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「IT費用が高い」と経営層から指摘を受けたものの、どこにいくら使っているのか即答できなかった経験はないでしょうか。情シス部門にとって、IT予算の「見える化」は避けて通れない課題です。本記事では、費用の全体像を把握するための分類方法から、経営層に報告できるレポートの作り方、シャドーITを含めた完全な可視化の実現手順まで、実務に即した形で解説します。
この記事の要点
IT費用の全体像を把握できていない状態を放置すると、コスト削減のチャンスを逃すだけでなく、経営層からの信頼も失いかねません。
IT費用が見えにくくなる原因は、組織の構造変化とクラウドシフトに起因しています。特に以下の3点が、情シス部門による一元管理を困難にしています。
① 部門ごとのSaaS直接契約
マーケティング部門が独自にMAツールを契約し、営業部門がSFA・CRMを別途調達する——こうした状況は多くの企業で当たり前になっています。SaaSは月額数千円から始められるため、現場部門が情シスを通さず直接契約するケースが増えており、IT部門がどのサービスにいくら支払われているか把握できない状態になりやすいです。
② シャドーIT
会社が把握していないツールやサービスを従業員が業務に利用している状態を「シャドーIT」と呼びます。無料プランで始めたクラウドサービスが有料化していたり、個人のクレジットカードで支払われているサービスが経費処理されていたりするケースがあります。シャドーITが発見されると年間で数百万円の削減余地が見つかるケースもあり、放置は大きなリスクです。
③ 複数の支払い経路の混在
法人クレジットカード、銀行振込、個人立替精算、部門予算からの直接支払いなど、IT費用の支払い経路が複数存在する企業では、一元的な集計が困難です。経理部門と情シス部門が連携していないと、重複契約や使われていないサービスへの支払いが長期間続くこともあります。
IT費用を見える化することで得られるメリットは、単なるコスト削減にとどまりません。
削減機会の発見: 利用実態を把握することで、使われていないライセンスや重複機能を持つツールを特定できます。SaaS費用の25〜30%は最適化の余地があるとされており(出典:Gartner調査)、見える化はその入口となります。自社の支出水準が高いのか低いのかは、業種別の相場と比べると判断しやすくなります。目安はSaaSコストの平均・相場にまとめています。
予算獲得への貢献: 経営層への説明責任を果たせるようになります。IT費用の根拠を数字で示せると、DX投資の追加予算を獲得しやすくなります。情シスが「コストセンター」から「経営のパートナー」へと位置づけを変える第一歩です。
ガバナンス強化: IT費用の申請・承認フローを整備することで、シャドーITの抑止やセキュリティリスクの低減につながります。コンプライアンスの観点からも、IT支出の透明性確保は不可欠です。
IT費用を単純に金額の大小で並べるだけでは、経営層に適切な文脈を伝えられません。「守り」と「攻め」の視点で分類することが、有意義な議論の出発点になります。
守りのITとは、企業の業務継続に不可欠な基盤を維持するための費用です。一般的にIT予算全体の60〜70%を占めるとされています。
具体的には以下のような費用が該当します。
守りのITは、削減しすぎると業務停止リスクが高まるため、安易なコストカットは禁物です。一方で、クラウド移行やSaaS化によって固定コストを変動費化し、適正水準に引き下げる余地はあります。
攻めのITとは、業務効率化・売上向上・競争力強化を目的とした投資です。IT予算全体の30〜40%を目安とすることが多く、経営層がもっとも関心を持つ領域でもあります。
具体的には以下のような費用が該当します。
攻めのITへの投資比率が低すぎる企業は、競合との差別化が難しくなります。逆に守りのITを削りすぎて攻めに回しても、セキュリティ事故や障害のリスクが高まります。両者のバランスを把握するためにも、分類が重要です。
「守り/攻め」は経営層と投資方針を議論するための軸ですが、この1軸だけでは実務が回りません。「先月の増加分はどの部門のものか」「来期に削れる費用はどれか」といった問いに答えるには、1つのサービスに対して複数の分類値を持たせる必要があります。実務では以下の4軸を並行して持つ構成を推奨します。
1つのサービスは、4軸すべての値を同時に持ちます。たとえば全社利用のビジネスチャットなら「通信費(①)/変動費・ユーザー課金(②)/攻めのIT(③)/全社共通(④)」となります。この形で持っておくと、経理からの「通信費が増えた理由」という問いにも、経営層からの「攻めの比率は何%か」という問いにも、同じ台帳から即答できます。
