
部門ごとにSaaSの契約が積み上がり、気づけば毎月の支払いが膨らんでいる。多くの情シス担当者が抱える悩みです。利用実態が見えないまま契約が自動更新され、退職者のアカウントにまで料金が発生し続けているケースも珍しくありません。
ところが、いざコスト管理ツールを入れようとすると、製品の数が多く、機能や料金の違いがつかめずに選びきれません。同じSaaS管理でも、支出の可視化に強い製品もあれば、アカウント自動化やデバイス統合を得意とする製品もあり、守備範囲は大きく異なります。
SaaSコスト管理ツールを比較するための6つの評価軸、国内外の主要10製品の特徴、規模と目的に応じた選び方、導入から効果測定までのステップを整理しました。情シス担当者、IT部門のマネージャー、コスト最適化を担う経営企画やコーポレート部門の方に向けた内容です。
SaaSコスト管理ツールとは、社内で使う複数のSaaSにかかる費用を一元的に可視化し、無駄を見つけて最適化するためのツールです。契約情報、ライセンス数、利用状況、支払い時期を横断して管理し、支出のどこに無駄が潜んでいるかを数値で示します。
汎用のSaaS管理ツールがアカウント管理やセキュリティまで幅広くカバーするのに対し、コスト管理型は支出の可視化と削減に照準を絞ります。ただし両者の線引きは曖昧になりつつあり、いまでは1つのプラットフォームでコストとアカウントの双方を扱える製品が主流です。
市場の成熟も進んでいます。BOXILが2025年に1,813人を対象に実施した調査では、SaaS管理ツールの市場シェア1位はマネーフォワード Adminaでした。国内でも複数の有力製品が競い合う段階に入っています。
だからこそ、自社に必要なのがコスト管理に特化したツールなのか、それともアカウント統制まで見据えた統合型なのか。この見極めが比較の出発点になります。
関連記事:SaaS管理ツールのメリット・デメリットと比較ポイント
参考記事:SaaS管理ツールの市場シェア 1,813人調査|BOXIL
製品比較の精度を上げる近道は、比較表を眺める前に自社の前提条件を整理することです。同じツールでも規模や目的で最適解は変わります。要件が曖昧なまま検討を進めると、導入後に機能の過不足が表面化しがちです。
先に押さえておきたい前提は、次の5点に整理できます。
これらを整理すると、候補は自然と3〜5製品に絞られます。なかでも目的は分岐点です。支出を見える化したいだけなら軽量なツールで足りますが、入退社の自動化まで求めるなら統合管理型が視野に入ります。
SaaSコスト管理ツールを効率よく比較するには、評価軸を先に決めるのが得策です。次の6つの軸を、自社の優先順位に合わせて重み付けしながら製品を見比べてください。
支出を一元的に集約し、全体像を把握できるかが最初の軸です。サービス別、部門別、月次推移でコストを見える化できれば、どこに無駄が潜むかを数値で説明できます。会計データや請求情報を取り込める製品なら、手入力の手間も省けます。
契約したライセンスが本当に使われているかを分析できるかを確認します。最終ログイン日やアクティブ率が見えれば、支払っているのに使われていないライセンスをあぶり出せます。この利用率データは、契約数を減らす交渉の根拠にもなります。
契約更新日を管理し、更新前にアラートを出せるかも見逃せません。更新日を把握しないまま自動更新が続くと、不要になったSaaSの費用が延々と流れ続けます。更新リマインダーがあれば、解約や減席を計画的に判断できます。
無駄なコストの大半は、未使用や重複、退職者のアカウントから生まれます。これらを自動で検知できるかどうかが、削減の即効性を左右します。とりわけ退職者アカウントはコストだけでなくセキュリティリスクの温床にもなるため、検知精度は妥協できません。
人事システムやIDaaSと連携し、入退社に応じてアカウントを自動で発行・削除できるかを評価します。SCIM連携や幅広いSaaS連携に対応していれば、運用工数を大きく減らせます。連携できるSaaSの種類数は、製品ごとに差が大きい部分です。
ID単価か固定料金か、無料枠があるかなど、料金モデルが自社規模に合うかを見ます。単価が安く見えても、初期構築や運用に工数がかかれば結局は高くつきます。導入支援費やサポート費まで含めた総保有コストで比べるのが原則です。
参考記事:SaaS管理ツールの費用相場と料金比較|BOXIL
ここからは、コスト管理に使える主要10製品を取り上げ、それぞれの特徴を整理します。機能や料金は変わりやすいため、最終的な数値は各公式サイトで確認してください。
Josysは、SaaS、デバイス、アカウントを統合管理するAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームです。かつてスプレッドシートで分散管理していたSaaSの利用状況とコストを一画面に集約し、入退社に伴うアカウントの発行・削除まで自動化します。国内外1,000社以上に導入され、350以上のSaaSと連携します。事例によってはIT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減したケースもあり、効果は個社の状況により異なります。コスト管理とアカウント統制を1つの基盤にまとめたい中堅企業に向いています。
