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オンプレミスからSaaS移行の手順|注意点7つで失敗を防ぐ【2026】

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オンプレミスからSaaSへの移行は、多くの企業でIT刷新の中心テーマになっています。コスト削減・運用効率化・テレワーク対応といった期待から移行を検討する組織は増えていますが、十分な準備なく進めると、コスト超過・データ消失・現場混乱といった深刻なトラブルに直面することも珍しくありません。

情シス担当者・IT部門マネージャーが移行前に必ず把握しておきたい注意点を7つに整理し、失敗事例とともに具体的な対策を解説します。計画段階から移行後の運用設計まで幅広く参考にしてください。

この記事の要点は次の5点です。

  • 移行は「現状棚卸し → SaaS選定 → 詳細設計 → 段階移行 → 管理体制の整備」の5ステップで進める
  • 最も工数が集中するのはデータ移行。フォーマット変換・過去データの線引き・テスト移行・ダウンタイム設計の4点を先に固める
  • コストはサブスクリプション費用だけで判断せず、5年単位のTCO(総所有コスト)で比較する
  • セキュリティは「責任共有モデル」に切り替わる。アカウント管理・権限設定・ログ監視は移行後も自社の責任
  • 移行して終わりではなく、移行後のSaaS管理体制(野良SaaS・アカウント・ライセンス)まで設計して初めて移行は完結する

オンプレミスとSaaSの違いを改めて整理する

オンプレミスからSaaS移行の注意点を理解するには、両者の構造的な違いを正確に把握しておく必要があります。責任範囲・コスト構造・カスタマイズ性・セキュリティモデルが根本的に異なるため、移行後に「こんなはずではなかった」となる原因の多くは、この違いを曖昧なまま進めてしまったことにあります。

オンプレミスの特徴

オンプレミスとは、自社サーバーやネットワーク機器を社内に設置・運用する形態です。ハードウェアの調達から、OS・ミドルウェア・アプリケーションのパッチ適用・バックアップまで、すべてを自社または委託先が管理します。カスタマイズの自由度が高く自社固有の業務要件に細かく対応できますが、初期投資が大きく、保守・運用に継続的なコストと人員が必要です。

SaaSの特徴

SaaS(Software as a Service)は、クラウド事業者がインターネット経由で提供するソフトウェアサービスです。サーバーインフラ・OSの管理はベンダー側が担い、利用者はブラウザやアプリからサービスを利用するだけで済みます。初期投資が抑えられる一方で、カスタマイズの範囲はベンダーの提供機能に限られるため、自社固有の業務プロセスをシステムに合わせて見直すBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)が必要になる場面も多くあります。

また、SaaSは1つ導入すれば完結するものではなく、利用するサービスが増えるほど管理対象そのものが増えていきます。移行の設計に入る前に、SaaS管理の基本と実践手順で移行後に必要になる管理業務の全体像を押さえておくと、後述する注意点7の重要性が理解しやすくなります。

移行で変わる「責任範囲」

特に重要なのが責任範囲の変化です。オンプレミスでは自社がすべての責任を負っていましたが、SaaSではベンダーとの**「責任共有モデル」**になります。インフラのセキュリティはベンダーが管理しますが、アカウント管理・アクセス権限・データの取り扱いポリシーは利用者側の責任です。この共有モデルを正確に理解していないと、「セキュリティはベンダーに任せれば大丈夫」という誤解が生まれ、設定ミスや情報漏洩につながります。

参考:オンプレミスソフトウェアからSaaSへの移行時の重要な考慮事項(Josys)

注意点1:移行対象システムの棚卸しと優先順位づけ

オンプレミスからSaaSへの移行で最初につまずくのが、移行対象の選定です。すべてのシステムを一斉にSaaS化しようとすると、リソース不足・現場混乱・リスク集中を招きます。まず自社で稼働しているシステム・アプリケーションの全量を棚卸しし、移行の優先順位を明確にすることが出発点です。