逆に、最初から部門別だけ、あるいは勘定科目別だけで台帳を作ってしまうと、別の軸で聞かれるたびに集計をやり直すことになります。軸は後から足すより、最初から列として用意しておくほうが手間がかかりません。
IT費用が売上全体の何%を占めるべきかは、業種によって大きく異なります。以下の目安を参考に、自社の投資水準を評価してみましょう。
自社のIT費用比率が業種平均から大きく外れている場合、過剰投資または過少投資の可能性があります。経営層への説明にあたっては、業界標準との比較を示すと説得力が増します。
費用の全体像を把握するためには、体系的なアプローチが必要です。ここでは実務で活用できる4つのステップを解説します。
最初のステップは、IT関連費用を漏れなく集めることです。以下の3つのデータソースを組み合わせることで、精度の高い全体像が得られます。
① 法人クレジットカード明細(6〜12ヶ月分)
クラウドサービスやSaaSの多くは、法人クレジットカードで決済されています。直近6〜12ヶ月の明細を取り寄せ、IT関連と思われる支出をすべて抽出します。「AWS」「Microsoft」「Adobe」「Zoom」「Slack」といったキーワードで検索するのが効率的です。定期課金であれば、過去12ヶ月分でほぼ全サービスを網羅できます。
② 経費精算システム
社員が個人払い後に経費申請している場合、経費精算システムのデータが重要なソースになります。「ソフトウェア」「クラウドサービス」「通信費」などの科目でフィルタリングし、IT関連費用を集計します。部門別の内訳も確認できると、どの部門がどのサービスを使っているか把握できます。
③ 部門申告アンケート
上記2つのデータでは捉えられないシャドーITや、部門予算で直接契約しているサービスを把握するために、部門責任者へのアンケートが有効です。「現在利用しているクラウドサービス・SaaS一覧」「月額または年額の費用」「利用人数」「契約名義(法人または個人)」を回答してもらいます。アンケートは匿名でなく記名式にすることで、回答の精度が上がります。
洗い出しで漏れやすい支出のチェックリスト
3つのデータソースを揃えても、次のような支出は取りこぼしやすいものです。最初の洗い出しの段階で意識的に確認しておくと、後から「この費用が入っていない」と指摘されずに済みます。
洗い出しの範囲を決める際は、SaaSだけでなくハードウェア・回線・人件費までを一度リストに載せ、そのうえで対象外を落としていく順序が確実です。SaaSに絞った棚卸しの具体的な進め方はSaaS棚卸しのやり方で解説しています。

洗い出したIT費用を、管理可能な形に整理します。IT費用台帳(ITアセット台帳)を作成し、以下の必須項目を記録します。
特に「実利用ユーザー数」と「ライセンス数」の差は重要です。未使用ライセンスが多い場合、即座にコスト削減できる可能性があります。また「契約更新月」を記録しておくことで、更新の2〜3ヶ月前に見直しの機会を作れます。
上記の項目に加えて、前節の4軸(会計軸・費用性質軸・投資目的軸・受益者軸)をそれぞれ独立した列として持たせてください。「カテゴリ」1列に情報を詰め込むと、後から軸を変えた集計ができなくなります。スプレッドシートで作る場合は、1行=1サービス(1契約)を厳守し、同じサービスでプランが複数ある場合は行を分けて管理します。
台帳はExcelやGoogleスプレッドシートで始めることも可能ですが、利用しているSaaSが50種類を超えると手動管理の限界が見えてきます。SaaS管理ツールへの移行を検討するタイミングです。台帳そのものの項目設計・運用ルールについてはIT資産台帳の作り方が参考になります。
台帳データを集計・可視化することで、経営層への報告や意思決定が容易になります。可視化の方法には、SaaS管理ツールを活用する方法とExcelで代替する方法があります。
SaaS管理ツールを活用する場合
SaaS管理ツール(JosysやAdminaなど)を導入すると、契約中のSaaSをシステムが自動で検出・集計し、リアルタイムのダッシュボードとして可視化します。ライセンス利用率・費用推移・カテゴリ別内訳などが自動更新されるため、情シスの手動集計工数を大幅に削減できます。
Excelで代替する場合
予算が限られている場合は、Excelのピボットテーブルとグラフ機能で代替できます。台帳データをもとに「カテゴリ別コスト」「部門別コスト」「月別推移」の3つのグラフを作成します。更新頻度は月1回を目安にすると、変化を追いやすくなります。ただし、データの抜け漏れは人的ミスが発生しやすいため、後述のSaaS管理ツールへの移行を視野に入れておくことを推奨します。
そのまま使える集計フォーマット(3ビュー)
ダッシュボードに載せるビューは、多いほど良いわけではありません。台帳から作る集計は次の3つに絞ると、経営層への報告と自部門の運用の両方に使えます。ピボットテーブルの行・列をこの形で固定しておけば、毎月の更新はデータの貼り替えだけで済みます。