Adminaは、社内のSaaS利用状況を家計簿のように可視化し、無駄なコストを洗い出すツールです。契約情報のリマインダーで更新漏れを防ぎ、非アクティブなアカウントを検出して支払いの無駄を抑えます。料金は50ID以下が永年無料、51ID以上は1IDあたり月額300円です。従量課金でスモールスタートしやすく、幅広いSaaSと連携します。まずは無料枠で可視化から始めたい企業の入り口になりやすい製品です。
freee IT管理は、2025年12月にBundle by freeeから名称を変えたSaaS・IT統合管理ツールです。マスタ情報とSaaSのアカウントを自動で名寄せし、不要なアカウントをシャドーアカウントとして抽出します。2025年5月に提供を始めたコストレポート機能で、SaaSコストの可視化と投資判断を後押しします。AIが利用状況を分析し、不要な課金や権限の不備、未承認ツールの利用を月次レポートで洗い出す点も特徴です。
dxecoは、株式会社オロが提供するSaaS管理ツールで、2,000以上のSaaSが登録されたデータベースを備えます。コスト管理機能では、各SaaSの毎月の利用料と支払い時期を一元管理し、費用の推移をグラフ化して無駄を見える化します。表形式の画面が多く、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理してきた企業でも移行しやすい設計です。手作業の台帳から抜け出したい情シスに合います。
OPTiM サスマネは、オプティムが提供するSaaS管理ツールで、SaaSに加えてオンプレミスや自社開発のソフトウェアまで一元管理できます。異動や体制変更によるアカウントの増減を自動で台帳に反映し、シャドーITを自動検知して情シスに通知します。料金は1ID税込275円で、500IDまではこの単価、それ以上は個別見積もりです。他社と比べて低単価のため、予算の限られる一人情シスでも導入しやすい水準です。
ITboardは、情シスの工数とコスト削減を掲げるSaaS管理ツールです。各SaaSの契約内容やコストを一覧にまとめ、毎月の料金変化をグラフで追えます。サービス別、部署別、個人別に利用SaaSを整理でき、棚卸しの工数を圧縮します。シャドーITの検知や、退職者・一時利用者の削除漏れアカウント検知でセキュリティも補います。
Zluriは、FinOps、IT、セキュリティの各チーム向けに、SaaSアプリ、支出、ユーザーライフサイクル、アクセスレビューを1つの画面で管理するグローバル製品です。次世代のアイデンティティガバナンスを掲げ、支出最適化とアクセス統制を両立します。海外拠点を含めてSaaS支出を統制したいグローバル企業の選択肢になります。
Toriiは、アプリ検出とコストの透明性に強みを持つSaaS管理プラットフォームです。AIを使ってシャドーITを検出し、未使用ライセンスや重複アプリを自動で特定します。支出の可視化を起点に無駄を削りたい企業に向きますが、日本語対応や国内サポートの範囲は事前に確認しておきたいところです。
BetterCloudは、検出、支出最適化、セキュリティポリシーの実行、ワークフロー自動化を1つの画面でカバーするSaaSOpsプラットフォームです。とくにオンボーディングとオフボーディング、Google WorkspaceやMicrosoft 365のアクセス管理といったライフサイクル自動化を得意とします。運用の自動化まで踏み込みたい企業に適しています。
Zyloは、SaaS支出管理に特化したグローバル製品です。大量のSaaSを抱える大企業で、支出データの集約と最適化に力を発揮します。支出の可視化と契約管理を大規模に運用したい組織の選択肢となります。
参考記事:Admina 料金|マネーフォワード
参考記事:Bundle by freee コストレポート機能の提供を開始|フリー株式会社
参考記事:Bundle by freee、「freee IT管理」に名称を変更|フリー株式会社
参考記事:dxecoにコスト管理機能を追加|クラウド Watch
参考記事:OPTiM サスマネ|OPTiM
参考記事:ITboard 機能一覧|ITboard
参考記事:Zluri 公式サイト
参考記事:Torii 公式サイト
参考記事:BetterCloud 公式サイト
参考記事:Zylo 公式サイト
組織の規模と目的が変われば、選ぶべきSaaSコスト管理ツールも変わります。代表的なパターンを押さえておくと、自社のフェーズに合う候補を絞りやすくなります。
この規模では、無料枠や低単価から可視化を始めるのが現実的です。Adminaの50ID以下無料プランや、1ID単価の低いOPTiM サスマネが入り口になります。SaaSの種類数もまだ限られるため、支出の可視化と契約更新管理を優先し、自動化は段階的に広げていくと無理がありません。
コスト管理に加え、入退社に伴うアカウント運用を自動化したいニーズが強まる規模です。Josys、Admina、freee IT管理、dxeco、OPTiM サスマネなどが候補となり、SaaSとデバイスを横断管理する統合型が標準形になります。情シスの人数が限られる分、自動化と連携で運用工数を抑える設計が効いてきます。
SaaSの種類数が増え、部門別のコスト配賦やガバナンスが論点になります。連携数の多さ、IDaaSとの統合、アクセスレビュー機能を重視した選定が求められます。JosysやZluriのように、コストとアクセス統制を両立できる製品が現実的でしょう。
