
スマートフォンやタブレット、さらにPCまで業務で使う企業が増え、MDM(Mobile Device Management)の導入は情シス部門にとって避けて通れないテーマになりました。ところが製品は数十種類にのぼります。比較サイトのおすすめランキングを眺めても「結局うちにはどれが合うのか」がわからない、という声は尽きません。
ランキング上位の製品が、そのまま皆さんの会社の最適解になるとは限りません。MDMのおすすめは、対象デバイスのOS構成、管理台数、予算、BYODの有無、情シスの運用体制で大きく変わるからです。Apple中心の会社とWindows・Mac混在の会社では、同じ「おすすめ」でも答えがまるで違います。
扱うのは、製品スペックの横並び比較ではなく、運用シナリオ別・企業規模別に「自社ならどれを選ぶか」を絞り込むための考え方です。料金相場、失敗しない選定手順、デバイスとアカウントを横断する運用像までカバーします。MDMを初めて導入する情シス担当者、候補を絞り込みたいIT部門のマネージャー、セキュリティ運用の責任者に向けた内容です。
MDMのおすすめは、製品の優劣ではなく自社の運用シナリオへの適合度で決まります。ランキング1位がAppleデバイス特化の製品なら、Windows中心の会社には合いません。自社の状況を先に言葉にすることが、遠回りに見えて最短の選び方です。
選定を左右するのは、次の5つの要素です。ここが固まると、候補は自然と3社前後に絞られます。
これらを曖昧にしたまま比較表を眺めても、判断軸が定まらず選定が長引きます。製品ごとの機能や価格を詳しく突き合わせたいときは、評価軸と主要10製品を横並びで整理した比較ガイドを併読してください。本記事のおすすめ提示が、より立体的に理解できます。
関連記事:MDM比較ガイド|主要10製品の機能・価格・選定ポイントを徹底比較
[画像: オフィスで情シス担当者がノートPCとスマートフォンを机に並べ、管理台帳を見ながら同僚と製品選定を相談している様子]
自社がどのシナリオに当てはまるかがわかれば、おすすめの製品はほぼ一意に定まります。ここでは情シスの現場でよく出会う7つのシナリオごとに、第一候補となる製品と選ぶ理由を示します。複数のシナリオにまたがる場合は、優先度の高い条件から当てはめてください。
代表的なシナリオと第一候補は、次のように対応します。
Apple製品で統一している組織の第一候補は、Appleデバイス管理に特化したJamf Proです。iPhone、iPad、Macのきめ細かな制御に強く、Apple Business ManagerやADE(Automated Device Enrollment)と連携すれば、箱から出した端末が自動で設定される導入体験を実現できます。
採用が広がっているのは、教育機関やクリエイティブ業界、Apple中心のスタートアップです。すでにMicrosoft 365を契約しているなら、Appleデバイスも一定水準で管理できるMicrosoft Intuneと比べてみるとよいでしょう。Apple端末が数十台規模でとどまるうちは、より軽量なプランから小さく始める手もあります。
PCのOSが混在する環境では、複数OSを1つのコンソールで扱えるUEM型が現実解になります。Microsoft 365を導入済みならMicrosoft Intuneが有力です。Windows Autopilotによるゼロタッチ導入、条件付きアクセス連携、モバイルまで含めた一元管理を、追加コストを抑えて実現できます。
Microsoft 365に縛られず幅広いOSを管理したいなら、Windows・macOS・Linux・iOS・Android・ChromeOSをカバーするEndpoint Central、PCログ管理と統合できる国産のOPTiM BizやLANSCOPEも候補です。営業はiPhone、開発はMac、内勤はWindows。こうしたデバイス構成を棚卸しすると、必要なOS対応範囲がはっきりします。
現場でAndroid端末を配布している組織には、Android Enterpriseに正式対応したMDMをおすすめします。Google提供の企業向け管理基盤に対応することで、業務専用端末としてのロックダウンや、使えるアプリを限定するキオスクモード運用が安定します。
小売、物流、製造、建設の現場では、決まったアプリだけを使わせる運用が求められます。OPTiM BizやCLOMO、mobiconnectといった国産製品はAndroid Enterprise対応が手厚く、キャリア回線とセットで導入できる点も現場向きです。堅牢性と一括設定のしやすさを軸に選ぶと外しません。
私物端末を業務に使うBYOD環境では、業務領域と個人領域を分離できるコンテナ型のMDMが前提条件になります。会社は業務コンテナだけを暗号化・パスコード強制・遠隔削除の対象とし、従業員のプライベート領域には触れません。
この分離があるからこそ、退職時に業務データだけを消せて、私物の写真や個人アプリを巻き込む事故を防げます。Intuneのアプリ保護ポリシー(MAM)、Android Enterpriseの仕事用プロファイルなど、コンテナ機能の作り込みは製品ごとに差があります。利用同意書の取得と社員への説明をセットで設計することが、BYOD運用を成立させる条件です。
情シスが1〜2名で数百台を見ているような組織には、初期費用を抑えられて管理画面が直感的なクラウド型がおすすめです。オンプレミス構築が不要で、QRコードやリンクで端末を登録できる製品なら、導入と日々の運用にかかる手間を小さくできます。