3つのビューはいずれも同じ台帳を参照します。月次推移を13ヶ月分(前年同月を含む)にしておくと、季節要因と実質的な増加を切り分けられます。運用面では、更新日と更新担当者を台帳のシート内に明記し、データの鮮度が分かる状態を保つことが重要です。可視化そのものの考え方はSaaS可視化とはも参考にしてください。
見える化は一度やれば終わりではありません。IT費用は日々変化するため、継続的なレビューサイクルを設計することが重要です。
特に重要なのは「契約更新の2〜3ヶ月前」のレビューです。更新直前では交渉の余地がなくなります。年次契約への切り替えを検討するだけで10〜20%の費用削減が見込めるため、更新のタイミングを台帳に記録し、リマインダーを設定しておきましょう。
レビューで「削減候補」が挙がったあとの具体的な進め方は、本記事の範囲を超えます。四半期レビューで扱う未使用ライセンスの判定基準と解約の手順は未使用SaaSライセンスの削減方法、半年レビューで扱う機能重複の洗い出しは重複SaaSの見つけ方にそれぞれまとめています。
IT費用の見える化は、経営層への説明責任を果たすための基盤でもあります。数字を正確に伝えるだけでなく、経営判断に資する文脈を添えることが重要です。
経営層がIT費用レポートに求めるのは、細かい明細ではなく「意思決定に必要な情報」です。以下の3つの指標を中心に報告を組み立てましょう。
① 1人あたりのIT費用
従業員1人あたりのIT費用(IT費用総額÷従業員数)は、業界平均との比較や他社ベンチマークに使える指標です。規模の異なる事業所間での比較にも適しており、「費用が高い理由」または「投資が不足している理由」を説明しやすくなります。例えば「1人あたり月額15,000円」という数字は、経営層にとって直感的に理解しやすい形式です。
② ツール別利用率
契約しているライセンス数に対して、実際に利用されている割合を示します。「100ライセンス契約しているが実利用は78名(利用率78%)」という表現は、22ライセンス分のコスト削減余地を経営層に伝える効果的な手法です。利用率が50%を下回るツールは、解約または縮小の候補として優先的に示すと議論が具体化します。
③ 前年比増減と増減理由
IT費用の前年比増減を示す際は、必ず「増減の理由」を添えることが重要です。「SaaS費用が前年比20%増加したのは、マーケティング部門がMAツールを導入したためです」という文脈があると、経営層は増加を「問題」ではなく「判断の結果」として受け取れます。理由なき増加は不信感を生みますが、根拠のある増加は信頼につながります。
経営会議向けのIT費用レポートは、3枚のスライドに絞ることをお勧めします。情報を絞り込むことで、議論が本質的なポイントに集中します。
スライド1:IT費用の全体サマリー
スライド2:カテゴリ別・部門別内訳
スライド3:削減余地と次年度への提案
3枚という制約が、報告者自身の思考を整理する訓練にもなります。まず3枚で説明しきれる内容を作り、詳細データは付属資料として準備しておくとよいでしょう。
スライド1の記入フォーマット
スライド1に載せる数字は毎回同じ項目にそろえます。項目が固定されていれば、経営層は前回との差分だけを見て判断できます。以下をそのままコピーして、自社の数字を空欄に埋めてください。
「主な増加要因」の欄を空欄のまま提出すると、増加そのものが議題になってしまいます。金額の大きい順に3件、要因と金額をセットで書くことが、報告を「説明」から「判断材料の提示」に変えるポイントです。
削減余地を経営層に提示する際は、「削減できます」という主張だけでなく、「どうやって削減するか」の手順と、「削減による影響リスク」を同時に示すことが重要です。
具体的には以下の3段階で整理します。
即時削減(1〜3ヶ月以内に実施可能) 使われていないライセンスの削減、年次契約への切り替え、重複機能を持つツールの統廃合など、現在の業務に影響を与えずに削減できる施策です。
中期削減(3〜12ヶ月) ベンダーとの価格交渉、ツールの統合・乗り換え、利用申請フローの整備による新規導入の抑制などが該当します。
長期的な最適化(1年以上) IT費用管理の仕組みそのものを変え、SaaS管理ツールの導入やFinOps的な考え方を組織に浸透させることで、持続的なコスト最適化を実現します。
なお、SaaS管理ツールの導入そのものを稟議にかける場合は、費用の見える化レポートとは別に投資回収の説明が必要になります。決裁者別の説明の組み立て方と想定問答はSaaS管理ツールのROIと稟議の通し方にまとめています。
IT費用の見える化において、最も難しく、かつ最も重要な課題がシャドーITへの対応です。把握できていないコストは管理できません。