支出の可視化と削減だけが目的なら、コスト管理に特化した軽量なツールで十分です。反対に、入退社の自動化やセキュリティまで一元化したいなら、SaaSとデバイス、アカウントを統合管理できる製品を選ぶべきです。コスト削減の効果は、可視化にとどまらず自動化まで踏み込んだ企業ほど大きくなります。
関連記事:IT資産管理ツールの選び方
ツールは選定して終わりではありません。効果測定と運用定着まで見据えて初めて、コスト削減が継続的な成果になります。ここでは5つのステップに整理します。
まず全社のSaaS契約とコストをツールに集約し、支出の全体像をつかみます。この段階で、把握できていなかったSaaSやシャドーITが表に出てくることは少なくありません。可視化は、あらゆる削減の起点になります。
利用率や最終ログインを分析し、支払っているのに使われていないライセンスを特定します。サービス別、部門別に無駄を切り分け、削減の優先順位をつけます。数値で無駄を示せれば、部門との調整も進めやすくなります。
未使用ライセンスの解約、重複SaaSの統合、契約プランの見直しを実行します。月次契約を年次に切り替えるといった契約条件の見直しでも、削減の余地が生まれます。ここで初めて、支出が実際に下がり始めます。
人事システムやIDaaSと連携し、入退社に応じたアカウントの発行・削除を自動化します。手動運用では削除漏れが必ず起きるため、自動化は無駄払いを構造的に防ぎます。運用工数の削減にも直結します。
削減して終わりにせず、月次でコストと利用状況を監視し続けます。新規SaaSの取り込みや契約更新の見直しを定期的に回せば、支出が再び膨らむのを防げます。運用カレンダーに組み込むと定着しやすくなります。
関連記事:SaaS棚卸しのやり方
製品比較や社内での合意形成では、コスト管理まわりの用語が頻出します。認識をそろえておくと、ベンダーとの商談や部門調整がスムーズになります。
これらの用語は、後述のコスト削減施策やツール選定の判断でも繰り返し登場します。特にゾンビアカウントとシャドーITは、無駄なコストの発生源として押さえておきたい概念です。
関連記事:SaaSコストの平均と相場
SaaSのコスト管理は、アカウント統制と切り離せません。無駄なコストの多くは、退職者や異動者の削除漏れアカウントから生まれます。つまりコスト削減とセキュリティは、同じ根から取り組むべき課題なのです。
Josysは、SaaS、デバイス、アカウントを統合管理するAI駆動型アイデンティティガバナンスプラットフォームです。これまでスプレッドシートで別々に扱っていたコスト情報とアカウント情報を一元化し、利用状況の可視化から入退社の自動化までを1つの基盤でまかなえます。国内外1,000社以上に導入され、350以上のSaaSと連携します。
導入企業のなかには、事例によってIT工数を最大50%、ITコストを最大75%削減したケースもあり、効果は個社の状況によって異なります。コスト管理ツールを単なる可視化で終わらせず、アカウント自動化まで踏み込んで削減を続けたい企業にとって、有力な選択肢となります。
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SaaSコスト管理ツールの比較と選定でよく寄せられる質問に答えます。
支出の可視化と削減だけが目的なら特化型で足ります。入退社の自動化やセキュリティ統制まで含めたいなら統合管理型が向いています。中堅企業では、後から機能不足で乗り換えるより、はじめから統合管理型を選ぶ企業が増えています。
Adminaは50ID以下なら永年無料で使えます。まず支出を可視化してから有料化を検討したい企業にとって、無料枠は導入のハードルを下げてくれます。無料トライアルを用意する製品も多いため、実データで試してから判断すると確実です。
SaaSの種類数が20種類を超える、あるいは従業員が100名を超えたあたりが乗り換えの目安です。手作業の台帳では更新漏れや削除漏れが起きやすく、可視化にかかる工数も膨らみます。dxecoのように、スプレッドシートから移行しやすい製品もあります。
未使用や退職者アカウントの削除は即効性が高く、導入直後から効果が出ます。一方、契約統合やプラン見直しは更新のタイミングに左右されるため、数カ月から1年かけて段階的に積み上がります。継続監視を回すことで効果が定着します。
国内製品は日本語サポートと国内SaaSへの対応が手厚く、グローバル製品は海外拠点を含む大規模運用や最新機能で優位です。海外展開の有無と、必要なサポート体制を基準に選ぶと判断しやすくなります。
SaaSコスト管理ツールの比較は、自社の前提条件を整理し、6つの評価軸で候補を絞り、規模と目的に合う製品を選ぶ流れが王道です。可視化にとどまらず、未使用アカウントの検知や自動化まで踏み込める製品を選べば、削減効果は長く続きます。
まずは自社のID数、SaaSの種類数、目的を整理し、本記事の比較表で候補を3〜5製品に絞り込むところから始めてください。コストとアカウント統制を横断して管理したい中堅企業には、Josysのような統合管理型が現実的な選択肢となります。
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