日本語サポートの質も、少人数体制では見逃せません。電話やメールでの問い合わせにしっかり応えてくれるベンダーを選べば、担当者が1人でも運用は回ります。国産のクラウドMDMは、この点で少人数情シスと相性のよい選択肢です。
端末の初期設定まで手が回らない組織には、キッティング代行と組み合わせやすいMDMが向いています。クラウドMDMとゼロタッチデプロイをつなげば、端末がネットにつながった時点で設定が完了し、物理的なキッティング作業そのものを減らせます。
外注する際に見極めたいのは、単発の作業だけでなく、故障や回収まで含めた端末ライフサイクルを預けられるパートナーかどうかです。JamfやIntuneはゼロタッチ導入との相性がよく、国産のSPPMやLANSCOPEは代行サービスと組み合わせた導入実績を積んでいます。
日本語での手厚いサポートと、細やかな機能要望への対応を求めるなら、国産MDMがおすすめです。長年の国内導入実績を持つ製品は管理コンソールが日本語で作り込まれ、官公庁・金融・医療といった規制の厳しい業種で培った運用ノウハウも蓄積しています。
代表格はCLOMO MDMとOPTiM Biz、そしてPCログ管理と統合できるLANSCOPEです。CLOMOとOPTiM Bizはいずれも国内MDM市場で15年連続シェアNo.1を自社公表していますが、これは調査対象の市場区分が異なるためで、どちらか一方だけが唯一の首位というわけではありません。導入実績と自社の業種との相性で判断するとよいでしょう。
参考記事:MDM(モバイル端末管理)なら「OPTiM Biz」(オプティム)
参考記事:CLOMOがMDM市場15年連続シェアNo.1を達成|アイキューブドシステムズ
参考記事:キッティング アウトソーシングの費用相場・業者選定|Admina by Money Forward
企業規模が変わると、MDMで優先すべき観点も変わります。小規模ではコストと手軽さ、中堅以上では統合管理と自動化、大企業ではガバナンスと連携が重みを増します。規模ごとに「何を優先して選ぶか」を整理します。
50名までの組織は、コストと導入の手軽さを最優先にする選び方が向いています。管理対象はスマートフォンとMacが中心になりやすく、必要十分な機能を低コストで使えるクラウド型が合います。
Microsoft 365を使っているならIntune、Apple中心ならJamf、リーズナブルなSaaS型のHexnodeあたりが第一候補です。この段階からSaaSアカウントの管理も一緒に設計しておくと、人が増えたときの入退社対応がぐっと楽になります。
急拡大するこの規模では、入退社が増え、手作業のデバイス管理がすぐ限界を迎えます。PCとスマートフォンを一元管理でき、ゼロタッチ導入や一括設定で運用工数を減らせる製品を選びましょう。
候補になるのはIntune、OPTiM Biz、CLOMO、KDDI Smart Mobile Safety Managerなどです。人事システムやアカウント管理と連携させ、入社時の初期設定と退職時の権限回収を自動化する設計が、この規模の標準形になりつつあります。
中堅企業では、複数OSの統合管理に加えて、IDaaSやSaaS管理との連携が選定の焦点になります。UEM型でPCとモバイルをまとめて管理しつつ、ゼロタッチ導入とアカウント管理を組み合わせ、少人数の情シスでも回る運用を組むことが求められます。
Microsoft Intuneのエンタープライズ機能、Omnissa Workspace ONE、OPTiM Bizなどが候補です。この規模になると、PoC(試験導入)を60〜90日設け、実環境での動作を確かめてから全社展開する進め方が定石です。
1,000名を超える組織では、業務領域ごとに複数のMDMやUEMを併用しつつ、ガバナンス層をIDaaSやアイデンティティガバナンスで統一する設計が中心になります。ベンダーの実装支援力とサポート体制、監査ログの深さが重視されます。
主要な選択肢はOmnissa Workspace ONE、IBM MaaS360、Microsoft Intuneです。デバイス単体の管理にとどまらず、SaaSアカウントやライセンスまで含めて統制する基盤を、MDMとは別に用意しておくことが安定運用の鍵になります。
MDMの料金相場は、クラウド型で1台あたり月額150〜300円程度が目安です。初期費用は0〜5万円ほどで、無料または低廉に始められる製品もあります。ただし表面的な単価だけで選ぶと、運用フェーズで想定外のコストが顔を出します。
見落としやすいのが、月額単価の外側でかかる総保有コストです。3年間で見ると、次のような費用が積み上がります。
単価が安くても、初期構築に膨大な工数がかかれば結果的に高くつきます。予算が限られる小規模組織なら、初期費用を抑えたクラウド型から始め、必要に応じて機能を足していく考え方がおすすめです。台数が増える見込みがあるなら、デバイスの増減に応じて契約を変えられる柔軟な料金体系かどうかも確かめておきましょう。
参考記事:MDMツールのおすすめ10製品を徹底比較|ITreview
おすすめの候補になりやすい主要製品を、ここで簡潔に整理します。詳しい機能比較や価格は、既存の比較ガイドと各製品の公式サイトで最新情報を確認してください。
主要製品の位置づけは、おおむね次のとおりです。