シャドーITとは、IT部門の承認を受けずに従業員や部門が独自に導入・利用しているツールやサービスのことです。クラウドサービスやSaaSの普及により、クレジットカード1枚あれば誰でも業務ツールを即日契約できる環境が整ったことで、シャドーITは急速に拡大しています。
シャドーITが問題になる理由は費用面だけではありません。情シスが把握していないサービスにデータが保存されると、セキュリティ上のリスクが生じます。また、退職者のアカウントが引き続きアクティブな状態になっていたり、パスワードが共有されていたりする「野良アカウント」も、シャドーITに付随する典型的なリスクです。
シャドーITが発見されると年間で数百万円の削減余地が見つかるケースもあります。費用面だけでなく、セキュリティリスクの軽減という観点からも、発見と対策は優先度の高いテーマです。
シャドーITを発見するには、複数のアプローチを組み合わせることが効果的です。
① ネットワーク分析
社内ネットワークのトラフィックを分析し、業務システム以外への通信を特定します。ファイアウォールやプロキシのログから、クラウドサービスへのアクセスを抽出できます。CASB(Cloud Access Security Broker)を活用すると、より精度の高い検出が可能です。
② SSOログの分析
シングルサインオン(SSO)を全社導入している場合、SSOのログを分析することでどのサービスが利用されているか把握できます。SSOを経由していないサービスは、シャドーITの候補として特定できます。逆に言えば、SSO対応を必須化することで、新規のシャドーIT発生を抑制できます。
③ 従業員アンケート
技術的な手法だけでは見つけにくいシャドーITも、従業員への直接調査で発見できます。「業務で使っているITサービス・アプリを教えてください(会社公式以外も含む)」という形式で、半年に1回程度実施することを推奨します。「申告しても責めない」という姿勢を明示することで、回答率と正直さが向上します。

シャドーITを発見した後は、再発を防ぐためのルール整備が必要です。単に「禁止」と宣言するだけでは、現場部門が困るだけで問題は解決しません。
申請・承認フローの整備: 新しいSaaSを導入したい場合の申請窓口と承認基準を明確にします。承認までのリードタイムを短くすること(理想は5営業日以内)が、現場部門の協力を得るための鍵です。
申請を簡単にする: 申請フォームを1ページに収め、必要な情報を最小限にします。複雑な申請プロセスがシャドーIT発生の温床になっています。
優先SSO化: 承認されたサービスはSSO連携を必須とし、退職者のアカウント無効化が自動で行われる仕組みを作ります。
定期的な棚卸しサイクルの組み込み: ステップ4で設計したレビューサイクルに、シャドーIT発見のプロセスを組み込みます。
IT費用の一元管理を効率化するツールは、機能・対象範囲・価格帯でさまざまな選択肢があります。自社の課題に合ったツールを選ぶための参考にしてください。
SaaS管理ツールやIT資産管理ツールを導入することで、手動での台帳管理が不要になり、情シスの工数を大幅に削減できます。ツールを適切に活用することで、SaaS費用の可視化・最適化を継続的に実現できます。
JosysはSaaSとデバイスを統合管理できるAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームです。国内外1,000社以上が導入しており、350以上のアプリ(31カテゴリ)と連携しています。
主な機能
導入効果の実績
Josysの導入により、以下の事例では具体的な成果が出ています。
IT工数の最大50%削減、ITコストの最大75%削減という実績は、IT費用の見える化ツールを検討する際の有力な選択肢となっています。
こんな企業に向いている: SaaSとデバイスを統合管理したい、入退社対応の自動化と費用管理を同時に実現したい、シャドーIT検出まで含めた包括的な管理を求める企業。
Money ForwardグループのAdminaは、SaaS管理に特化したツールです。既存のIDプロバイダーやSaaSと連携し、ライセンス利用状況の可視化と未使用ライセンスの削減提案を行います。経理・財務部門との連携も強みです。
こんな企業に向いている: Money Forwardシリーズをすでに利用している企業、中小〜中堅規模でSaaS管理に特化したツールを探している企業。
freeeが提供するIT管理ツールです。freee会計やfreee人事労務との連携を前提に、IT費用管理とアカウント管理を統合します。中小企業向けに設計されており、初期導入のハードルが低いです。
こんな企業に向いている: freeeシリーズを会計・人事で既に活用している中小企業。