棚卸しでは以下の観点でシステムを分類することを推奨します。

  • 業務重要度: 止まると業務が止まるコアシステムか、補助的なツールか
  • 移行難易度: カスタマイズの深さ、他システムとの連携数、データ量
  • 老朽化度: サポート終了が近い製品かどうか
  • クラウド適合性: SaaS化に向いているか、オンプレミスで残すべきか

棚卸し結果をもとに、「移行しやすく、業務影響が小さい」システムから段階的に着手するのが基本方針です。コアシステムや基幹系は最後に移行するか、オンプレミスとSaaSの並行運用期間を長めに設定することが安全です。

また、すべてのシステムがSaaS移行に向いているわけではありません。法的な理由でデータの国内保管が必須なシステム、リアルタイム処理が求められる製造ラインのシステム、ネットワーク接続が不安定な環境で使用するシステムなどは、オンプレミスを継続するほうが適切な場合があります。

なお、この棚卸しは移行時の一回きりの作業ではありません。移行後もSaaSの追加・解約は続くため、同じ台帳を継続的に更新する運用に育てておくと、後述する野良SaaSやライセンスの無駄を早期に発見できます。棚卸しの具体的な進め方はSaaS棚卸しのやり方で解説しています。

注意点2:データ移行計画を過小評価しない

SaaS移行で最も工数がかかるのがデータ移行です。多くの組織が「データをそのままコピーすればよい」と考えて進めますが、実際にはさまざまな複雑な課題が伴います。

データフォーマットの不一致

オンプレミスのシステムで管理していたデータ形式が、移行先のSaaSでそのまま使えないケースは頻繁に発生します。文字コードの違い・日付形式の差異・独自の項目定義など、データを新システムに取り込む前に変換・クレンジング作業が必要になることが多くあります。

過去データの扱いの検討

移行先のSaaSにすべての過去データを移行するか、一定期間以前のデータはアーカイブ・削除するかを事前に決定しておく必要があります。データ量が多いほど移行コスト・移行期間・ストレージコストが増加します。法令や社内規定で保管期間が定められているデータについては、コンプライアンス要件を確認したうえで判断してください。

テスト移行の実施

本番移行の前に、必ずテスト環境での移行リハーサルを実施してください。データの正確性・完全性・処理速度を検証し、本番移行時の所要時間を見積もります。テスト移行で発見した問題点を修正してから本番に臨むことで、移行失敗のリスクを大幅に低減できます。

移行中のダウンタイム計画

データ移行中は旧システムへの書き込みを止める必要がある場合があります。ダウンタイムが許容できる時間帯(週末・夜間など)に移行を実施するか、旧新両システムへの二重書き込み期間を設けるかを事前に設計しておく必要があります。

データ移行の3つの方式と選び方

データ移行は「どのタイミングで旧システムから新SaaSへ切り替えるか」によって、大きく3つの方式に分かれます。方式の選択がダウンタイム・工数・リスクをほぼ決めるため、詳細設計の前に決めておくべき論点です。

方式 概要 向いているケース 主な注意点
一括移行(ビッグバン) 決めた日時に全データを移し、旧システムを停止する データ量が小さい/連携先が少ない/週末に停止できる 切り戻しの猶予が短い。想定外の不整合が本番で顕在化する
段階移行(フェーズ分割) 部署別・機能別・データ種別に分割して順次移す 全社利用のシステム/部署ごとに業務差がある 分割期間中はデータが二か所に分かれる。参照ルールの周知が必要
並行運用(デュアルラン) 一定期間、旧システムと新SaaSの両方にデータを入れる 基幹系など停止できないシステム 二重入力の負荷が現場にかかる。期間を区切らないと恒久化する

いずれの方式でも、マスターデータの管理元をどちらに置くかを先に決めることが前提です。切り替え日を決めないまま並行運用を始めると、二重入力が常態化して現場の不満が蓄積します。

