excel管理では対応が難しかった監査ログの提出が、Josysのログ機能で実現できます。内部統制強化を求められる企業において、Josysは証跡管理のインフラとして機能します。
関連記事:SaaS管理ツール導入のステップ|中堅企業向け実装ロードマップ
実際のJosysの操作画面や導入効果を5分で確認できる資料を無料でご提供しています。Excel管理のどの業務をどう置き換えられるかを具体的にご確認いただけます。
脱Excelの取り組みが現場に浸透せず、結局Excelに戻ってしまうケースは少なくありません。失敗の多くは技術的な問題ではなく、推進プロセスの問題です。プロジェクト開始前に以下のポイントを確認しておくことで、定着率が大きく変わります。
「すべての業務を一度に移行する」という計画は失敗のリスクが高い方法です。まず1つの業務・1つのチームで試験導入し、成功事例を積み重ねながら展開範囲を広げます。情シス部門内でまず完結する業務(インシデント管理・問い合わせ管理)から始めることで、他部門を巻き込まずに効果検証ができます。小さな成功事例が社内での展開説得力を高めます。
データ移行コストは脱Excelの最大の障壁の一つです。CSVインポート・API連携・既存Excelのテンプレート変換機能を持つツールを選ぶことで、移行の手間を大幅に削減できます。新システムへのデータ移行に数ヶ月かかるようでは、現場の推進モチベーションが低下します。ツール評価時には「既存データをどのくらいの工数で移行できるか」を必ず確認しましょう。
脱Excelが現場に「余計な手間」と受け取られると推進が止まります。「なぜ今変えるのか」「変えることで何が楽になるのか」を、経営層と現場それぞれの視点で伝えることが重要です。経営層には「セキュリティリスク低減・コンプライアンス強化・コスト削減」を、現場担当者には「更新・集計・転記の手間削減」を具体的な数字とともに示します。現場が感じるメリットを先に提示することが、自発的な協力を引き出す近道です。
参考記事:なぜ「脱Excel」が提唱される?実施のメリットやステップを解説 - Biz Clip
脱Excelの投資対効果を経営層に説明する際は、定量的な数値を使うことが有効です。以下はExcel管理時とツール導入後を比較した典型的な工数の参考値です。
情シス担当者1名が月次で15〜30時間程度を管理業務に費やしているケースでは、脱Excelによる自動化でその大半を削減できる可能性があります。削減した工数を本来集中すべき業務(セキュリティ対策立案・システム企画・社内DX推進)に振り向けることが、脱Excelの本質的な価値です。ツール導入コストと工数削減効果を比較する際は、担当者の時給単価をもとにROI試算を行うと経営層への説明が具体的になります。
関連記事:情シスが取り組むべきITコスト削減7つの方法|優先順位と実践手順を解説
脱Excel移行が完了した後、情シス担当者の日常業務はどのように変わるのでしょうか。移行前後の業務イメージを具体的に示します。
出社後まず複数のExcelファイルを開き、前日の機器貸し出し記録を転記します。入社予定者の案内が人事から届いたらExcelで名前を確認し、各SaaSの管理画面を順番に開いてアカウントを発行します。退社者情報は別のExcelシートで管理しており、漏れがないか目視で確認します。月末には各SaaSのアカウント数をExcelに転記して突合し、請求額との差異確認を行います。この作業に月10〜15時間が費やされています。
入退社情報が人事システムから自動的に連携され、アカウント発行・削除が自動実行されます。ダッシュボードを開けば全デバイス・全SaaSの現在状況が一覧で確認できます。月末のコスト確認は自動集計レポートを参照するだけです。空いた時間でセキュリティポリシーの見直しや、社内からの問い合わせ対応に集中できます。情シスとしての本来の役割に近づける状態が生まれます。
業務の範囲とデータ量によりますが、IT資産管理やアカウント管理の移行であれば、ツール選定からデータ移行・並行運用期間を含めて2〜4ヶ月が目安です。インシデント管理や問い合わせ管理は1〜2ヶ月で移行できるケースが多いです。全社的な移行は6〜12ヶ月の計画で進めることを推奨します。
多くのクラウドツールはCSVインポート機能を備えています。ExcelファイルをCSV形式で書き出し、ツール側のテンプレートに合わせてデータを整形してインポートします。データ量が多い場合や移行精度を高めたい場合はAPIを使った移行も選択肢になります。移行前のクレンジング作業が移行精度を左右するため、この工程に十分な時間を確保することが大切です。
Excelマクロの多くは「データ集計・転記・通知」を自動化するものです。クラウドツールに移行することで、これらの処理はツール側のオートメーション機能(例:トリガーベースのワークフロー)で代替できます。複雑なマクロを個別に移植するよりも、ツールのネイティブ機能で同等の処理を実現する設計が望ましいです。
はい。むしろ情シス担当者が少人数・兼任の中小企業こそ、自動化による工数削減の恩恵が大きいです。中小企業向けの価格帯・機能を持つクラウドツールも多くあります。管理対象が少ない段階から移行したほうがデータ移行コストも低く抑えられるため、早期に着手することを推奨します。
必ずしも完全廃止は必要ありません。管理業務の中核となるIT資産・アカウント・インシデント管理はクラウドツールに移行し、一時的な分析・作業記録といった用途では引き続きExcelを活用するという共存アプローチも現実的です。「脱Excel」の目的は、Excelを使わないことではなく、Excelに依存した管理リスクを解消することです。
情シスがExcel管理から脱却することは、単なる業務効率化ではなく、セキュリティリスクの低減・コンプライアンス強化・業務継続性の確保という経営課題の解決でもあります。本記事で解説した脱Excelのアプローチをまとめます。
Excelへの依存から脱却した先には、情シスが本来取り組むべき戦略的な業務(セキュリティ対策・社内DX・コスト最適化)に集中できる環境があります。Josysはデバイス・SaaS・アカウントを一元管理することで、情シスのExcel依存を根本から解消します。まずは資料から、JosysがどのようにExcel管理を置き換えるかをご確認ください。
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