SaaSコスト最適化に特化したツールです。利用中のSaaSの費用を自動集計し、削減余地を可視化します。特に「コスト削減」に特化した機能が充実しており、FinOps的なアプローチを実践したい情シス向けです。
こんな企業に向いている: SaaS費用の削減を最優先課題にしている企業、コスト分析の精度を高めたい情シス担当者。
サブスクリプション型のSaaS費用を一元管理するツールです。クレジットカードや銀行口座と連携してSaaSの支払いを自動集計する機能が特徴で、経費精算システムを持たない中小企業でも導入しやすい設計です。
こんな企業に向いている: 経費管理の仕組みがまだ整っていない中小企業、シンプルなUI重視の情シス担当者。
MDM(モバイルデバイス管理)に特化したツールです。PCやスマートフォン、タブレットの台数・ソフトウェアインストール状況・セキュリティポリシーの適用状況を管理します。SaaS管理機能は持ちませんが、ハードウェア資産管理と組み合わせると、IT費用台帳の完成度が高まります。
こんな企業に向いている: デバイス管理を優先したい、既存のSaaS管理ツールにデバイス管理を補完したい企業。
OPTiMが提供するデバイス管理とアカウント管理の統合ツールです。クラウドベースのMDMとIDaaSを組み合わせた設計で、デバイスとアカウントのライフサイクルを統合管理します。特に製造業や医療機関での導入実績があります。
こんな企業に向いている: 製造業・医療・教育など特定業種での利用、デバイスとアカウント管理の統合を求める企業。
ツールを選定する際は、以下の3つの観点でチェックすることをお勧めします。
① 自社のSaaSとの連携数・対応範囲 自社で利用中の主要なSaaS・IDプロバイダーと連携できるかを確認します。連携数が少ないと、自動集計できない部分が増え、手動管理が残ります。
② シャドーIT検出の有無 単にIT台帳を管理するだけでなく、未把握のSaaSを自動検出できるかどうかは、見える化の精度を大きく左右します。
③ レポート・ダッシュボードの充実度 経営層への報告に使えるレポートがツール内で作成できるかを確認します。エクスポート機能の充実度も重要な選定基準です。
見える化が完了したら、次は具体的なコスト最適化のアクションに移ります。台帳と3つの集計ビューが揃っていれば、削減候補は自動的に浮かび上がります。着手順は「即効性が高く、業務への影響が小さいもの」からです。
各施策の具体的な手順は、それぞれ専用の記事にまとめています。優先度1については未使用SaaSライセンスの削減方法、優先度3については重複SaaSの見つけ方、5つの施策を一連の流れとして実行する手順はSaaSコスト最適化の方法5ステップをご覧ください。
次年度予算への反映方法
削減施策の実施後は、その結果を次年度の予算策定に反映します。「今年度の実績コスト × 想定増加率 ± 来年度の変化要因」で予算を組み立て、守りのITと攻めのITの比率が業種標準に近づくよう調整します。
削減余地の大きい領域(未使用ライセンス・重複ツール)を整理した後の予算は、前年比で削減できていても、中身は「攻め」の投資に振り替えられているという状態が理想です。経営層には「削減額○円を、DX投資に再配分する」という形で提示すると、IT部門の戦略的な立ち位置を示せます。継続的にこのサイクルを回す考え方は、FinOpsとはで整理しています。
IT予算の見える化は、単なるコスト削減の手段ではありません。IT部門が経営の意思決定を支える戦略的なパートナーとして機能するための基盤です。
本記事で解説した4ステップ(全費用の洗い出し→カテゴリ分類と台帳化→可視化ダッシュボードの構築→定期的なレビューサイクル)を実行することで、IT費用の全体像を把握し、削減余地の特定、経営層への報告、次年度予算策定までを一貫した流れで進められます。
実務で差が出るのは、分類軸の設計と集計フォーマットの固定です。会計軸・費用性質軸・投資目的軸・受益者軸の4軸を最初から列として持ち、カテゴリ別・部門別・月次推移の3ビューを毎月同じ形で更新する。この2点を決めてしまえば、月次の作業はデータの貼り替えだけになり、経営層からどの角度で質問されても同じ台帳から答えられます。
特に重要なのは、シャドーITを含めた「完全な見える化」の実現です。情シスが把握できていない費用は管理できず、セキュリティリスクにもなります。SaaS管理ツールを活用することで、自動検出・自動集計・自動レポートを実現し、情シスの工数を最小化しながら、より精度の高い費用管理が可能になります。
IT予算の見える化が進むと、経営層との対話の質が変わります。「ITに何千万円かかっているのか」という問いに答えるだけでなく、「ITへの投資がどのような価値を生んでいるか」を語れる情シスへの変革が始まります。
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