データ移行前に確認すべきチェックリスト

移行トラブルの多くは、移行作業そのものではなく事前の取り決め不足に起因します。テスト移行を実施する前に、以下の項目が文書として残っているかを確認してください。

  • 移行対象データの範囲(対象期間・対象項目・対象部署)が明文化されているか
  • 文字コード・日付形式・全角半角・改行コードの変換ルールが決まっているか
  • 必須項目の欠損データ、重複データ、桁数超過データの扱いが決まっているか
  • 添付ファイル・画像・帳票などの非構造データの移行方法が決まっているか
  • 移行前後でレコード件数・金額合計などを突合する検証手順が用意されているか
  • 移行が失敗した場合の切り戻し手順と、バックアップの保管場所・保管期間が決まっているか
  • 移行作業の実施者・承認者・立ち会い部門と、実施時間帯の合意が取れているか
  • 移行対象データに個人情報が含まれる場合、保存先の国・地域が社内規定を満たしているか

チェックリストは移行対象システムごとに作成し、テスト移行と本番移行の両方で同じ項目を確認します。テスト移行時に「確認できなかった項目」を記録しておくと、本番移行のリスク評価がしやすくなります。

注意点3:コストの「見えない部分」を含めたTCO比較

「SaaSはオンプレミスより安い」という認識で移行を進めると、後からコスト超過に気づくケースがあります。SaaSとオンプレミスのコスト比較は、TCO(総所有コスト)の観点で行うことが重要です。

オンプレミスの隠れたコスト

オンプレミスでは、以下のようなコストが日常的に発生しています。移行前にこれらを洗い出しておかないと、SaaSとの比較が正確にできません。

  • ハードウェア購入・リース費用
  • データセンターの設置・電力・冷却コスト
  • OS・ミドルウェアのライセンス費用
  • セキュリティ対策ソフトウェアのライセンス
  • サーバー保守・ハードウェア障害対応費用
  • 情シス担当者の運用管理工数(人件費)
  • ハードウェアの定期更新(通常5〜7年ごと)

SaaSの注意すべきコスト

SaaSのサブスクリプション費用は月次・年次で明確に見えますが、以下のコストが加算されることを見落としがちです。

  • ユーザー数増加に伴うライセンス費用の増加
  • 上位プランへのアップグレード費用
  • API連携や追加機能のオプション費用
  • 移行・導入支援コンサルティング費用
  • 社内トレーニング・教育コスト
  • 旧システムと新システムの並行運用期間のコスト

サービスを使い続けるほどトータルコストが積み上がるため、5年・10年単位でのコスト試算が必要です。移行直後は「安くなった」と感じても、ユーザー数の増加や機能拡張により3〜5年後にはオンプレミス維持コストを超えるケースも存在します。

コスト比較表:オンプレミスとSaaSの主な違い

比較項目 オンプレミス SaaS
初期導入費用 高(ハードウェア・ライセンス) 低〜中(設定・移行費用)
月次ランニングコスト 低〜中(人件費・電力等) ユーザー数に依存
スケールアップコスト 高(ハードウェア増設) 相対的に低い(ライセンス追加)
スケールダウン柔軟性 低(設備の固定費化) 高(プランダウングレード可能)
障害対応コスト 高(自社対応が必要) 低(ベンダーが対応)
更新・保守コスト 定期的に大型コスト発生 サブスク費用に含まれることが多い

5年TCOで比較するときの組み立て方

稟議で使えるTCO比較にするには、両者を同じ期間・同じ前提で並べる必要があります。実務では次の3ステップで組み立てると、比較の抜け漏れを防げます。

  1. 現行オンプレミスの年間コストを、上記の隠れたコストを含めて洗い出し、5年分に換算する。ハードウェアの更新時期が期間内に入る場合は、その更新費用も必ず計上する
  2. SaaSの5年分のサブスクリプション費用に、移行費用・並行運用期間の重複コスト・教育コストを一度だけの費用として加える
  3. ユーザー数の増加見込みを織り込む。従業員数が増える計画がある場合、SaaSのコストは比例して増えるため、初年度の単価だけで判断しない

このとき、情シスの運用工数を金額に換算して両方に計上することが重要です。オンプレミスの保守工数が減る一方で、SaaSではアカウント管理・ライセンス棚卸し・ベンダー対応といった別の工数が発生します。工数を計上しない比較は、移行後に「思ったほど楽になっていない」という評価につながりがちです。