なお、Cisco Meraki Systems Managerは2025年12月にEnd-of-Sale(販売終了)が公表されました。最終購入日は2026年6月3日、サポートは2029年6月3日までとされ、Cisco社はIvanti Neurons for MDMを移行先として案内しています。これから新規に選ぶ製品としてはおすすめしません。MDMの基本や各製品の特徴を押さえたい方は、次の記事も参考になります。
関連記事:MDMとは?仕組み・EMM/UEMとの違い・製品比較を情シス向けに徹底解説
参考記事:Meraki Systems Manager (SM) End-of-Sale FAQ|Cisco
MDM選定の失敗は、要件を固めずに製品を決めてしまうところから起きます。おすすめの候補を絞り込んだら、次の3ステップで進めることで、導入後の機能不足や運用破綻を防げます。
最初にやるべきは、OS構成・台数・予算・BYOD有無・運用体制の棚卸しです。この5要素を1枚のシートに書き出すだけで、候補は一気に絞り込まれます。将来導入予定のデバイス種別や、3年後の台数見込みも書き添えておくと、拡張性の判断がしやすくなります。
棚卸しの結果から候補を2〜3製品に絞り、一部部門で30〜60日のPoCを実施します。実際の端末でポリシー適用、ゼロタッチ導入、遠隔ワイプの動作を検証し、想定外の挙動を洗い出しましょう。カタログスペックだけでは見えない使い勝手は、この段階でしか確かめられません。
MDMはデバイスの統制を担いますが、そのデバイスから使われるSaaSアカウントやライセンスの管理には別の仕組みが要ります。入社時の端末設定とアカウント発行、退職時の遠隔ワイプとアカウント無効化を一連の流れとして設計すれば、権限の残存や管理漏れを防げます。
MDMを選んでも、デバイスから使われるSaaSアカウントの管理は別ツールに分かれてしまうケースが大半です。この分断が、退職者のアカウント残存や、誰がどの端末でどのSaaSを使っているかわからない状態を生みます。デバイスは管理できてもアカウントは野放し。そんな状態から抜け出すには、両者を横断する基盤が必要です。
ジョーシス(Josys)は、SaaS・デバイス・アカウントを統合管理するAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームです。MDMが管理するデバイス情報と、SaaS側のアカウント情報を1つの画面で結びつけ、人・デバイス・アカウントの関係を可視化します。国内外1,000社以上の導入実績があり、事例によってはIT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減したケースもあります。効果は個社の状況によって異なります。
350種類以上のSaaSと連携し、人事システムやIDaaS、MDMと組み合わせることで、入退社プロセスの自動化が進みます。たとえば家電メーカーのAnker Japanでは、ITコストを75%削減した事例が報告されています。MDMでデバイスを統制しつつ、ジョーシスでアカウントとライセンスまで押さえる組み合わせは、中堅・準大企業の情シスにとって現実的な選択肢です。
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MDMのおすすめと選び方でよく寄せられる質問にお答えします。
MacやiPhoneを業務で多用する組織にはJamf Pro、Microsoft 365中心の組織にはIntuneがおすすめです。Apple端末はJamf、WindowsはIntuneと使い分ける併用も一般的なパターンです。既存のライセンス環境とデバイス構成から判断すると失敗しにくくなります。
日本語サポートと細やかな機能要望への対応を重視するなら国産、グローバル展開と最新機能のスピードを重視するなら海外製が向いています。海外拠点を持つ組織では海外製の選好が強まり、国内中心で少人数運用なら国産の安心感が勝ります。
台数が少なく、遠隔ロックや簡単なポリシー適用だけで足りる段階なら、無料や低廉なプランから始めるのも選択肢です。ただし機能や台数に制限があることが多く、規模拡大やセキュリティ要件の高度化に伴って有償版への移行が必要になります。将来の拡張を見込んで選びましょう。
スマートフォンとタブレットの管理だけならMDM、PCまで含めて統合管理したいならUEMがおすすめです。中堅企業以上では、最初からUEMを選び、3〜5年先の拡張性を見込む判断が増えています。PC統合のニーズが顕在化したタイミングが、UEM検討の起点になります。
業務領域と個人領域を分離できるコンテナ型のMDMがおすすめです。Intuneのアプリ保護ポリシーや、Android Enterpriseの仕事用プロファイルなどが該当します。遠隔ワイプの対象を業務領域に限定し、利用同意書と社員説明をセットで運用することが、BYODを成立させる条件です。
MDMのおすすめは、運用シナリオ、企業規模、予算の順に当てはめて絞り込むのが王道です。Apple中心ならJamf、Windows混在ならIntune、国産サポート重視ならCLOMOやOPTiM Biz。自社の状況が決まれば、候補は自然と定まります。
まずはOS構成・台数・予算・BYOD有無・運用体制の5要素を、1枚のシートに書き出すところから始めてください。そのうえでデバイスとアカウントを横断して管理したい中堅・準大企業なら、MDMとジョーシスの組み合わせが有力な選択肢になります。
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