注意点4:セキュリティモデルの根本的な変化に対応する

オンプレミスからSaaSへの移行で、最もリスクが高い領域の一つがセキュリティです。オンプレミスでは「境界防御」を中心にセキュリティを設計していた組織が多く、SaaSに移行するとその考え方がそのまま通用しなくなります。

責任共有モデルの正確な理解

SaaSでは、インフラ・OS・ミドルウェアのセキュリティはベンダーが責任を負います。一方で、ユーザーアカウント管理・アクセス権限設定・データ分類・利用ポリシーの策定・モニタリングは利用者側の責任です。この境界を誤解したまま移行すると、「ベンダーが守ってくれている」という油断から、アクセス権の過剰付与や退職者アカウントの放置といった管理不備が生まれます。

多要素認証(MFA)とシングルサインオン(SSO)の整備

SaaSはインターネット経由でアクセスできるため、不正ログインのリスクがオンプレミスより高まります。移行前に以下のアクセス管理基盤を整備しておくことを強く推奨します。

  • 多要素認証(MFA): すべてのSaaSに対してMFAを必須化する
  • シングルサインオン(SSO): 複数のSaaSを一元的に認証管理する仕組みを導入し、パスワード管理の複雑化を防ぐ
  • 条件付きアクセス: 社外ネットワークや未登録デバイスからのアクセスを制限する

データ暗号化と保存場所の確認

SaaSにアップロードするデータは、転送中(通信暗号化)と保存中(ストレージ暗号化)の両方が保護されているかをベンダーに確認してください。また、データがどの国・地域のサーバーに保存されるかも重要です。個人情報保護法や業界規制によっては、データの国内保管が求められる場合があります。

ゼロトラストセキュリティへの移行

SaaS環境では「ネットワーク内部は安全」という前提が崩れます。社員がカフェや自宅からSaaSにアクセスするため、ネットワークの内外を問わず常にアクセスを検証する**「ゼロトラスト」の考え方**を取り入れることが、中長期的なセキュリティ強化の方向性です。

移行を機に境界防御からの転換を検討するのであれば、ゼロトラストセキュリティの考え方とSaaS環境での実装も合わせて確認してください。すべてを一度に切り替える必要はなく、移行対象のSaaSから順に適用範囲を広げる進め方が現実的です。

参考:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)(個人情報保護委員会)

注意点5:既存システムとの連携・インテグレーション設計

SaaSは単独で動くものではなく、既存の業務システムやデータベースと連携して機能することがほとんどです。連携設計を後回しにして移行すると、情報の断絶・二重入力・データの不整合といった問題が生じます。

連携が必要なシステムの全量把握

移行前に、導入予定のSaaSが既存のどのシステムと連携する必要があるかを整理してください。たとえば、人事系SaaSを導入する場合、既存の給与計算システム・勤怠管理システム・Active Directory(社員マスター)との連携が必要になることがあります。

社員マスターとの連携は、移行後のアカウント管理の負荷を左右する分岐点です。オンプレミスのActive Directoryを認証基盤として残すのか、IDaaSへ寄せるのかを移行計画のなかで決めておくと、SaaSが増えたあとの手戻りを避けられます。判断材料はIDaaSとSaaS管理の連携で整理しています。

API連携の可否とコストの確認

SaaSのAPI連携機能の有無・対応プロトコル・利用可能なAPI呼び出し回数の上限・連携のための追加費用をベンダーに事前確認してください。「標準機能でできると思っていたが、実はオプション費用が必要だった」というケースは非常に多く発生します。

並行運用期間中のデータ整合性

旧オンプレミスシステムと新SaaSを並行運用する期間は、両システムのデータが一致しているかを定期的に検証する仕組みが必要です。どちらのシステムがマスターデータの管理元(Single Source of Truth)かを明確にし、データの二重管理が生じないように設計してください。

注意点6:現場への変更管理と教育・定着化

システムの移行が技術的に成功しても、現場ユーザーが新システムに馴染まなければ業務効率は改善されません。SaaS移行後の不満の最大要因の一つが、現場の抵抗感と操作習熟の問題です。

現場を巻き込んだ要件定義

移行するSaaSの選定段階から、実際にシステムを使う現場担当者をプロセスに巻き込んでください。情シスだけで決定したシステムを現場に押しつけると、抵抗感が生まれやすくなります。デモ・トライアル期間に現場ユーザーが操作感を確認し、フィードバックを収集する機会を設けることが重要です。

段階的なトレーニング計画

新システムの操作研修は移行直前に実施するのではなく、並行運用期間中から段階的に行うことが効果的です。具体的には以下のステップを参考にしてください。

  1. 管理者向け先行研修: 情シス・IT部門が先に深く習熟し、現場からの質問に答えられる体制を整える
  2. 部門別キーユーザー研修: 各部門のキーユーザーを先行研修し、現場のサポート役に育てる
  3. 全社員向け操作研修: 本番稼働前に全ユーザーへの操作説明会を実施する
  4. Q&A・サポート体制の整備: 稼働後しばらくは社内ヘルプデスクやFAQを充実させ、操作に迷ったユーザーがすぐに解決できる環境を作る

業務プロセスの見直し(BPR)

SaaSはオンプレミスと異なり、ソフトウェアに業務プロセスを合わせることが基本です。「今まで通りの業務フローをシステムに再現する」という発想で移行すると、カスタマイズのコストが膨らむか、SaaSの標準機能では実現できないという壁にぶつかります。移行を機に業務プロセス自体を見直し、SaaSの標準機能に業務を合わせることで、運用コストの削減と保守性の向上が期待できます。

注意点7:移行後のSaaS管理体制を構築する

オンプレミスからSaaSへの移行で、移行後に見落とされがちな重要課題が**「SaaS管理の複雑化」**です。1つのSaaSを導入するのは始まりに過ぎず、企業のDX推進に伴い利用するSaaSは増え続けます。管理体制を整えないまま放置すると、以下のリスクが蓄積します。

野良SaaS(シャドーIT)の増加

情シスの許可を得ずに、部門や個人が独自にSaaSを契約・利用する「野良SaaS」の問題は、SaaS移行後に急速に顕在化します。野良SaaSが増えると以下の問題が生じます。

  • 情シスがどのSaaSが社内で使われているかを把握できない
  • 退職者のアカウントが放置され、不正アクセスのリスクになる
  • 同じカテゴリのSaaSが複数契約され、コストが無駄に発生する
  • セキュリティ審査を通過していないSaaSに機密データが保存される

アカウントライフサイクル管理の課題

オンプレミスではActive DirectoryやLDAPで一元管理できていたアカウントも、複数のSaaSに分散すると管理が複雑化します。入社・異動・退職のたびに複数のSaaSのアカウントを個別に作成・変更・削除する作業が情シスに集中し、対応漏れが発生しやすくなります。

  • 入社時: 複数SaaSのアカウント払い出しが漏れなく完了するか
  • 異動時: 所属・権限変更が全SaaSに正確に反映されるか
  • 退職時: 全SaaSのアカウントが当日中に無効化されるか

このうち退職時の対応は、移行後にもっとも事故につながりやすい領域です。オンプレミス時代はADのアカウントを停止すれば大半の業務システムへのアクセスを止められましたが、SaaSは個別に無効化しなければアクセスが残ります。具体的な手順は退職時のアカウント削除手順を参照し、移行のタイミングで退職処理フローそのものを更新しておくことを推奨します。

コスト管理の困難化

SaaSの利用数が増えると、各契約の契約期間・自動更新日・ライセンス数・実使用率を把握することが困難になります。使われていないライセンスへの支払いが続く「ライセンスの無駄」や、自動更新に気づかずに不要なサービスの契約が継続するケースは、多くの組織で発生しています。

参考:シャドーITリスクを包括的なSaaS管理で軽減(Josys)

SaaSの数が増えるほど、情シスの管理工数は指数的に増加します。移行後の管理効率化を見据えたツール選定が、長期的なコスト最適化につながります。

こうした移行後の課題に対しては、利用中のSaaS・契約更新日・ライセンス利用状況・アカウントの有効状態を継続的に可視化する仕組みが有効です。SaaS管理ツールを活用すると、野良SaaSの発見・未使用ライセンスの削減・退職者アカウントの削除漏れ防止を一元的に進められ、移行後の管理工数とセキュリティリスクを同時に抑えられます。ジョーシスのプラットフォームは、SaaSとITデバイスの利用状況を一元的に可視化し、アカウント管理・契約管理・IT資産管理をまとめて行える基盤として活用できます。

ジョーシスは国内外1,000社以上に導入され、350以上のアプリ(31カテゴリ)と連携できます。移行後の管理コストをどこまで下げられるかの目安として、Anker Japanではジョーシスの導入によりITコストを75%削減しています。移行プロジェクトの最終段階で管理基盤を選ぶのではなく、注意点1の棚卸しと同じタイミングで「移行後に何をどう管理するか」を決めておくと、移行と管理体制の整備を二度手間にせず進められます。

参考:Anker Japanの導入事例(Josys)

Josysの機能概要を5分でチェックする(資料ダウンロード)

SaaS移行を成功させる手順:5ステップ

これまで解説した注意点を踏まえ、オンプレミスからSaaSへの移行を成功に導く手順を整理します。

Step1:現状棚卸しと移行方針の策定

現行システムの全量洗い出しを行い、各システムの業務重要度・移行可否・優先順位を評価します。移行方針(全量移行・段階移行・一部オンプレミス残留)を決定し、ステークホルダーと合意を取ります。この段階でSaaS移行の目的・KPI(コスト削減率・運用工数削減率など)も明確化しておきます。

Step2:SaaS選定と要件定義

移行対象システムに対応するSaaSを選定します。機能要件だけでなく、セキュリティ認証(ISO 27001・SOC 2など)・SLA・サポート体制・データ保管場所・API連携の可否・将来的なスケーラビリティを評価してください。複数のベンダーに対してRFP(提案依頼書)を送付し、POCやトライアルを実施することを推奨します。

Step3:移行計画の詳細設計

データ移行計画・システム連携設計・並行運用計画・現場研修計画・移行リハーサルスケジュールを策定します。移行のリスクシナリオと、問題が発生した際の切り戻し手順(ロールバックプラン)も必ず設計しておきます。

Step4:段階的移行の実施

影響範囲の小さいシステムから順に移行を実施します。移行後は一定期間の並行運用を経て、旧システムの停止判断を行います。移行のたびに問題点・改善点を記録し、次の移行に活かします。

Step5:移行後の管理体制の整備

移行が完了したら、SaaSの利用状況・アカウント・コスト・セキュリティを継続的にモニタリングする管理体制を整備します。SaaS管理ツールを導入し、IT資産管理の可視化と一元管理を実現することで、移行後に生じる新たな課題(野良SaaS・アカウント管理・コスト最適化)に対応できます。

各ステップで残すべきアウトプット

移行プロジェクトが遅延する原因の多くは、判断が口頭で進んで文書に残っていないことです。ステップごとに何を成果物として残すかを最初に決めておくと、担当者の異動や体制変更があっても引き継げます。

ステップ 主なアウトプット 承認を得る相手
Step1 現状棚卸しと方針策定 システム一覧(重要度・移行可否・優先順位)/移行方針書/KPI定義 経営層・情報システム部門長
Step2 SaaS選定と要件定義 要件一覧/RFPと各社回答/評価スコア表/トライアル結果 情報システム部門・利用部門
Step3 移行計画の詳細設計 データ移行仕様/連携設計書/並行運用計画/切り戻し手順/研修計画 情報システム部門・委託先
Step4 段階的移行の実施 テスト移行結果/本番移行記録/件数突合の検証結果/課題管理表 利用部門・情報システム部門
Step5 管理体制の整備 SaaS台帳/アカウント棚卸しの運用ルール/契約更新カレンダー 情報システム部門・経理部門

このうちStep4の「件数突合の検証結果」は、旧システムを停止する判断の根拠になります。検証結果が揃うまで旧システムのデータは削除せず、一定期間は参照できる状態で保管してください。

参考:クラウド移行とは?オンプレミスからの移行手順、メリット、よくある失敗事例(ソフトバンク)

SaaS移行でよくある失敗事例と対策

最後に、実際のSaaS移行プロジェクトでよく見られる失敗パターンと対策をまとめます。

失敗事例1:コスト試算が甘く、移行後にコスト超過

状況: オンプレミスの「見えていなかったコスト」を計上せずSaaSと比較し、移行後に実際のコストがオンプレミス時代を上回った。

対策: 移行前にTCOの全項目を洗い出す。SaaSは初期費用が低くても、ユーザー数増加・オプション追加・並行運用期間のコストが積み上がることを念頭に置く。

失敗事例2:データ移行でデータ消失・不整合が発生

状況: テスト移行を省略して本番移行に臨んだ結果、データフォーマットの不一致によりデータの一部が欠損した。

対策: 本番移行前に必ずテスト移行を実施する。移行後のデータ検証チェックリストを用意し、データの完全性を確認してから旧システムを停止する。

失敗事例3:現場ユーザーが新システムを使わない

状況: 情シスだけで選定・導入を進めた結果、現場ユーザーから「使いにくい」「以前の方が良かった」という反発が起き、定着しなかった。

対策: 選定段階から現場キーユーザーを巻き込む。トライアル期間中に現場の操作感フィードバックを収集し、選定の判断材料に反映する。

失敗事例4:退職者のSaaSアカウントが長期放置

状況: 退職者のSaaSアカウントを無効化する手順が整備されておらず、退職後もアカウントが有効な状態が続いた。

対策: 退職処理フローにSaaSアカウントの全件無効化を必須ステップとして組み込む。SaaS管理ツールで退職者アカウントの一括無効化を自動化することで、対応漏れをゼロにする。

失敗事例5:野良SaaSが蔓延してセキュリティインシデント発生

状況: 現場部門が情シス未承認のファイル共有SaaSを使い始め、機密データを社外共有する設定ミスが発生した。

対策: SaaS利用の申請・承認フローを整備し、未承認SaaSの利用を社内ポリシーで明確に禁止する。定期的にネットワーク監視ツールでシャドーITを検出する仕組みを持つ。

失敗事例6:並行運用が終わらず二重入力が恒久化

状況: 基幹系システムの移行で並行運用期間を「当面のあいだ」と決めたまま開始し、旧システムの停止判断ができず、現場が1年以上にわたって同じデータを二か所に入力し続けた。

対策: 並行運用の開始時点で終了条件(件数突合の一致・業務部門の合意・稼働月数)と停止日を文書で決める。停止判断を先送りするほど旧システムの保守費用と現場の入力負荷が積み上がるため、判断の期限を設けることが重要です。

参考:オンプレミスからSaaSへの移行で陥りがちな落とし穴(kickflow)

まとめ:移行前の準備が成否を分ける

オンプレミスからSaaSへの移行は、適切に計画・実行すれば運用コストの削減・保守工数の低減・テレワーク対応などの大きなメリットをもたらします。しかし、準備不足のまま進めると、コスト超過・データ問題・現場混乱・セキュリティリスクといった深刻なトラブルを招きます。

本記事でご紹介した7つの注意点を、移行計画のチェックリストとして活用してください。

  1. 移行対象システムの棚卸しと優先順位づけ
  2. データ移行計画を過小評価しない
  3. コストの「見えない部分」を含めたTCO比較
  4. セキュリティモデルの根本的な変化に対応する
  5. 既存システムとの連携・インテグレーション設計
  6. 現場への変更管理と教育・定着化
  7. 移行後のSaaS管理体制を構築する

移行後の管理体制まで設計してこそ、SaaS移行は完結します。特に注意点7で挙げたSaaS管理の課題は、移行直後よりも1〜2年後に顕在化することが多く、事前の対策が重要です。

SaaS移行後の管理に課題を感じている方、これから移行を検討している方は、ぜひJosysのデモで実際の管理画面をご確認ください。

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